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シャルルの読心術(3/6)

 

 私が、六歳の誕生日を迎える一ヶ月前──



「創造神様。どうかお母様と、これから産まれてくる俺たちの家族をお守りください」


 屋敷のリビングでレオンお兄様が、創造神様に祈っていた。私はその隣に座って、お兄様の真似をしてる。


 これから私たちの弟か妹が生まれてくるの。

 今、お母様が頑張ってる。


 ちなみにお父様とカインお兄様は今、お屋敷にはいない。ほんとなら赤ちゃんが生まれてくるのは二週間後くらいの予定だったんだけど、それがちょっと早まって今日になっちゃったから。


 お父様は隣国でお仕事中。カインお兄様はお母様の安産を祈願するために、願い石というアイテムを採りに行っている。


 急にお母様が産気づいて、私もレオンお兄様も慌てたのだけど、二か月くらい前からこのお屋敷にお医者様と助産師さんが滞在してくれていたから、彼らがすぐに対応してくれた。


 お父様やカインお兄様には、執事さんたちがレターバードで連絡していた。


 お父様はお仕事を切り上げて帰ってきてくれる。カインお兄様は願い石は無事に手に入れたから、急いで戻るって返事が来た。


 お医者様も『少し早いけど問題ない』って言ってくれた。


 だから大丈夫。


 ……大丈夫、だよね?



 私は別室で赤ちゃんを産もうとしているお母様が心配で、その心の声を聴いていたのだけど、お母様の心の声が叫び声に変わってから怖くなって聴くのをやめた。


 あの強くてカッコいいお母様が、あんなに取り乱すなんて……。


 赤ちゃんを産むって、とっても大変なこと。

 私もいつかは、赤ちゃんを産むのかな?


 ちょっと、怖いな。 




「──あっ」


 なんだか急に、周りが暖かくなった気がした。


「今の、シャルルも感じた?」


「はい。あの……お兄様も?」


「あぁ。なんていうのかな。こう、()()されたって感じ」


「しゅくふく、ですか?」


「そう、祝福。俺は一度だけ、今みたいなのを感じたことがある」


 レオンお兄様は、戦闘職が『一次職』から『二次職見習い』に上がった時に、今のような感覚になったらしい。


「私たち、しゅくふくされたんですか?」


「たぶん、俺たちじゃなくてって──」


 お兄様がなにかを言いかけた時、リビングの扉が勢いよく開いてこの屋敷に仕えてるメイドさんが入ってきた。


「レオン様、シャルル様。生まれました! 元気な、男の子です!!」



 ──***──


「かっ、かわいい……」


 メイドさんに連れられてお母様のお部屋に入ると、柔らかそうな布にくるまれた小さな赤ちゃんが、お母様に抱かれていた。


 お母様に『お疲れ様』って、真っ先に言うつもりだったけど、それより先に赤ちゃんの心の声が聞こえてきて、そっちに反応しちゃった。


 赤ちゃんだから、心の声もちゃんとした言葉にはなってない。


 それでも私は声にならないヒトの感情を、音として聴くことができる。


 赤ちゃんの感情は──


 んー。なんて言うのかな?

 コロコロ? ポンポン?


 なんか、こう……転がって、弾む感じ。

 それがすっごく可愛かった。


 私たちが急に部屋に入ったからかな?

 ちょっとだけ、不安そうな気持ちも感じた。


 だけどお母様が赤ちゃんを揺らしてあやしてあげると、すごく落ち着いた心の音になっていった。



「シャルル、レオン。こっちにいらっしゃい。あなたたちの弟よ」


 お母様に呼ばれて、ベッドのそばに寄る。


「お母様、体調は大丈夫ですか?」

「母上、無理はなさらないでくださいね」


「大丈夫よ。お医者様にヒール(治癒魔法)をかけていただいて、体力は戻ってるから今は平気」


 良かった。

 お母様の顔色は、悪くなかった。


 ほんの少し前、この世の終わりのように叫んでいたお母様の心の声は、きっと私の気のせいだったんだ。


 お医者様がなにか私たちに隠し事とかしてないか心配して、念の為に心の声も読んだけど、特に問題はないって言ってた。



「あの……赤ちゃんを触っても、いいですか?」


「シャルル様。少し、お待ちください」


 助産師さんに、クリーンという身体を綺麗にする魔法をかけてもらった。


「はい、これで大丈夫ですよ」


 手は綺麗に洗っていたつもりだけど、それでも赤ちゃんに触れるのは危ないらしい。赤ちゃんは、免疫っていうのが少ないからなんだって。


「ありがとうございます!」


 そーっと、赤ちゃんのほっぺに触る。

 ぷにぷにしてた。

 心の音は、ちょっと嫌そうだった。


 ご、ごめんね。


 でも、すっごく気持ちいい。



「母上。俺たちの弟の、名前はなんですか?」


 レオンお兄様が尋ねた。


 実は私は、お父様とお母様の心の声を聴いて、弟の名前を知っている。


 その名前の理由も。



「この子ね、名前は神様が決めてくださったの」


「か、神様が?」


「そう。この子を身ごもってから少ししたある日、私の夢に神様が出てきてね。この子の名前をつけてくださった」


 お母様が、赤ちゃんをすごく愛おしそうに見つめる。



「この子の名前は、ハルトです」



【設定公開】


ハルトの家族(シルバレイ伯爵家)の名前


父:アベル=ヴィ=シルバレイ

母:アンナ

長男:カイン

次男:レオン

長女:シャルル

三男:ハルト


父の名前は書籍の書き下ろしストーリーにしか出てこないので、ここで公開しておきます。


遥人がハルトに転生するまでのお話が、もう少し続きます。

引き続き、ご愛読よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] どの神様だろう?
[一言] 赤ちゃん「てんじょーてんげゆいがどくそん」 赤ちゃんだから、心の声もちゃんとした言葉にはなってない。 なってないと言ったら、なってない。
感想一覧
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