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水の精霊王

 

 披露宴が始まり、大分時間が経った。

 日が落ちて暗くなってきたので、各テーブルに設置されたロウソクに火が灯された。


 それだけでは暗かったので、イフリート、シルフ、ウンディーネが協力して、柔らかく光る魔法の玉を無数に会場に浮かべてくれた。


 幻想的な光景に、その場に居た全員が息を飲む。



 それから少しして、ちらほら帰り支度をする人が目に付いた。


 一通り来客全員と挨拶は終わったので、俺たちもそろそろ帰ろうかと思う。


 この会場は明日まで開いているので、酒好きの人たちは、夜通し飲んでいたりするそうだ。


 とりあえず無事に披露宴が終わってよかった。


 色々あったが、ウンディーネのお陰でなんとかなった。


 グレンデール王が俺達エルノール家を守るという約束をしてくれたのはウンディーネの、この国への影響力あってのものだろう。


 帰る前に、ウンディーネにお礼を言っておこう。


 ついでに、来てくれたイフリート、シルフ、オッサンにも挨拶しなくては。



「皆、今日は来てくれてありがとう。特にウンディーネ、色々助かったよ。ありがとう」


 星霊王と三人の精霊王たちは、ひとつのテーブルに集まって料理や酒を楽しんでいた。


「ん、ハルトもう帰るのか? もう少し、我らと話さんか?」


「ティナとリファが疲れてるみたいだから帰るよ。俺もちょっと疲れた」


 星霊王に手招きされたが、ティナたちに疲労の色が見えていたので帰ることにした。


 俺も久しぶりに貴族たちの相手をして疲れた。


「また今度、魔法学園の俺たちの屋敷に来てくれ。顕現用の魔力は渡してるだろ? なんなら今、追加で渡そうか?」


「いや、それには及ばん。十分過ぎるほど魔力を受け取っておる。では、ハルトたちが落ち着いたら、またこうしてみんなで集まらせてもらうとしよう」


「あぁ、その時はもてなすよ」


 そう言って俺は、先に会場を出たティナたちを追いかけようとした。



「あ、ハルト。ひとつ聞きたかったことがあるのだけど、いい?」


 ウンディーネが質問があるという。


 今日一番の功労者だ。

 答えられる範囲ならなんでも答えよう。


「なに?」


「以前、私の水牢でも消えなかったお前の魔法。あれはどういう原理なの? あの時、ハルトはそのうち教えると言っていたけど、なかなか私を呼んでくれないじゃない! 気になって仕方ないのよ」


 あぁ、鋼の森を火事にしちゃった時のあれか。


 確かに、そのうち教えると言った。


 今かよ、と思ったがウンディーネが凄く気になるようだったし、今日はウンディーネに助けられたので答えよう。


「ウンディーネの水牢って、空気を通さないだろ? だから普通に火を閉じ込めると消えるよな」


「そうだ、なのにあの炎の騎士は消えなかった。そもそも火に水をかけたら消えるのが常識ではないか!」


「水って、電気を流すと火を燃やす成分になるんだ」


「──は?」


 ウンディーネがきょとんとする。

 無理もない。


 この世界で、水の電気分解とか知られているはずがない。


 炎の騎士の弱点はもちろん水魔法だ。


 だから対策をした。


 俺は炎の騎士の体表に、水と触れると発動する雷魔法を組み込んでいた。


 敵に水魔法で攻撃されると、その水を電気分解し、酸素と水素に変えてしまう。


 その酸素と水素は、炎の騎士を燃やし続ける燃料となる。


 ちなみに、ウンディーネの水牢に限らず、大体の水魔法は純粋な水で構成されていて、普通は電気分解できない。


 だから俺は、炎の騎士が水魔法で攻撃されると、炎の騎士から俺の魔力が飛び出して水魔法の水を侵食し、電気分解できる別のモノに変換してしまう術式を編み出した。


 もちろん、消費魔力10以下の魔法を複雑に組み合わせて。



 炎の騎士はかなりの火力で燃えているので、水をかけられたくらいでは消えない。


 水牢に閉じ込められたとしても、初めは弱るが、俺の術式が発動し周囲の水が電気分解できるものになれば、それは炎の騎士にとって周りからどんどん燃料が供給される状態になる。


 俺はこのことを、できるだけ簡単にウンディーネに説明した。


「水を直接かけても消えない炎? そ、それどころか、水をかけると火力が増すというのか……」


 信じられないという表情だ。


 無理もない。


 俺も、もし炎の騎士が暴走したらどうしようかと悩んだことがある。


 しかし、風魔法の応用で真空空間を作って、そこに炎の騎士を入れればすぐ消滅させられたので問題ないと気が付いた。


 火を強化してしまうはずの風が火を消し、火を消してしまうはずの水で強化される炎の騎士。


 俺はこいつを考案した時、こいつを倒せる奴は少ないと確信した。


 炎の騎士を倒すには真空空間に入れるか、大火傷覚悟でコアを抜き取るしかない。


 真空って言葉があまり知られていないこの世界において、魔法で真空空間を作れる者は少ないはずだ。


 また、再生能力があればコアを抜き取ることもできるがかなりの苦痛を伴うので、これもあまりやる奴は居ないはずだ。


 たとえコアを抜き取ることに成功しても、俺は大体炎の騎士を複数体創り出すから、一体のコアを抜いたところで、他の騎士たちが連携を取って攻めてくるので、まず殲滅は不可能だ。


 そもそも明らかに燃えてる炎の騎士の弱点は、誰がどうみたって水魔法なのだ。



「なるほど、水はハルトの魔法を強くするだけなのか。つまり強制召喚されたからとか一切関係無く、水の精霊である私はハルトにどう足掻いても勝てないのだな」


「いや、そんなことはないと思うけど……」


 なんかウンディーネが暗い。


 まぁ、俺はウンディーネと戦う気なんてないから、俺が勝てるかどうかとかどうでもいい。



「いや、やはりハルトと契約して間違いなかったということだ。私はこれからも、ハルトの盾となり矛となろう……役立たずといって、契約を切ったりしない、よな?」


「するわけないだろ!」


「そうか、それは助かる。では、これからもよろしく頼むぞ」


「あぁ、こちらこそよろしくな」


 ウンディーネの表情が明るくなった。


 やはり美人だ。

 ウンディーネの笑顔に思わず見とれてしまう。



 おっと、俺は早くふたりの妻のもとへ行かなくては。


 俺は会場に来てくれた人々に一礼し、披露宴会場を後にした。


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