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魔人捕獲と入国審査

 

 メルディを連れ、獣人の国ベスティエに転移した。


 転移の魔法陣はなるべく王都に近く、なおかつ人目に付きにくい場所に設置してある。


 その方が転移先の国の各地へ移動したりする時に都合がいいからだ。


 そして、転移先の魔法陣には周囲に人間が居ないか検知する魔法も組み込んである。

 その情報を読み取り、俺は転移先に誰も居ないことを確認し、転移したのだ。


 なのに──



「な、何者だ貴様ら!?」


 俺たちの後ろから声が聞こえた。


 まずい、誰かいたのか!?


 振り返ると、側頭部に二本の大きな角を持つ、褐色の肌をした男が俺たちを見ていた。



「……誰?」


「俺が聞いておるのだ! そして貴様、今転移してきたのか!?」


 うわぁ、やっぱり転移したのを見られてたみたい。


 どうしよ?

 人間じゃないっぽいけど……。


 転移魔法陣に組み込んだのは()()が持つ特有の魔力の波長を検知するもの。


 だから動物や魔物などは検知できない。


 誰も居ないと思って転移した結果、この()()()()()()()()()に見られてしまった。


 襲われたりしたわけじゃないし、さすがに口封じはしちゃダメだよね?


 黙っててほしいってお願いしたら、聞いてくれるかな?


 なんか見た目悪いヤツっぽいし、いっそ襲いかかってきてくれた方が都合がいいんだけど……。



「おい、この俺を無視する気か?」


 おっと、少し考え事してたら男がかなりご立腹のご様子。


「いえ、そんなつもりは──」

「ふん、まぁいい。転移が使えようと所詮ただの人族だろう。俺がここに居るのを見られたのだ……その命、貰い受ける」


 そう言って男がいきなり襲いかかってきた。



「アイスランス!」


「──っ!?」


 襲いかかってきたので、とりあえず動きを封じておく。


 魔法の用意をしていたので、発動は早かった。


 俺の目の十センチほど前に、男の鋭い爪が止まっている。


 男の四肢は空間に現れた無数の氷の槍によって完全に固定されていた。


「な、なんだこれは!? くそっ! こんなもの!!」


 男が氷を壊そうとするがビクともしない。


「何故だ! 何故、魔人となった俺がこんな氷を壊せない!?」


 へぇ、こいつ魔人なんだ。


 一言に魔人と言っても色んな外見の奴がいる様で、このタイプの魔人は初めて見た。


「ハルト、この人どうするにゃ?」


 俺の後ろに隠れていたメルディが聞いてくる。


 自称魔人の男はまだ暴れているが、俺の氷の槍による拘束は解けそうにない。


 なんで襲いかかってきたのかとか聞きたいけど、今はメルディの父親の所に急がなきゃいけないよな?


 そんな訳で──


「アイスランス!!」


 自称魔人を、巨大な氷柱に閉じ込めた。


 魔人ならこの程度で死にはしないだろう。


 メルディの用が済んで時間ができたら、氷から出して事情を聞くことにしよう。


「コイツはここに放置して、メルディの父親の所に行こうか」


「わ、分かったにゃ」


 俺はメルディと一緒に王都へ向かった。



 ──***──


「ハルトに、言わなきゃいけないことがあるにゃ」


「ん? なに?」


 ベスティエの王都、その内部に入るための門に近づいてきた時、メルディが俺に話しかけてきた。


「実はウチ、家出みたいな感じでこの国を飛び出してきたにゃ。だから、せっかく連れてきてくれたけど、ウチは王都には入れないかもしれないにゃ」


「えっ、そうなの?」


 家族に呼ばれて来たのに、その家族が居るという王都に入れなければ意味が無い。


 でも、とりあえず行ってみることにした。

 もしかしたら普通に入れるかもしれない。


 そもそも、家出したくらいで都市に入れなくなることはないだろうと思ったからだ。



 ──***──


「次の者、この王都へ来た目的はなんだ?商人、ではないな」


 検問所にいた鹿の獣人の兵が、俺達の服装と持ち物を見て、商人でないと判断する。


 メルディは何故かローブのフードを被って顔を隠していた。


「観光です」


 俺がそう答えた。


 メルディの父が倒れ、その見舞いに来たということはあまり話さないでほしいとメルディに言われていた。


 赤いレターバード(王族専用の鳥)がメルディの所に来たので、何らかの事情があるのだろう。


 話せないこともあると思うので、詮索せず、メルディの望み通りにしてやることにした。



「すまないが今、観光客は受け入れられないんだ。王都内でちょっと問題が起きていてな」


 取引のための商人は、滞在できる時間を制限して王都に入ることを許されているが、一般の観光客は当面入れないと鹿の獣人が説明してくれた。


 また、ベスティエ出身の者であっても、王都の出入りは厳しく制限されているらしい。



「そこをなんとか、お願いしますにゃ。どうしても中に入らなきゃいけないにゃ」


「……お前、獣人か?」


 顔は見えないが、メルディの手と尻尾を確認した鹿の獣人が聞いてくる。


「そうにゃ」


「であれば、この国の掟は知っているはずだ。なにか規制されている時にどうしても自分の意志を通したい時は、その力を示せ。力を持つ者には従う──それがこの国の掟だ」


 そう言って、鹿の獣人が検問の詰所にいた兵を呼び出した。


「このふたりがどうしても中に入りたいらしい。試練を受けさせてやれ」


「はい。それでは、私についてきてください」


 犬の獣人がやってきて、俺たちをどこかに案内してくれるという。


 メルディが素直について行こうとするので、俺もその後を追った。



 ──***──


「あの的を全力で攻撃してください」


 犬の獣人についてやってきたのは、王都の防壁の外側にある訓練所のような施設。


 そこの真ん中に、酷くボロボロになった直径一メートル、高さ二メートルくらいの円筒形の的が設置されていた。


「あれを壊せばいいの?」


「はい。ですが、魔法は使わないでくださいね。魔法を使ったかどうかは、()()で分かりますから」


 犬の獣人が指さす先を見ると、大きな水晶玉が俺たちがいる場所を囲うように数箇所に設置されていた。


 魔法なしで的を壊さなきゃいけないらしい。


 俺、賢者なんだけど……。


 しかもステータス固定の呪いのせいで、物理攻撃力は10だ。



 うーん、魔法じゃなくて魔力で直接身体を動かすのは大丈夫なのかな?


 試しに、アルヘイムで悪魔アモンを殴った時のように魔力で身体を強化してみる。



 ───。


 俺達を取り囲む水晶玉は無反応だった。


 念のため、魔法も使ってみよう。


「ファイアランス」


 手元に炎の槍を出すと、水晶玉が赤く光った。


「な、何してるんですか!? 魔法はダメだって言ったでしょう!!」


 犬の獣人が焦って俺を止めに来た。


「あ、ごめんなさい。魔法使ったらどうなるか知りたくって」


 ──なるほど。


 魔力を動かしても反応はしないけど、魔法として発動すると水晶玉は反応するらしい。



「もう……とりあえず水晶玉はリセットしますが、次同じように魔法使ったら即、失格にしますからね」


「ありがとうございます。分かりました」


 俺は魔力で肉体を強化し、的へと歩み寄った。


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