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神獣と獣人族

 

 転移魔法で学園まで帰ってきた。


 俺たちの教室に魔法陣のマーキングがしてあったので、そこに転移したのだ。


 ちなみに、何かあった時のために、学園の色んなところに転移のマーキングがしてある。


 でも、転移が使えるってバレると色々大変なことになりそうなので、誰かに見られないように気を使っている。


 教室であれば、俺の仲間以外は入ってこられないので、人目を気にしなくても大丈夫。


「ハルトお前、転移ができるのか……勇者だったのか?」


 神獣であるシロからしても、転移が使えるというのは珍しいらしい。


「んー、まぁそんなとこ」


 そろそろ授業時間が終わりそうだったので、シロへの回答も適当にしながら、急いで訓練所に向かう。


 シロには時間がある時、俺の事情を教えてあげようと思う。



 ──***──


「ただいま──って、うわ!? 皆、大丈夫?」


 訓練所に入るとクラスの仲間達が全員、屍のように横たわっていた。


 リューシンとルークに至っては、白目を剥いて気絶している。



「ハルト様、おかえりなさい」


「帰ったのか。今ちょうど、みなの回復待ちの時間だ」


 ティナと、こんな状況なのにすごく落ち着いた様子の賢者ルアーノが、出迎えてくれた。


「あの……学園長先生、みんなに魔力回復薬とかあげなくていいんですか?」


 俺のクラスメイトは、魔力炉を拡張する訓練をしていた。


 その訓練方法とは、気絶するまで魔力を使い続けるというもの。


「自分で魔力を回復せんことには魔力炉は拡張されんからの。こればかりは儂は手を出せん。できることと言えば体力を限界まで削っているみなの身体に、これ以上ダメージが入らないように守ることくらいだ」


 現在、俺の仲間の体力は一割を切っている。


 そんな仲間たちに、石とかが飛んできてダメージを負うと、本当に死んでしまう可能性があるのだ。



「ハルト様、その肩に乗っている獣は?」


「な、なにやら神性を感じるのだが……」


 ティナと賢者ルアーノがシロの存在に気付いたようだ。


「我はシロ。ハルトの使い魔だ」


 シロが俺の肩に乗ったまま、自己紹介をする。


「喋れるのですか!?」


「本当にハルトの使い魔か?」


 ティナたちに驚かれた。


 話せる使い魔は珍しいという。


 ちなみに魔法使いや賢者が使役できる使い魔としては魔獣、魔物、妖精、精霊などが居る。


 一応、ヨウコも俺の使い魔ってことになるので、俺には三人と一匹の使い魔がいる。


 魔族であるヨウコ、炎系精霊のマイ、水系精霊のメイ、そして神獣フェンリルであるシロだ。


 こうして改めて考えると、俺の使い魔には話せる奴しかいない。


「まぁ、色々ありまして」


 神獣だと説明すべきだろうか?


 そんなことを思っているとシロが俺の肩から降りて、倒れている俺の仲間の所へ歩み寄った。


「なぁ、こいつら気を失ってるみたいだけど、助けなくていいのか?」


「魔力の回復速度を上げるための訓練中だから、回復薬とか使っちゃダメらしい。噛んだりするなよ。死んじゃうから」


「ふーん、おっ! こいつ起きそう」


 シロがテクテク走っていって、尻尾でメルディの顔を撫でた。


「んっ、んん。あ、あれ、私……」


 シロの尻尾を払い除けながら、メルディが目を覚ました。


「お前、獣人族だな」


「…………えっ、フェンリル様?」


 メルディがシロを見るなり、フェンリルだと気付いた。


 伝承などでは、獣人族は神獣の眷属だとされている。


 だからだろうか。


 今のシロの姿は、本来の姿とかけ離れているにもかかわらず、メルディは神獣フェンリルと見抜いたようだ。


「なっ、フェンリルだと!? 神獣ではないか!」


「ハルト様、いったい何処で見つけてきたのですか?」


「あー。なんか実家近くの山で寝てたみたいなんですよね。で、俺が訓練してたら起こしちゃって……。寝れないって言うから、連れてきちゃいました」


「「「…………」」」


 ティナ、学園長、メルディが唖然としている。


 当のシロはと言うと、俺の身体をスルスルと登り、肩の上へと戻ってきた。


 何だかんだで、ここが気に入ったようだ。



「メルディ、身体は大丈夫なのか?」


「えっ、あぁ、うん。魔力も回復し始めてるし、大丈夫みたいや」


 うん、メルディの魔力回復速度は上がってる感じがする。


 魔力炉拡張訓練が成功したのだろう。


「あ、あのフェンリル様」


「今はシロと呼ばれてる。そう呼んでくれ」


 メルディの呼びかけにシロが応える。


 さっきは文句言ってたが、名前も気に入ってるじゃないか。


 名付け親(?)としては、ちょっと嬉しい。


「はい、シロ様。あの……シロ様はなんの御用でお目覚めになられたのでしょうかにゃ? 我ら獣人族に、何かお求めになることはありますかにゃ?」


 慣れない敬語を使ってるせいか、メルディの語尾が、『にゃ』になっていた。


 やっぱり猫系獣っ娘と言えば、語尾は『にゃ』ですよね。


 俺はちょっとほっこりしていた。


「んー、ハルトに起こされただけで、特に用があるわけではない。だからお前らに求めることもない。当面の住処もハルトにお世話してもらうつもりだしな」


「えっ、そうなの?」


「えっ」


 シロと目が合う。


「いいよな?」


「うーん、ティナ、大丈夫?」


「私は構いませんが……お食事は、何を召し上がられるのでしょうか?」


「カレーとか好きらしい。今日、カレーにしてもらっていい?」


「承知致しました」


「えっ、今日、カレー!? ひゃっほーい」


 シロが俺の肩の上で、全力で尻尾を振り始めた。


 おい、ちょっとキャラ壊れてるぞ?


 もう少し威厳出しとけよ。


「フェンリル、いや、シロ様はカレーがお好きなのかにゃ……」


 ほら、お前の眷属も唖然としてるし。


「かっれぇー、かっれぇー!」


 まぁ、そんなに嬉しいのなら止めはしないけど。


 そうこうしているうちに、ルナやリファ、マイとメイも目を覚ました。


 皆、ある程度回復してシロに気付くと、撫でたり、突っついたりしてシロを愛で始めた。


 神獣だと知っているメルディは、その様子をハラハラしながら見ていた。


 ただ、シロは悪い気はしていないようでリファに身を預け、ルナやマイたちにされるがままにしていた。


 神獣だって教えるのはもう少し後にしとくか。


 俺はそう思いながらまだ目を覚まさないルークとリューシンについていてやることにした。


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