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最強クラン決定戦 本戦(3/10)


『ここまで様々な方法でクランハウスを動かしてしまう猛者たちを紹介してきましたが、こっから先はみんな同じです。普通に魔力で動かすんです──って、全然普通じゃないですけどねっ! 建物に手足を生やしてここまで動かしてくる時点で、普通のヒトはやろうとしないでしょう』


 また会場に振動が伝わってくる。


『次に登場しますのは極東の島国フォノストより海を越え、はるばるやって来たクランです。えーと、恐らく皆さんも聞きなれない戦闘職でしょう。魔法ではなく独自の忍術という技を使う忍者。そして達人はオリハルコンすら両断する剣技の使い手である侍。彼らが集って作られたクラン、御庭番衆。フォノスト王の守護者でもある彼らが、国威発揚のためにやって来ました!!』


 現れたのは傘を被った鎧武者。サイズはここまで登場したクランハウスの中で最も小ぶりだが、ただならぬ雰囲気を醸し出していた。頭部には巨大な笠を被り、背には巻物を携える。しっかりとした足取りの二足歩行で、四本腕のうち二本には刀が握られている。


『御庭番衆はその昔、フォノストで九尾狐と覇権を争っていたと伝えられる巨人の遺骸を使ったクランハウスです! 驚愕すべきはその強度。死して数千年経つ死骸でも、元は九尾の攻撃すら防いでいたとされる強靭な外骨格。これを破れるクランハウスは存在するのでしょうか!?』


 御庭番衆は既に待機していたマジックナイツたちに迎えられ、その右端に並び立った。残る決勝出場クランは4つ。


 続いて会場に伝わってきた振動はこれまでのものより小刻みだった。それはすなわち、複数の脚を有するクランハウスであるということ。


『巨体を動かすならそれを支える脚が重要です。二足歩行? そんなバランスが悪くなりそうなことはしません。では四足歩行は? 二足に比べれば安定しますが、それでもまだまだ。脚を増やせば動かせるクランハウスもでかくなる。今大会最大重量(自称)の重魔法騎士団です!』


 八本の脚を持つ蜘蛛のような形状のクランハウスが登場した。高さはないものの、これまで出てきたどのクランハウスよりも巨大で、多数の大砲が配備されているのが確認できた。


 重魔法騎士団が他のクランハウスと並んだとき、観客の耳には何かが這ってこの場に近づいてきているような音が聞こえていた。不気味なその音が次第に大きくなる。


『二足の巨人、車輪、四足、八脚。いろいろ集まりましたが、そもそもクランハウスを動かすのに、足は不要だ。そう思い至ったクランが存在しました。ラスカン皇国より、ファスダラム!!』


 大きな蛇が、その身を蛇行させながら登場した。


「で、でけぇな」

「これが、魔力で動いてる?」

「おいおいおい、マジかよ……」


 頭を持ち上げたその高さは、ここまでで最大だった幻影蝶の石造巨人を見下ろすほど。観客たちはファスダラムの頭を見上げ、驚きの声を漏らした。ちなみに普段はとぐろを巻いて大型円形のクランハウスとなっているようだ。


『残すはふたつ。前回大会は《《この男》》が悪魔と戦闘後の療養中で参加できなかったこともあり、アークユニオンに惜敗してしまった。今年は悪魔すらほふる男が万全の状態で登場だぁ! 世界を東西真っ二つにした時、西側最強はこの鬼人。ゲイル=ヴァーミリオン!!』


 これまで以上に会場が沸いた。まだゲイルのクランハウスは見えないが、彼が登場するという情報だけで人々の興奮は最高潮に達する。


 鬼人はオーガから進化した種族で、人語を話しヒトと友好関係を築くことができる。そしてゲイルは多くの国を魔人や悪魔の侵攻から救った実績がある英雄だった。


『ゲイルが率いるのは鬼人族やホブゴブリン族、人族、エルフ族、ドワーフ族など、この世界のあらゆる種族が集う人魔連合!!』


 軽快な足取りで、人馬一体の巨体が闘技場の中へやって来た。その頭上にゲイルが仁王立ちしている。会場に集まった人々は彼に向かってはちきれんばかりの声援を送った。



『ふぅ。やっと次でラストです』


 観客たちの興奮が少し落ち着いてきたところで、実況のリバスが最後のクランを紹介し始めた。


『正直に言おう。ゲイル、君が世界最強だ。君が出場した大会は全て人魔連合が優勝している。でもそれは、《《彼女》》がこれまで最強クラン決定戦に出てこなかったからでもあるんじゃないのか?』


 会場が騒然となった。


 一般人にとって、異世界から来た勇者を除けばゲイルと互角以上に戦える人物などひとりしか分からない。彼女はこれまで最強クラン決定戦に出たことはないが、それでも人々は彼女が最強であると知っている。


 守護の勇者と共に世界を救った英雄。

 伝説の魔法剣士。ティナ=ハリベル。


「彼女って、まさか……」

「まさか、ティナ様?」

「いや。それはないだろ」

「あ、あぁ。ありえないよ」


 口ではありえないと言う。

 それでも人々は期待してしまった。


 ゲイルとティナによる真の頂上決定戦が見られるのではないかと。


 その期待に応えるようにリバスが声を張る。


『西最強のゲイルに対抗するは東側最強の彼女。勇者と共に魔王ベレトを打ち滅ぼし、世界を救った英雄──ティナ=ハリベル!!』


 これまでで最大の歓声が上がる。


『救世の英雄が仲間を集い、育て、世界最強を取りに来た! さぁ、世紀の戦いに期待せよ!! ファミリアの登場です!!!!』



 しかし、何も起きなかった。


 

『……あ、あれ?』


 本来なら南側の巨大通路からファミリアのクランハウスが登場する手はずだった。そう聞かされていたリバスはファミリアが姿を見せなかったことで困惑する。


 そもそもここまでは大会運営スポンサーであるH&T商会の指示通りに進めてきた。そのH&T商会のトップがティナなのだ。つまりこのタイミングでファミリアが登場するというのは、ファミリア自身が指定してきたこと。


『えーっと……。ファミリアのみなさーん? ティナさまー?』


 リバスが不安げな声を出す。

 観客たちもどうなっているのかとざわめき始めた。


 その時──



『ご、ごめんなさい。遅れてしまいました』


 透き通るような声が《《空から》》聞こえてきた。

 それはティナの声だ。


『空飛んでるのに迷っちゃったにゃ』

『ヨウコが操縦させろって言うからだぞ』

『むぅ。思っておったより難しいのじゃ』

『ヨウコさん。そろそろ止まらないと』

『これ、どうやって止めるのかの?』

『きっとこのボタンよ。ヨウコ』

『キキョウ! それは魔導砲の発射ボタン!!』

『は、ハル(にぃ)、起動しちゃったよ!?』


 空から騒がしい声が聞こえる。

 人々は空を見上げ──



 そして固まった。

 

 ありえないモノがそこにあったからだ。


『あの……、ハルト様。マイクが拡声モードになっています』

『えっ、まじ?』


 《《巨大な塊が空に浮いていた》》。

 声はそこから聞こえてくる。


 

『あー。遅くなりました、ファミリアです』


 それはハルトたちのクランハウスだった。


 今回の最強クラン決定戦、決勝の出場資格はクランハウスに乗ってこの場までやってくること。それがクランハウス殴り合い大戦の最低条件だった。


 邪神の呪いを受けた最強賢者は、自分たちのクランハウスが建つ広大な敷地全域に飛行魔法を施し、《《空飛ぶクランハウスに乗ってこの場までやって来た》》のだ。


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