最強クラン決定戦 予選(14/22)
リューシンがカインに負けてしまった。
これで俺たちのクラン『ファミリア』と、母上が率いるクラン『シルバレイ』の対戦成績は一勝二敗となった。六勝した方が勝つ対戦なので、まだまだ余裕はある。相手陣営の残る戦力は母上とレオ兄、シャル姉、ダイロン、サリオン、それから祖龍様。
祖龍様はまじでヤバいと思う。
うちで勝てる人いるかな?
母上が俺と戦う気でいるっぽいので、俺は祖龍様と戦えない。勝てる可能性があるとしてアカリかシトリーだな。でもクランとしてこの対戦に勝つなら、そのふたりには祖龍様以外と戦ってもらった方が良いかもしれない。
というか母上は何故か八人しかクランメンバーを集めなかった。本人を入れても九人しかいない。九人の内、必ず六人は勝つ予定なのだろうか?
少し気になって母上の方を見る。
母上は俺の視線に気づくと、ニコっと笑った。
その笑みを見て分かった。
俺の直感が教えてくれる。
彼女は俺と戦えれば勝ち負けはどうでもいいんだ。
つまり俺が対戦に出た時、母上も出てくるつもりってこと。それが何戦目でもいいらしい。場の盛り上がりとかも気にしないだろう。そもそも星霊王VS精霊王が一戦目って時点でヤバいよね。二戦目で神様が出てきちゃうし。三戦目は人族VS竜人族だったけど、会場はそれなりに盛り上がってた。
四戦目に俺が出て、母上が満足したらこの対戦は終わるかもしれない。レオ兄やサリオンとかは別に戦いたくて出てきたわけじゃないっぽい。だから俺と母上の対戦が終わったら、シルバレイは途中棄権しそうだと俺の直感が告げている。
あんまり家族が怪我するのも見たくないので、戦いたい人がいなければ終わらせてしまおう。
「次に対戦したい人いる? 希望が無ければ俺が行くよ」
それで多分、この対戦は終わる。
「お、俺が行っていいかな?」
少し緊張した表情でルークが前に出てきた。
彼が戦いたがるのは少し珍しい。
「もちろんいいよ。頑張れ、ルーク」
「ルークさん。無理はしないでくださいね」
彼の妻であるリエルが心配そうに声をかける。リューシンのようにルークも妻に良い所を見せたいと思ったのだろうか? そんなことを思っていたが、彼の場合少し事情が違ったようだ。
「ダイロン様! 俺と、戦っていただけませんか?」
闘技台の上に上がったルークがアルヘイム初代国王のダイロンを指名した。
最強クラン決定戦の予選では事前に選手の順番などを登録しておく必要はない。闘技台に上がった選手を見てから相性の良さそうなメンバーを出しても良い。対戦相手を指名しても、それに応えるかどうかは相手次第だ。とはいえこれは最強のクランを決める戦いなので、プライドが高い力自慢の猛者たちが多く参加する。指名されたら拒否しない人が多いらしい。
「俺をダイロンと知りながら戦いたいとは。良い心意気だ。その指名、受けよう!」
プライドなどはあまり関係なく、ただ単に指名されて喜んでいる様子のダイロンが勢いよく闘技台に飛び上がった。闘技台に上がった後で彼はハッとして母上の方を振り返った。
「あっ、すまん。勝手なことをした……。次、俺がやっても良いか?」
「大丈夫ですよ。頑張ってくださいね」
ニコニコしながらダイロンを応援する母上。勝ち負けを気にしていないようなので、対戦者同士が満足する戦いをできればそれで良いみたいだ。
闘技台の上でルークとダイロンが対峙する。
「初めまして。ルーク=ヴェル=イフルスです」
「イフルス? 確かそんな名の賢者がいたような……」
「たぶんそれ、俺のじいちゃんです」
「ほぉ。貴様は賢者の孫ということか」
確かに以前までのルークは賢者の孫だった。でも俺たちと一緒に過ごすようになって七年経っている。元より魔法の才覚溢れる彼がティナの教育を受け、俺たちと同じように魔人や悪魔を相手に戦ってきたんだ。
「おっしゃる通り、俺は賢者の孫です。でも、俺自身も賢者です」
ルークから魔力が溢れ出した。
膨大な魔力により空気が震える。
「その若さで賢者に至るとは。俺を指名するだけのことはあるな。この戦い、思った以上に楽しめそうだ」
ダイロンが突如、空間に穴をあけた。彼も空間系の魔法が使えるようになっていたことに驚いた。魔界を旅していたというのは伊達じゃないということだ。
でも次の瞬間、俺はダイロンの行為を見て更に驚愕することになる。
「ハルトぉ! 俺は本気を出したい!! だから例の剣を借りるぞ!!」
空間に開けた穴から手を引き抜いたダイロン。
彼の手にはヒトの背丈ほどある大剣が握られていた。
「えっ、嘘!?」
それは見覚えのある大剣だった。千年前、俺が祖龍様から頂いた剣。それをダイロンに預け、彼の息子である現アルヘイム国王のサイロスが引き継いだ。そしてアルヘイムを救った際にサイロスから俺へと手渡された大剣『覇国』だ。
転移魔法を応用して精霊界に保管している俺の愛剣。それが今、ダイロンの手にある。
「賊に盗まれても奪い返せるよう、これの位置を把握できる魔法をかけておいたのだ。すべてはエルノール。これをいつかお前に返す時のことを想ってやった」
「そ、そうだったんですね」
精霊界にある覇国を検知して、空間魔法で取り寄せちゃうのはヤバいと思う。千年前一緒に戦った時、彼はどちらかというと物理戦闘が得意な感じだった。でも今は魔法系の能力もかなり高くなっていそうだ。
……ルーク、大丈夫かな?
【お知らせ】
先月TVで流れたCMがYouTubeで公開されましたぁー!!
ワァ───ヽ(*゜∀゜*)ノ───イ
https://youtu.be/B-UN_6ju-ek
固定賢者、テレビに登場!!ww
是非一度見てみてねー!!