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シャルルの読心術(1/6)


シャルル(ハルトの姉)の、幼少期のお話です。

他人の心の声が聞こえることで、シャルルの心が荒れてしまいます。


そんな彼女の癒しは──

 

「おぉ! さすがシャルル様。魔法の訓練を始めてわずか一ヶ月で、中級魔法を放てるようになるとは」


 黒ひげを不潔に伸ばした男が、気持ちの悪い笑顔を見せながら私のことを褒める。


 この男は上級魔導師で、私の魔法の先生。


「……ありがと」


 とりあえず返事はしてあげる。


 でもほんとなら、こんなヤツを私のお家に呼ぶのすら嫌だ。


 見た目が気持ち悪いからとかじゃない。


(チッ、可愛げのねぇ小娘だな……)


 伯爵の子である私を、小娘呼ばわりする無礼なこの男が許せないからだ。


 もちろん、この男が声に出してるわけじゃない。


 私は、他人の心の声が聞こえるの。

 読心術ってスキル。


 三歳くらいからかな。

 私は周りのヒトの、心の声が聞こえた。


(ここまで成長が早いなんて聞いてないぞ)


 成長が早いなら、素直に褒めなさいよ。


(ガキに魔法教えるだけで大金が貰えるって割のいい話だったが……これじゃ直ぐに、やることがなくなっちまうじゃねぇか)


 ふーん。それが本音ね。


(五歳のガキに、上級魔法はさすがに早すぎるよな。身体もできてねぇし、魔力が暴走した時にあぶねぇな)


 ……なによ。

 私のことを気遣ってくれてるんだ。


 ちょっと、見直した。



「シャルル様。まずは使える中級魔法の種類を増やしていきましょう」

(このガキ、バケモノじみた魔力してやがるからな。こんな近距離で暴走なんかされたら、俺があぶねぇ。上級魔法を教えるのは、他のやつに任せよう)


 前言撤回!

 やっぱり私、コイツが嫌い!!


「はーい」


 お望み通り最速で中級魔法を全部覚えてあげる。

 絶対に魔力を暴走させたりもしない。


 お前なんて直ぐに、私のお家に来れなくしてやるんだから!



 ──***──


「シャルル。今日も魔法の訓練、お疲れ様」


 訓練が終わって黒ひげの上級魔導師が帰った後、お父様が声をかけてくださった。


「あっ、お父様! 見ていてくださったのですか?」


 実は心の声が聞こえてたから、お父様が隠れて見ているのは知ってたんだけどね。


「先ほど、チラッとな。もう中級魔法を使ったようだな」

(父さん、びっくりしたぞ)


 私のスキル(読心術)は特に意識しなければ、私から半径百メートルくらいの範囲にいれば誰であろうと、勝手に心の声が聞こえてしまう。


 それは家族であっても、例外じゃない。


「そうなのです!」


「凄いぞ。さすが我が娘だ」

(俺はそこまで魔法の才能がないから、シャルルはきっと母さんの血が濃いんだろうな)


 そう言いながら、お父様が私の頭を撫でてくれた。


「えへへー」


 私の家族は、話している言葉と心の声が違うことがほとんどない。それに、私に嘘をつくこともない。


 だからお話ししてて、すごく楽なの。

 家族とのお話は好き。


 だけど──



「シャルル。来週、王都で春の収穫祭があるんだ。そこに、私たちと一緒に行かないか?」


「お、お出かけ……」


 私は、お家から外に出かけるのが、あんまり好きじゃない。それはたとえ、大好きな家族と一緒でも。


 ヒトが大勢いるところに行くと、心の声がたくさん聞こえて気分が悪くなるから。


 強く意識すれば他人の心の声を聞かないようにもできるけど、まだ調整がうまくできなくて普通の声も聞こえにくくなっちゃう。


 それに、とても強い心の声を持ったヒトがいると、その声は私の心に突き刺さるの。


 強い心の声──たとえば『誰かが憎い』とか『殺したい』、『死ね』とか。


 いくら耳を塞いでも、その声は消えてくれない。王都とか大きな都市に行くと、そういう強い心の声を持ったヒトが何人もいる。


 だから私は、お出かけが嫌い。


「お父様、申しわけありません。私は、やめておきます」


「そうか……カインやレオンも、顔を出すと言っているのだが」


「お兄様たちが!?」


 滅多にお家に帰ってきてくれないカインお兄様やレオンお兄様に会えるっていうのは、すごく魅力的。


 お兄様たちの心の声は、私のことを思いやる気持ちで溢れてて、聞いてて心がポカポカするから。


「おふたりともこの御屋敷には、きてくださらないのですか?」


「うむ……レオンはともかく、カインは当面無理だろう。騎士団に入団したばかりだからな」


 私と四つ歳の離れたカインお兄様は今年、騎士養成所を早期卒業して、騎士団に入団されました。


 騎士団というのは、王国騎士団の下位組織。下位組織と言っても、そこに所属するには相当の剣の実力と家柄が必要。


 カインお兄様は剣を使った戦闘能力を認められて、歴代最年少の九歳で騎士団に入団した。しかも数年後には、王国騎士団員への昇格も確実だと言われているの。


 今は、すっごく忙しいらしい。

 私はお兄様が頑張っているのを知ってる。


 王国騎士団のマントを羽織るのが、カインお兄様の夢だから。


 ちなみにこのことを、お兄様は誰にも言ってない。私が読心術で、勝手に聞いちゃったの。


 だからこれは、カインお兄様と私しか知らない、ふたりだけの秘密。


 お兄様が頑張っているのを知っているから、私は無理にお兄様に会いたいなんて言わない。


 私が会いたいって言ったら、カインお兄様はどんな重要な任務があっても、途中で放棄して帰ってきちゃう。これも、読心術でお兄様の心を読んだからわかるの。



「お兄様たちが来てくださるなら私も……収穫祭、行きます」


「おぉ。そうか! きっとカインたちも喜ぶぞ」


 ヒトの多い所へ行くのは乗り気がしないけど……お兄様たちにお会いできるのを心の支えにして、頑張ろうって思う。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 『シャルルの能力』において シャルルがハルトに能力を明かしたとき 何を考えてるか分かるの!? 「そう。対象は常に1人だけど、その人が何を思っているかが手に取るように分かる」 と言っ…
[一言] 先生「ちっ気持ち悪い小娘だぜ」   (お嬢様、ご機嫌麗しゅう) シャル「声と心の声が逆……」
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