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賢者ルアーノの授業

 

 イフルス魔法学園に入学して五ヶ月が過ぎた。


 この世界の一年は十ヶ月なので、ちょうど半年経過したことになる。


 来月、ティナとリファとの結婚披露宴を行う予定だが、その前に学園のイベントがあった。


 賢者ルアーノ=ヴェル=イフルスによる特別講義だ。


 この学園では半年ごとに一クラスだけ、一番良い成績を残したクラスに学園長が直接講義をしてくれるのだ。


 賢者から直に教えを受けられることなど滅多にない。


 この学園の教師ですら羨むその講義を、今回は俺たちのクラスが受けられることになった。


 賢者の授業を目的として、この学園に入学してくる者も多いらしい。


 ちなみに賢者の講義を受けられるクラスを決める成績とは、クラス間対戦の勝利数や、各テストの結果、一ヶ月間の学園外活動での功績などから導き出される。


 俺たちは対戦で上級生のクラスに勝利し続けたし、テストでも優秀な成績を収めた。


 また、学園外活動ではアルヘイムを救ったことなどがあり、文句無しでトップの成績となったみたいだ。



 ということで、いつもの俺たちの教室に賢者ルアーノがやってきた。


「このクラスは半年間、かつてないほど優秀な成績を残した。特に学園外活動ではアルヘイムを救ったこと、まことに良くやってくれた。陛下も大層お喜びだった」


 どうやらエルフ王がグレンデールの国王に、俺たちに国を救われたことに関して、感謝の手紙を書いたらしい。


 友好の証として、世界樹の葉を添えて。


 それを非常に喜んだ国王が、学園長に俺たちを労うようにと指示を出したのだとか。


「国王陛下のご指示で君たちに褒美を与えることになっている。通常、最優秀クラスに行う私の講義は一日だけなのだが、それを一週間に延ばそうと思う。それでいいかね?」


 素晴らしいご褒美です。


 正真正銘、本物の賢者の講義を一週間も受けられる。


 魔法を学ぶ身の者としては、これ以上のご褒美は考えられなかった。


 俺は賢者だが所詮、転生者特典で職業が賢者になっただけなのだ。


 魔力検知や、魔力操作に補正がかかっているので、そこそこ強い魔法が使えるが、真の意味で魔法を使いこなせているかと言われると疑問が残る。


 まだまだ俺の魔法は強くなる余地があると思っていた。


 そんな訳で魔導の真髄に迫り、本当の賢者となったルアーノ学園長の講義をずっと受けてみたいと思っていた。



「じいちゃん、一週間とかケチなこと言わずに、ちょくちょく来て講義してよ」


 ルークが学園長にお願いをする。

 ルークは賢者ルアーノの孫なのだ。


 とはいえ、さすがに無理だろ。


 この国でたったひとりの賢者であるルアーノ学園長は、学園を運営するための仕事だけではなく、一般の兵や冒険者では倒せない魔物、主にSランクに分類される魔物の討伐などにも呼び出されることがあるからだ。


 そんな多忙な学園長が、一週間も講義をしてくれることすら奇跡なのに──


「孫の頼みであれば仕方ないのぉ。今後は週に一度くらいは顔を出そうかの」


 あまぁーい!

 甘い、甘いぞ学園長!


 孫に甘すぎる。


 そんなので大丈夫か?


 いや、もちろん嬉しいけども。


「その代わり、魔物の討伐を手伝ってもらうが、問題ないな?」


 学園長が交換条件を提示してきた。


 魔物討伐の手伝いぐらいで、賢者の授業が受けられるのなら喜んで──


 ん? 待てよ……。


 賢者ルアーノが討伐に呼び出される魔物?


 そ、そんなのSランクの魔物に決まっているじゃないか!


「おっけー、じいちゃん」


 おいぃぃぃ!

 勝手に安請け合いするんじゃない!


「ルーク、待て! 学園長が呼ばれるほどの魔物だぞ? もっと慎重になれよ」


「えっ、でも逆に言えば、()()()()()()()()()()()魔物だろ? じゃあ、ティナ先生とハルトが居れば負けないじゃん」


 な、何を言ってるんだ?


「ふむ、そういうことだ。魔法の多彩さでは、まだまだ儂は世界最高だと自負しておる。しかし、単純な戦闘能力で言えばハルトやティナの方が上だ。魔法単発の威力で言えばルークも儂より上かもしれん」


 祖父に肯定されて、ルークは少し嬉しそうだった。


「魔物討伐もいい経験になりそうですね。私はその提案、受けていいと思います」


 ティナは学園長の提案に賛成のようだ。


 Sランクの魔物を倒すのがいい経験って……


「何より定期的に賢者ルアーノの講義を受けられるなんて皆さんにとって、これ以上ない学びの場となるはずです」


「そ、それは確かにあるけど」


「正直、儂も歳での。高ランクの魔物討伐が、ちと厳しくなってきているのだ。だから今後はお前たちに任せたいと思う」


「……じいちゃん」


「お前たちには儂の全てを授けよう。これから、この世界の平和を守るのはお前たちになるのだ」


「せ、世界の!?」


 いきなり話が大きくなった。


 どういうことだろう?


「実は、このクラスには今後の世界の平和を守る戦力となるべき者たちを寄せ集めたのだ。エルフ族、獣人族、竜人族、魔族、精霊族、そして人族。それぞれの種族で見込みがある者たちが同じ時期に入学してくるように手を回した」


 学園長が一人一人の顔を見ながら話しかけていく。


 なるほど。


 それで、このクラスには色んな種族が集まったのか。


 ちなみにこの魔法学園は、人族以外は特に入学時の年齢制限がない。


 恐らく、人族で見込みのある者──賢者の孫のルークが入学する時期に、他の仲間たちの入学時期を調整したのだろう。


「また、英雄ティナ=ハリベルが教師になりたいと儂を訪ねてきたことで、この計画は加速した。本来であれば、お前たちを鍛え始めるのは五年生になってからと考えていたのだが……」


 ちょっと学園長が言葉を詰まらせる。


「まさか一年生の時点で、学園最優秀クラスになるとは思ってなかった……お前たち、ちょっと異常だぞ?」


 うん、それは俺も何となく思ってた。


「だが、鍛えるべき素質が既に備わっているのなら、さっさと鍛えてしまえば良いのだ。先程はルークの頼みだからといったが、本当は儂が定期的にお前たちを訓練するのは、もう決めていたことだ」


「そうだったのですか」


 ティナも知らなかったようだ。


「もちろん、今後もこのクラスの担任はティナに任せたい。だが、魔法の真髄を知れば、お前たちの魔法はもう一段階強くなるだろう。儂の講義でそれを学んでもらいたい」


「「「「はい!」」」」


 こうして俺たちは世界を守る力を得るため、賢者ルアーノの講義を受けていくことになった。


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