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解呪方法と勘違い

 

「メルディ、もっかい聞くぞ。なんでもしてくれるんだな?」


 再度メルディの意志を確認する。


 これから俺は獣人王を助けるために、俺のポリシーに反することをしなくちゃいけない。


 なので、多少の報酬は貰ってもいいだろう。


「う、うん……ハルトの言うことなら、なんでも聞くにゃ」


 よし、メルディの言質はとった。

 ふふふ、今からちょっと楽しみだ。


 さて、先ずは獣人王の説得だな。


「陛下、私はその呪いを解くことができます」


「な、なに?」


「バカな! 魔人がかけた黒死呪だぞ!?」

「人族の若造が何を言っている!」

「魔人を倒す以外に解く方法などあるのか?」


 医師や大臣らしき獣人たちが語気を荒らげる。


「可能です。私は賢者ですから」


 そう言って、ステータスボードの職業だけを彼らに見せる。


「け、賢者だと!?」

「その若さで……ほんとに人族か?」

「王を、助けていただけるのですか?」


 賢者だと知っただけで、俺への態度が軟化する。


「……何が望みだ?」


 獣人王が俺を真っ直ぐ見ながら聞いてきた。


「メルディ()頂きますので、お気にならさず」


「……は?」

「えっ、な、何を言ってるにゃ!?」


 ん?


 王が怒りを露わにし、メルディは顔を赤く染めている。


 俺はメルディ()()報酬を貰うので、この国には何も請求しないよってつもりで言ったのに……。


 何故だろう。

 何か、盛大にやってしまった感がある。


 まぁ、良い。


 あまり時間が無いので、さっさと話を進めよう。


「恐らくその呪いはあと二回ほどで全身に達して、陛下の命を奪うでしょう。いかがですか?私の提案を聞くだけ聞いてみませんか?」


「……分かった。貴様が、もし仮にこの呪いを解けるほどの賢者であるというのなら、愛娘を任せても良い」


「お、お父様まで何言うにゃ!?」


 ほんとに、何を言ってるんだ?


 まるで俺がメルディを娶りたいがために、呪いを解こうとしているみたいじゃないか。


 俺はただ、解呪の報酬としてメルディの肉球を触れればそれでいいのに。



「それで、どうやって呪いを解くのだ?」


「聖属性魔法で、陛下の身体ごと、呪いの因子を消滅させます」


「──は?」


 王が唖然とする。


 メルディや医師、大臣達も俺の言っていることが理解できず固まっていた。


「まだ呪いが進行していない指を切り取っておいて、そこから陛下の肉体を再生します。聖属性魔法はヒトの魂を傷つけることは無いので、肉体さえ再生すれば、呪いは綺麗に消えます」


 そう、これこそが肉体にかけられた、ほとんどの呪いを強制的に解呪できる方法だ。


 ただ、呪いが全身にかけられてしまった場合や、魂にかけられた呪いは解呪できない。


「ば、馬鹿な! 陛下に一度死ねと言うのか!?」


「いえ、死にません。魂は無事なのですから」


 この世界では死んでも、魂が無事であればリザレクション(蘇生魔法)などで蘇ることができる。


 肉体は、魂の容器に過ぎない。

 そのため、魂の消滅こそが本当の死となる。


 とは言え、俺は誰かの肉体を消滅させようとするのは嫌だった。


 聖属性魔法でヒトの魂は傷つかないので、殺してしまうことは無いが、元の世界の価値観で見ると、肉体の消滅=死なのだ。


 なので、できればやりたくない方法だった。



「……私の肉体を、指から再生すると言ったな。それは不可能ではないのか?」


「そ、そうです。我が国には指から全身を再生させられるほどの治癒魔法の使い手はおりませんし、エリクサーも保有していません」


 医師の1人が、悔しそうにそう言ってきた。


「貴様が蘇生魔法を使えるというのか?」


「いえ、使えません」


 賢者とは言え、どんな魔法でも使えるわけじゃない。ヒールの重ねがけで肉体再生まではできるが、魂を肉体に定着させるには、どうしてもリザレクションが必要だった。


「では、はなから貴様の提案は破綻しておるではないか」


 そう、俺はリザレクションなんて使えない。


 でも──


「蘇生魔法は使えませんが、ここに世界樹の葉から作ったエリクサーがあります」


 そう言って俺は鞄からエリクサーの入った小瓶を取り出す。


 何かあった時のために、シルフから貰った世界樹の葉を使って作り、常に持ち歩くようにしていた。


「なに? 今、なんと言った?」


「エ、エリクサーだと!?」

「しかも世界樹の葉から作った!?」


 医師や大臣たちが、俺の持つ小瓶を凝視する。


 実はエリクサーには色んな製法がある。


 そして、製法によって効果はピンキリで、キリ──つまり質の悪いエリクサーでは多少の肉体欠損が治る程度の効果しかない。もちろん、それでも十分レアアイテムなのだが。


 一方で俺のは、一番難易度の高い製法で作ったピンの品質のエリクサーだ。


「そ、そんな貴重なものを、我に使用してくれるのか?」


「えぇ、他ならぬメルディのお願いですから」


「ハルト!」


 メルディが抱きついてきた。


「ハルト……ありがとにゃ」


「お礼は陛下の呪いを解呪できた後で良いよ。さ、時間が無いからゴメンな」


 そう言ってメルディを引き剥がす。


「陛下、呪いの進行していない手の指を一本、頂きたいのですが……よろしいですか?」


 こんなお願いするのは初めてだ。

 自分でもおかしいと思う。


「構わぬ。右手は魔人に切り落とされておるから、左手だな」


 そう言って獣人王は左手を俺に差し出してきた。


「あっ、先ずはこのエリクサーが本物であると証明しましょうか」


 いきなり『指を切らせろ、大丈夫エリクサーで元通りになるから』と言っても信じてくれる人は居ないと思う。


 あまりやりたくないけど、自分の指を切り落として、王や大臣たちの前で再生させようかと考えていた。


「不要だ。お前は先程ステータスを見せてくれた。あれは偽装などできぬ。そして賢者であるお前がそんな嘘をつくとは考えにくい」


「そうですか。ありがとうございます」


 自分の指を切らなくて済んでほっとする。


 そういえば俺って、転生して以来、小さな切り傷以外できたことないけど、自分で指って切り落とせるものなのかな?


 そんなどうでもいいことを考えながら俺は右手にヒールを、左手に風魔法を纏う。


 風魔法で強化した手刀で王の指を切り落とし、即座に右手のヒールで止血する流れだ。


 超高速でやれば痛みも少ないだろう。

 魔衣も纏って身体能力を強化する。



「いつでも良い。やってくれ」


 これから指を切り落とそうとされているのに、王は全く怯まない。


 さすが、獣人王だ。



 いざ、指を切り落とそうとした時──とある情報が俺の中に流れ込んできた。


 王都の検問所から王城に来るまでに発動した魔法が、俺に情報をもたらしたのだ。



「陛下、一つお聞きしたいことがあります」


「何だ?」


「陛下と戦った魔人は、どんな外見でしたか?」


「何故、今更それが気になるのだ?……まぁ良い、答えてやろう。奴は──」



 この国を襲ったのは、()()()()2()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だった。


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