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オムツ工場

 

「……今更だけど、H&T商会って凄いね」


 目の前にある巨大な工場を見て、思わず声が漏れた。


 スライム王女に許可を貰って約1か月後。

 オムツ工場が完成していた。 


 俺が今いるのは、意思を持たない無垢のスライムを養殖している大きな水槽の前。魔力を吸って肥大化したスライムが大量に泳いでいる。


「この程度の工場でしたら運営を任せられる部下がたくさんいます」


 ティナがちょっと自慢げにそう言う。


「次の工程を見に行きましょう」

「はーい」


 案内され、次のエリアに進む。


「ここはスライムから核を抜き取る場所です」


 スライムをそのままオムツの原料にするわけじゃないらしい。


「普通に乾燥させるんじゃないんだね」


「えぇ。乾燥させるだけでは、水分を吸収したスライムが活動を再開させることが多く……。そうなった場合、オムツを身につけた赤ちゃんが襲われてしまいます」


 スライムって完全に乾燥させてても復活するんだ。凄い生命力。


「ちなみに通常のスライムはコアが傷ついたり失ったりすると、すぐに水になってしまいます。そこでアカリ様に創造して頂いた特殊な器具を使用します」

 

 100体くらいのゴーレムたちが、注射器みたいな器具をスライムに刺しては抜くという作業を繰り返していた。


「ゴーレム使って自動化してるんだ」


「少し精度が求められる作業ですが、やることはただの繰り返しになるのでヒトよりゴーレムの方が都合が良いんです。魔力さえ供給すれば昼夜休まず製造が可能になりますし」


 コアらしきものを抜き取られたスライムの身体は、ベルトコンベアに乗せられて次の工程に運ばれていく。


「抜き取られたスライムのコアはどうなるの?」


「最初に見た水槽に戻します。アレは魔力を含んだ水で満たされていますので、コアを入れて1日ほどでスライムが再び肉体を造り始めます」


 再利用可能してるんですね。



「次はこちらです」

「ここは?」


 蒸気が立ち込める部屋に来た。


「スライムの乾燥エリアです」


 蒸発してるのは余分な水分らしい。


「人族の大人ひとり分の体積のスライムを完全に乾燥させると、こうなります」


 そう言ってティナが見せてくれたのは拳サイズの塊。


「あの水槽にいたスライム一匹分?」

「そうです」


 こんなに小さくなるんだ。

 スライムの吸水力、恐るべし。


「吸水量は自重の500倍程度ですね。これを次の工程で粉にします」


 隣のエリアは粉が舞うから、ヒトは出入りできないようにしているらしい。この粉が水分に触れるとゲル状になり、多くの水分を吸収できる。


「その後、別の工程で作った吸水紙や防水紙、赤ちゃんの肌に触れても痛くないように作った表面材と合わせてくっつけたのがこちらです」


「おぉ!」


 見た目は元の世界で見たオムツそのもの。


「いかがでしょうか?」

「いや、すごいよコレ」


 実験用に手渡された水をオムツに流してみると、完璧に吸収されていた。


「問題ないということで、こちらはH&T商会で取り扱わせていただきますね」


 原材料の確保から加工、流通まで全部ティナがやってくれた。


 俺がやったことと言えばアイデアをだしたのと、スライムを使って良いかスライム王女に確認したことだけ。ちょっと申し訳ない。


 なにかもう少し役に立てればよかったんだけど……。



「そう言えばこれ、赤ちゃんがおしっこしたって分からないよね」


「気持ち悪ければ泣くので、それで……あっ」


 ティナも気付いたようだ。


「ちゃんとオムツが機能してれば、布おむつより気持ち悪くなりにくいから赤ちゃんもあんまり泣かないんだよね。ただ吸収されたとしても、尿とかが皮膚に当たってるのは変わらないから出来れば早めに交換しないと。で、その交換時期が分かるようにしたい」


「確かにそうですね。では、どうしましょう」


「おしっこしたらオムツ表面の色が変わるとかできないかな?」


 元の世界のオムツはそうなっていた。

 どんな原理なのかは知らないけど。


「なるほど、色が……。ちょっと開発チームと一緒に考えてみます」


「よろしく。必要な素材があれば取りにいくから言ってね」


「承知しました」


 他人任せ。でもティナの部下に頭のいいヒトがたくさんいるみたいだから、俺がこうしてアイデアだけ出せばだいたい何とかしてくれる。

 

 ちょっと仕事をした気になった。


 ティナは工場のヒトと打合せをしに行っちゃったので、俺は一旦屋敷に戻ることにした。安産祈願と助産師さんの確保、オムツ造り。


 さて、次は何を準備しようかな。

 

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