スライムガールズ
紙オムツを開発することになった。
「とりあえず水分を吸収する素材から考えよう」
一番簡単なのは神字を使って、この世界にない吸水性ポリマーってのを創造してしまうこと。この方法であれば成分とかよくわかっていないモノでも生み出せてしまう。
でもそれをすると創造神様に迷惑がかかる。
だからこの案はなし!
てなると、ティナがアイデアを出してくれた乾燥スライムを使うのが有力だな。
この世界には大きな都市に行けば下水が整備されている。俺たちが通っているイフルス魔法学園やクランハウスがあるグレンデール王都などがそうで、都市は非常に綺麗だ。地上に臭いや汚水が溢れないよう、魔法とスライムで対策がされていると聞いたことがある。
汚物を主食とするスライムを下水道内に放つことで、大規模な下水処理施設がなくてもなんとかなっているらしい。めっちゃエコで、ヒトと共存できる魔物スライム。彼らに新たな役割を担ってもらおう。
問題になるのは安定供給できるかどうかだな。
魔法が使えない人々のために量産していくのはまだ先の話しだとしても、スライムの身体を使うなら事前にその点も検討しておく必要があると思う。
ます思いつくのは冒険者に依頼を出すこと。
俺も冒険者で生計を立てている。まぁ、正直に言うとティナがくれるお小遣いだけでも十分家族を養えてしまうんだけど……。話が逸れた。
低ランクの冒険者にとっても、スライムは無視する対象となってしまう。スライムがヒトや家畜を襲ったりすることは滅多にない。問題になることがほぼないんだ。レベルの低いヒトがレベル上げのために戦うくらいで、攻撃しなければスライムが自ら何かを攻撃することはない。
だからスライム退治の依頼というのは現在、ほとんど存在しない。
そんな状況なので、冒険者に依頼を出せば新たな仕事を創ることになる。そこで得たスライムの身体を使ってオムツを作り、一般のヒトに販売する。その売り上げを使ってまた冒険者にスライム狩りの依頼を出す。この流れなら経済を回すことができる。
「これはちょっといいかも」
問題はスライムを乾燥させると、その体積がかなり減少してしまうこと。大体100分の1くらいのサイズになる。つまり魔法が使えない子育て家庭に紙オムツを広く普及させようとすると、膨大な量のスライムが必要になるんだ。
それほど多くのスライムが発生した事案をあまり知らない。
スライムの養殖場でも作るか……?
これが第2の案。
そういえば第1案も第2案も、共通する問題があった。
「パパぁ! ただいまー」
「「「ただいまぁ!」」」
元気よく4人の少女が俺に話しかけてきた。
「お帰り。みんなお仕事お疲れ様」
この4人は全員がスライムだった。
俺が魔力を与えて人化した存在。
今はエルノール家の一員として、日々俺たちに癒しを与えてくれる。
長女のスイ、次女のスー、三女のスラ、四女のライム。
彼女たちがいるから、俺はスライムを材料にオムツを作るという行為に抵抗があった。彼女らは人化しているので、すでにスライムとは種が異なる。それにスイたちは敵としてスライムを狩ることも気に留めない。
だから気にしなくても良いのだが……。
「パパどーしたの?」
「なにかこまってる?」
「わたしたち、おてつだいするよ」
「なんでもいって!」
こんな良い子たちと元同種をオムツの材料にするというのは、どうしても気が引けてしまう。
せめて彼女らがもう少し大きくなって、自分の意思をもっとはっきり主張できるようになってくれればいいのだけど……。
もしくは大人のスライムって存在がいれば、そっちに意見を聞くのもありか。
てかそもそもスライムに子供とか大人ってあるのか?
「スイたちは子供の姿だけど、大人のスライムもいる?」
ダメもとで聞いてみた。
「いるよ!」
「おとな、おっきい」
「わたしたち、うまれてまもない」
「しょうらいはママみたいになるの」
大人のスライムがいるんだ。
「おっきなスライムはみんなみたいにお話しできる?」
「んーとね」
「できないかな」
「うん、できない」
やっぱりダメか。
そう思った。
「ヒトとおはなしできるのは、おうじょさまだけなんだよ」
「え?」
「そうだね」
「うん、おうじょさま」
「きれいなんだよ」
おうじょさま……。
スライムの王女様ってこと?
そんな魔物がいたんだ。
じゃあ、会いに行こう。
でも怒られるかもな。お仲間の身体をオムツの材料にさせてって言ったら、さすがに良い気はされないと思う。
まぁ、ダメだったら諦めよう。
まずはスライム王女様の居場所探し開始だ!!