アカリの誕生日
翌週、アカリの誕生日を迎えた。
エルノール家では誰かの誕生日の時、夕食が盛大なパーティーにかわる。
誕生日を迎える俺の家族の関係者たちが、屋敷にやってくるからだ。
今回はアカリがこっちの世界に来てからお世話になった人々を招待した。
「アカリ、お誕生日おめでとう」
「おめでとう、アカリ。今日は呼んでくれてありがとな」
「エリザさん、エリックさん。ありがとうございます!」
まず来てくれたのは、人族の国アプリストスの生産系ギルドで働いているエリザさんと、彼女の旦那さんで王都の検問所で衛兵をしているエリックさん。
「アカリちゃん、お誕生日おめでとう」
「「「「おめでとー!」」」」
「わー! みんなも来てくれたんだ。ありがと!!」
アプリストスにいた時、アカリはギルドハウスの二階で生活をしていたらしい。
その時一緒に住んでいたという五人の女の子たちも来てくれた。
俺の屋敷で行われる誕生日のパーティーだけど、最初は勝手にやってきた人を迎え入れていただけだった。
しかし俺の家族が増えるにつれて、うちを訪れる人数が増えた。
平均して十人ほどの来客がある。
そもそもエルノール家の人数が、二十人を超えてるんだ。
そこに来客を含めると三十人を超える。
それだけの人数が集まるので、盛大にパーティーを開くようになったのだけど、そうすると勝手に来なかった人たちが後からパーティーのことを知った時にショックを受けてしまうことがあった。
だから家族の誰かが誕生日の時は、思いつく限りの関係者を招待するようにしている。
ちなみに俺がエルノールという家名にしてから、最初に誕生日を迎えたのはリファだった。
その誕生日に、リファの父──エルフの王であるサイロス=アルヘイムが、勝手に押しかけてきたことから、俺の家族の誕生日にはそれを祝うパーティーが開催されるようになった。
まぁ、来る人の大半は、ティナの手料理目当てなんだけど……。
俺の奥さんが増えたことで、ティナが料理を作る回数が減った。
しかし彼女の誕生日でなければ、そのほかの誰かの誕生日の時には必ずティナが料理を作る。
そしてティナの手料理は、神様にも大人気。
そんなわけで──
「今月は異世界から来た女勇者か。ええと、たしか──」
「じいさん。アカリ、だ」
「おお、そうか。すまんの海神。では改めて……誕生日おめでとう、アカリ」
「ふふふ、今月は私も来ることができてよかったわ」
「先月のヨウコの誕生日の時、地神だけ来られなかったからな」
ティナの手料理を目当てに創造神様や海神、それから地神デメテル様と空神ゼウス様が、さも当然というように俺の屋敷に来るようになった。
家族が二十人もいるので、ひと月に数回は誰かの誕生日がある。
その誕生日のパーティーに、この世界の最高神様たちが、かなりの頻度で参加していた。
ちなみにエルフ王やグレンデール王、俺の兄たち、星霊王や精霊王たちもよく来てくれるが、一番参加率が高いのは神様たちだ。
この世界……大丈夫なんだろうか?
──***──
アカリの誕生パーティーは、とても盛り上がった。
俺たちが用意したプレゼントも、アカリに喜んでもらえたみたいだ。
ティナの作ってくれた料理も、すごくおいしかった。
アカリと一緒にギルドハウスで暮らしていた女の子たちが料理のおいしさに感動して、来年以降も絶対に参加すると言っていた。
今はパーティーがお開きになり、みんなそれぞれ帰っていった。
騒がしかった屋敷から人がいなくなると、ちょっと寂しい感じがする。
「ハル兄。今日は、ありがとね」
「うん。改めて、お誕生日おめでと。アカリ」
人がいなくなって少し寂しくなった食堂でひとり、椅子に座っていたらアカリに話しかけられた。
「いっぱいプレゼントをもらっちゃったけど……それでもその、来てくれるかな?」
「ギフターのこと? きっと来てくれるよ。だってアカリは、いい子だもん」
ほんとのことを言うと、ギフターはこの世界の未成年──つまり、十四歳までの子のところにしかやってこない。
さらにその子が『良い子にしていればギフターがプレゼントを持ってきてくれる』と、信じている子でなければならない。
──そんな設定。
ギフターなんて、いないんだ。
親が誕生日のプレゼントとは別に、子が寝た後にプレゼントをこっそり枕元に置いておいてくれる。
俺の場合は、それがティナだった。
実は十歳になるまで、俺はこっちの世界にはサンタさんがいるって信じ込んでいた。
だってここ、異世界だし。
異世界版サンタさんが実在しててもおかしくない。
ギフターが実在すると、思っていた。
だけど俺は、魔法学園に入学して周囲の会話を聞き、ギフターが存在しないってことを知った。
それがティナにバレたのか、その年からギフターは来なくなった。
プレゼントは毎年たくさんもらっていたから、悲しくはなかったけど、何かを失った気がした。
アカリは今日で十六歳になったのだから、ギフターはこない。
そもそもギフターなんて、いないけど。
でも彼女は、ギフターの存在を信じている。
俺はそれを──アカリの夢を壊したくないんだ。
「それじゃ、私はもう寝るね。おやすみ、ハル兄」
「おやすみ、アカリ」
アカリが寝室に向かった。
さーて。可愛い妹のために、お兄ちゃん久しぶりに、本気出しちゃうぞ!




