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精霊王を纏う者

 

「わぁー。すっごいね、コレ」

「えぇ。今ならなんだってできる気がする」


 シルフとウンディーネが強化された自身の身体を確認していた。シルフは大人の女性の姿へと成長し、ウンディーネは身に纏う水のオーラがいつも以上に洗練されている。


 予選一回戦ではシルフがハルトの魔力を使って自身とウンディーネたちを強化した。しかし今回は最強の賢者が明確な意思で彼女らを強化したのだ。消費された魔力の次元が違う。その強化の幅が別格だった。


「儂も……。いや、()()ここまで力が溢れてくるのは数万年ぶりか」


 黒髪の青年が自らの手を見ながら呟く。

 元は白髭白髪のお爺さんだったノームだ。


「えっ。ノーム、なの?」

「ノーム!? う、嘘でしょ!」


「うるせぇな。俺だっていきなりこんな姿で呼び出されてビックリしてんの」


 彼はハルトの魔力で強化され、全盛期の姿に戻っていた。シルフとウンディーネはこれまで以上の強さになっている。一方、歳をとって力が衰えたノームは、かつての強大だった力を取り戻した。


「なんにせよ、この感じなら調子に乗った若造に灸をすえるくらいはできそうだな」


 ノームがイフリートに視線を送る。


「あ、ありえねーだろ! おお、お前が、あのノームだってのか!?」


 強力なオーラを纏った土の精霊王を見て、火の精霊王が焦っていた。レインに強化されたことで全能感に浸っていた彼は、星霊王を前にした時以上に気圧されている。


 弱腰になるイフリートだが、彼の召喚者もまた一般的なヒトではなかった。


「落ち着け、イフリート。貴方は炎の精霊王だ。破壊と不死の象徴である炎の王よ。貴方は強い。そして──」


 レインからイフリートに追加の魔力が送り込まれる。

 その魔力量は上級魔導士数十人分以上。


「貴方を呼び出した俺も、そこそこ強いんですよ」


 送り込まれた魔力により、イフリートの纏う青い炎の勢いが増す。


「我を呼び出した時が最大ではなかったのか」


 カインやレオンなど、強くなれる血筋で強くなるべくして強くなった者たち。神の加護で強くなる異世界人。中にはハルトのように呪いで強くなるというイレギュラーな存在もいる。


 レインには血筋も加護も、呪いもなかった。

 彼は努力でヒトとしての限界を突破した。


「共に戦って勝とう。イフリート」


「あぁ。ところでレインよ。ひとつ提案がある」


「提案?」


魔纏(まてん)はできるか? 魔法を纏う技術だ」


「……あぁ、できる」


「よし。ならば()()()()。お前になら使われてみるのもよさそうだ」


 実体のあったイフリートが完全に炎だけの存在になる。その炎がレインの身体の周囲に集っていく。


⦅精霊王を纏うのは長い歴史上、お前がはじめてだ。誇るが良い⦆


「なるほど、これはすごい。魔力が全くロスなしで魔法になる。精霊って、こんな感じなのか」


 膨大な魔力を持つ存在と、最高効率で魔法を行使可能な精霊が融合した。魔法の発達した世界で、普通に考えれば彼らは最強の存在となった。


 だが──



 精霊王を纏うのに必要な技術である魔纏はハルトも使うことが出来る。彼はそれを魔衣と呼んでいた。


「おぉ! 精霊王を魔法として纏うなんてできちゃうんだ」


 この世界で()()()()()()()()()使()()賢者が驚いていた。彼は呪いのせいで最下級魔法の詠唱しかできない。発動できるのも最下級魔法のみ。


 しかしハルトには魔法を組合わせる技術があった。加えて呪いの副次的な効果により、彼には無限の魔力があった。


 そんな最強賢者の望みを汲み取った精霊王たち。


「ハルトもアレ、やりたそうだね」


「あら。私はシルフの方がハルトに使ってもらいたがっているように見えるけど」


「ウンディーネだってそうでしょ?」


「面白そうだ。是非俺も混ぜてくれ」


 風と水、そして土の精霊王の身体が、それぞれ司る属性のオーラへと変化する。


「「「さぁ、ハルト。纏って」」」

「みんな……。うん! やろう!!」


「敵がパワーアップするのをのんびり待つと思うなよ!!」


 ハルトがシルフたちを纏おうとする寸前、レインは火炎弾を放った。強化された炎の精霊王の魔法を、一切の無駄なく破壊力につなげられる攻撃。当たればタダでは済まないだろう。


 実体のある精霊体から、オーラへとその身を変化させていたシルフたちは無事だった。そして邪神の呪いを受け、ステータスが〘固定〙されているハルトも当然、軽度の火傷すら負っていなかった。


「びっくりしたー。すごい威力になってる」


 爆炎の中からハルトが無傷で現れた。


「……やっぱり君はバケモノだ。ハルト」


 魔法学園の元生徒会長で、かつて神童と呼ばれていた男が唖然とする。レインは努力で力を手に入れたが、ハルトも強くなるために努力してきた。


 ふたりの違いは神の加護の有無。


 もっともハルトが神から受けとったたのは加護ではなく呪いだ。


「これいいね。魔衣みたいなんだけど、魔力が自動で動いてくれる」


⦅攻撃魔法の発動は僕に任せて⦆

⦅防御は私が担当する⦆

⦅移動系は俺がやろう⦆


 ハルトが纏う魔力は精霊王そのもので、彼の意志を汲み取り攻撃、防御、移動を支援する。



「それじゃ、行きますよ!」


 呪われた賢者と精霊王三体の融合者は全力でオーラを放ち、敵に突撃していった。


「来い! ハルト!!」


 迎え撃つはグレンデール最高峰の宮廷魔導師と炎の精霊王の融合者。


 一回戦が予選のクライマックスになるかと思われた最強クラン決定戦は、ここに来て再び過激な戦闘の幕が切って落とされた。


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― 新着の感想 ―
[一言] とりあえずマイメイのお父さん纏ってみようぜぇ?( ^ω^)
[一言] だからなんで予選で最終決戦やってんだwwwww
感想一覧
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