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レベル1の最強賢者 ~ 呪いで最下級魔法しか使えないけど、神の勘違いで無限の魔力を手に入れて最強に ~  作者: 木塚 麻弥
第五章 獣人の王国

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解呪と治癒

 

「我に呪いをかけたのは、側頭部に大きな角がある魔族だ。褐色の肌だった」


「……そうですか」


 獣人王の言葉で、俺は確信した。


 俺がベスティエに来てすぐに拘束した魔族。

 そいつが獣人王に呪いをかけた魔族なのだ。


 俺は王城に来るまでに、風魔法で複数の鳥を造り王都周辺を警戒させていた。この風の鳥は、炎の騎士と同じように自律行動が可能だ。


 そのうちの一体が、獣人王と魔人が戦闘したと思われる場所を見つけた。


 その場所で観測した魔力の残渣は、俺が捕獲した魔人の魔力の波長と一致した。


 獣人王に聞いた魔族の身体的特徴も一致する。


 つまり、俺は獣人王の呪いを解く手段を、この国に来てすぐに手に入れていたのだ。


 これで獣人王の肉体を、聖属性魔法で消滅させる必要がなくなった。


 指も切り落とさなくていい。


 俺は両手に準備していた魔法を解除し、俺とメルディが転移してきた王都郊外の方に身体を向ける。


「ん? どうしたのだ?」


 王が不思議そうに尋ねてきた。


「すみません、陛下の指を切り落とす必要がなくなりました」


「……なに?」


 俺は魔人を閉じ込めている氷柱がある方角に向けて手をかざし──



 勢いよく、その手を握り締めた。


 氷が砕ける感触が手に伝わってきた。


 たぶん、これでいいはず。

 俺は獣人王の方を振り返る。


「こ、これは……呪いが消えていく」


 獣人王の身体から、黒い模様が徐々に消えていった。


 良し、成功だ。


「もう、大丈夫です」


「何をしたのだ?」


「魔人を倒しました」


「──は?」


 獣人王が口を開けたまま固まる。


 獣人王は巨大なライオンのような姿をしているのだが、そのちょっと怖い外見の王が、口を開けたまま唖然としている様子は見ていて面白い。


「ハルト、どういうことにゃ?」


「メルディとこの国に来た時、いきなり襲い掛かってきた奴が居たろ? あれが、陛下に呪いをかけた魔人だったみたい」


「えっ、あのハルトが拘束しちゃった奴、魔人だったのかにゃ?」


 魔人と遭遇した時、メルディは俺の後ろに隠して魔法壁で守ってやってたからな。


 魔人と俺の会話が聞こえていなかったのかもしれない。


「そうみたい」


「お前たち、魔人と遭遇していたのか?」

「ま、魔人を拘束しただと!?」

「陛下と獣王兵が、撃退するだけでも苦戦した敵だぞ!!」

「そんなこと、できるわけが──」


「黙れ。現にこうして我の呪いが消えている。恐らくハルト殿が、魔人を倒してくださったのだ」


 大臣たちが俺に色々言ってきたが、獣人王がそれを制す。


 そして俺への言葉遣いが丁寧になっていた。


 医師が止めるのを無視し、獣人王がベッドから起き上がろうとする。


「あ、少しお待ちください」


 俺はエリクサーの入った小瓶を開け、獣人王の失われた腕や体の傷がある部位に振りかけた。


「ぬ!?」


 切り落とされた獣人王の腕の元から白い泡が吹き出し、次第に腕の形になっていく。


 数十秒で獣人王の腕は完治した。


 もちろんその他の傷もきれいさっぱりなくなっている。


「これで呪いも消えましたし、傷も癒えたはずです」


「なんと、呪いだけでなく腕や全身の傷まで……」


 獣人王がベッドから立ち上がる。


 おお、やっぱり大きい。

 立ち上がると俺の二倍くらいの身長だ。


 その獣人王が、いきなり俺の前で膝をついた。


「ハルト殿、呪いを解いてくれたこと、心から感謝する」


「頭を上げてください。俺はメルディの願いを聞いただけです」


「おぉ、そういえばハルト殿は、我が娘をご所望だったな」


 えっ? 望んでないけど……。


 俺が望んだのは、メルディの肉球を触る権利。


「だが、ここは獣人の国ベスティエだ。強き者だけが自分の意志を押し通せる。我は命を救われたので、ハルト殿を強き者と認めよう。しかし我が娘を娶りたければ、国民と娘自身に認められなければならぬ」


 んー、つまりメルディの肉球触るのに、この国の民の許可もいるってこと?


 そんなの、どうすればいいんだ?


「陛下、ちょうど武神武闘会が開催されますので、そこにハルト殿も出ていただいてはいかがでしょう?」


 ひとりの大臣がそう進言してきた。


 この国は、武神武闘会という大会で優勝した者が王となる。


 そしてその王が、国民に力を疑われるような事態になった時、在位期間に関わらず武闘会が開催され、新たな王が選出されるらしい。


 獣人王は無事回復したのだが、魔人に負けたという認識を国民が持ってしまっているので、既に武神武闘会の開催が決定していた。


「それは良い。是非とも参加していただきたい。我が負けた魔人を倒したのだ。きっと我とも血沸く熱い戦いをしてくれるだろう!!」


 獣人王の目がキラキラ輝いている。

 獲物を見つけ歓喜している目だ。


 自身も武闘会に出なくてはならず、王座が危ういかもしれないのに、そんなことを全く気にしていないようだった。


 この人は多分あれだ、戦闘狂なんだ。


 なんだろう。


 姫をかけて武闘大会に出るのって、昨年もあった気がする……。


 まぁ、今年は姫の肉球目当てなわけだけど。


「お父様、今年はウチも出るにゃ!」


 ──えっ?


 何とメルディも武神武闘会に出るという。


 ちょっと昨年の武闘大会とは趣旨が変わってきそうだ。


「メルディ、大会に出るのは構わんが、いつも通り肉体強化以外の魔法は使えないぞ?」


 えっ!?


 突然知らされる驚愕の事実。

 武神武闘会は、魔法禁止らしい。


 いや、俺、賢者なんだけど……。


「大丈夫にゃ! 肉体強化魔法だけでも、お父様をボッコボコにできるくらいウチは強くなったにゃ!!」


「ほぅ、それは楽しみだ」


 ふたりの間でバチバチと火花が飛ぶ。


 父を救うためならなんでもすると言っていた少女が、いざ父が元気になった途端、その父をボコボコにする宣言。


 そしてそれを受け入れる父親……。


「今年はメルディ様もご参戦なさるのですね。私も武闘会が楽しみです!」


 大臣達の中にも、鼻息を荒くしている肉食系獣人がいた。


 俺は肉食系の獣人の(さが)を見た気がした。


 みんな戦闘が大好きなんだ。



「それではハルト様、メルディ様、陛下の武神武闘会出場の申請は私がやっておきます」


「おぅ、頼むぞ」

「よろしくにゃ!」


「えっ!?」


 いつの間にか俺も、出場することが確定していた。


 俺、出るって言ってないのに……。


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― 新着の感想 ―
このエピソードはちょっと酷すぎる。 誰に、誰から、誰をって所もそうだし 娶るって言ってるのに肉球がどうのと、会話出来てない主人公が気持ち悪すぎる。
[一言] これはアホなこと言ったこいつが悪いな。誰かから貰うのと誰を貰うでは前者は誰かから褒美を貰うになるが後者なら当人を貰い受けるって意味やからな。よほどのバカじゃなければ結婚する気もないのに後者を…
2019/11/21 20:04 退会済み
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