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レベル1の最強賢者 ~ 呪いで最下級魔法しか使えないけど、神の勘違いで無限の魔力を手に入れて最強に ~  作者: 木塚 麻弥
第三章 エルフの王国

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謀叛の計画

 

 世界樹を挟んで、アルヘイム王城の反対側に位置する裏町。この裏町は世界樹によって陽の光がほとんど遮られるため、昼でも薄暗い。


 そこの片隅にある古びた飲み屋にエルフとしては珍しい筋肉質の男が、ひとりで浴びるように酒を飲んでいた。


「くそっ、なんで俺が」


 そう呟く男はティナとの結婚する者を決める武闘大会でハルトと一回戦で戦い、敗れた()国軍大将だった。


 彼は大会後、ハルトにあっさり負けたことを責められ、その職を失っていた。


 彼が弱かったわけではない。

 相手が悪かった。


 事実、元大将はエルフ王と、王に仕える執事サリオンを除けばアルヘイムにおいて最強であった。


 貴族たちが大会の邪魔者であるハルトをさっさと退場させるために、元大将にハルトと戦わせようとして彼の出場を勝手に決めたのだ。


 だが、元大将にとっても悪い話ではなかった。人族の少年を倒し、次の貴族の息子との戦いの前に体調不良を訴え棄権する。


 それだけで大金が手に入る予定だったのだ。

 しかし彼は負けた。


 それも自滅のような形で。

 計画通りに事が運ばす、怒った貴族たちが大将の交代を進言した。


 エルフ王は止めようとしたが、あまりにあっさり負けたことと、全ての大臣が大将交代に賛成したため、やむ無く大将の強制除隊を決めた。


 そして、彼は今ここにいる。目の前に積まれた大金に目が眩み、職を失った。


 更に貴族たちは金を払わなかった。

 負けたのだから──と。


 彼に家族は居なかった。

 己の武と、部下を鍛え上げることに心血を注いできた。


 だが、完全な武人であったわけではない。

 大将の職で得ていた給金は、ほとんど女遊びと酒で消費していた。

 家は軍から貸与されていたもので、除隊された今は追い出された。


 不名誉除隊でかなり減らされた、僅かばかりの退職金を受け取り、彼は今ここで酒を飲んでいる。


 壊れそうな音を立て、今にも倒壊しそうな飲み屋の扉が開いた。


「大将、こちらでしたか!」


 片目に眼帯をしたエルフが入ってきた。

 彼女は元大将の部下だった。


「お前か、俺はもう大将ではない。そう呼ぶな」

「ですが、私は……」


 眼帯のエルフが自分を慕ってくれていることに元大将は気づいていた。

 昔、魔物に襲われているところを助けて以来、元大将に恩を返そうと必死にその身を鍛え上げ、国軍の副司令にまで上り詰めていた。


「お前は仕事があるだろう。早く戻れ。もしかしたら次の大将にはお前がなるのかもな」


「私の上官は貴方だけです! 貴方の抜けた軍に、用などありません。私も先程、貴方を愚弄した貴族を殴りつけ、除隊されてきました!」


「お前……馬鹿なことを」


 そう言いながら、元大将は嬉しくなっていた。

 同時に今の自分の姿を恥じる。


 家もなく、金もない。こんな裏町でただただ酒を飲む男に成り果てていた自分を。



「……復讐、しませんか?」


「な、何を言ってるんだ?」


「貴方がこんな目にあっているのは、あの人族のせいです! エルフ王のせいです! 貴族の、大臣のせいです! この国のせいです!!」


 眼帯のエルフが元大将に詰め寄る。

 そして、その眼帯を外した。


「お、お前、目が!?」


 昔、魔物に襲われて失明したはずの目が、赤く輝いて、元大将を見つめていた。


 大将の心の底から憎しみが溢れ出した。


 憎い。


 俺に恥をかかせた人族が憎い。


 俺を除隊させたエルフ王が憎い。


 俺を謀った貴族たちが、大臣たちが憎い。


 この国が憎い。大っ嫌いだ。


 大将の心は憎しみで黒く塗りつぶされた。


「俺は、この国に復讐がしたい。手を貸してくれるか?」


「もちろんです」



「き、君たち、何を言ってるんだ!?」


 この会話を聞いていた飲み屋の主人が逃げ出そうとした。


 しかし、数歩進んで彼はその場に崩れ落ちた。


 彼の背中に、眼帯のエルフが投げた短剣が突き刺さったのだ。


 部下が市民を殺したにもかかわらず、元大将は何も思わなかった。


「できるだけ派手に復讐がしたい。何か良い方法はあるか?」


「お任せください。この国に住まう全ての者に絶望を与えましょう」


「あぁ、それは楽しみだ」


 元大将と眼帯の女エルフは、主人の居なくなった飲み屋を出るとそのまま裏町の闇へと消えていった。


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