最強クラン決定戦 本戦(2/10)
突如現れた巨大な動く建造物を目の当たりにした観客たちの反応は様々だった。激しく動揺する者や興奮して叫び出す者、建物を動かしてこの場までやってくるという途方もない技術力を感じ取り、衝撃のあまり涙を流す者までいた。
最強クラン決定戦の実況者であるリバスは主催者側からこうなることをあらかじめ聞かされており、観客たちの反応は最初から予測できていた。だから予定通り、魔法で増強された声で今この場にやって来たクランの紹介を始める。
『まず最初に登場したのはグレンデールから西方にある人族の王国、アイルロスからやって来た冒険者クラン。マジックナイツのクランハウスです!』
リバスの紹介に合せてクランハウスが巨大な両腕を持ち上げる。観客たちはその様子を見て大きな歓声を上げた。マジックナイツは最強クラン決定戦の決勝常連で、世界的にも有名なクランだ。そして観客たちは目の前で動いているのが本物のクランハウスであることをハッキリ認識し、感動や動揺がより大きく広がっていった。
『マジックナイツは彼らが元々クランハウスとして使用していた古城をそのまま魔改造して戦う城にしてしまいました! その技術力、財力。そしてこの巨体をこの場まで持ってきてしまう膨大な魔力量には驚きを隠せません』
リバスの言葉の途中。
観客の何人かが小さな揺れに気付いた。
──そう。
これはクランハウス殴り合い大戦。
つまり、この場に世界最強を競うクランが集うのだ。
彼らのクランハウスを引き連れて。
『おっと、次が来たようですね』
マジックナイツが登場した時以上の歓声が上がる。
現れたのは、まさに石の巨人。
『やって来ました、南の大国ウェルベリアから。彼らは複数の拠点を変形、そして合体させ、なんと一体の巨人にした! 前回大会の覇者、アークユニオンの登場だ!』
城をそのまま使うマジックナイツほど巨大ではないが、アークユニオンのクランハウスは高さで勝っていた。そして巨体でありながら二足歩行していることが、この場にいる技術者たちを魅了した。
「あ、あの巨体で二足歩行を!?」
「いったい、どうやってバランスを……」
「高さがヒトふたり程度のゴーレムですら二足歩行させるのは至難の業だというのに。あんなサイズでそれをやってのけるとは、信じられん技術だ」
マジックナイツの横に立つアークユニオン。二体はその巨大な腕と腕を軽く当て合った。ライバルであるはずの二団体だが、このクランハウス殴り合い大戦を熱望し続けてきた友でもあるのだ。
『さぁさぁ、お次は少し違います。なんと彼らがクランハウスにしていたのは、旧世紀に建造された石の巨人でした! クランハウスを動くようにする? いいえ、そんな必要はありません。だって元から動くんです。精霊使いたちが集って設立した多国籍クラン、幻影蝶です!!』
この世界では千年で一世紀という年代区分になっている。旧世紀とは今から850年より以前の出来事を意味する。その時代には精霊の力で動く石の巨人がいたのだ。
幻影蝶は大精霊たちの協力を得て、石の巨人をこの時代で再稼働させることに成功したクランだった。
『マジックナイツとアークユニオンは魔力で。幻影蝶は精霊の力でクランハウスを動かしました。では、次にご紹介するのは──』
しゅっ、しゅっ、しゅっ、と小気味の良い音が聞こえてくる。
四足それぞれに車輪を有し、四本の腕を持つ巨体が黒煙を吐きながら現れた。
『技術屋集団、ドワーフの王国ドルガンデより。ギアロットが、蒸気機関という技術で動く巨人を引き連れてやって来たぁぁああ!!』
「おい、見たかアレ。足の車輪で動いてるぞ」
「滑るように移動してたな」
「蒸気機関って、確か魔力が無くても移動に使えるっていう」
「すげぇ。あんなでかいのも動かせるんだ」
この世界では馬車や魔導船などが主な移動手段であり、蒸気機関はまだ普及していない。ドルガンデでは蒸気機関で動く汽車が開発されていて国内には線路も敷設されているが、まだ開発余地の残る技術だとして国外には伝えられていなかった。
『次もドワーフ絡みのクランが登場します! ただここはちょっと。その、なんていうか……。だいぶ脳筋なクランでして』
現れたのは二足歩行の巨人。
その構造は金属と木材でできていた。
使用部材はギアロットと大差ない。
根本的に違うのはその動力。
『ドワーフは手先が器用な種族として認知されていますが、一方で戦闘方法は棍棒や石斧を振り回すザ・物理派です。そんな彼らが手を組んだのは、同じく物理攻撃至上主義の獣人族でした。獣人の王国ベスティエより牙技団が、人力で動く巨人に乗って登場です!!!』
ギアや滑車、てこの原理が駆使された機体。それを肉体強化魔法でパワーアップした獣人が動力源となって動かす巨人が、人力で動いているとは思えない軽快なステップで闘技台の中央で舞ってみせた。




