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異世界のクリスマス

クリスマスが過ぎ去った日に、クリスマス関連のお話を書いてみました。

時間軸的には、ハルトが邪神を倒した(?)後のお話になります。


「ハル(にぃ)。この世界ってさ、十月までしかないんだよね?」


 ある日、アカリが聞いてきた。


「うん、そーだよ」


 この世界の一年は三百日しかない。

 ちなみに一年は十か月で、一か月は三十日。

 一か月は五週間で、一週間は六日だ。


 俺はこの日付感覚に慣れるのに、少し時間がかかった。


 

「そっか……てことは、()()がないんだ」


 なんだか、アカリの表情が暗くなった。


「アレって?」


「……クリスマス」


 あぁ。なるほどね。


 この世界には十二月がないのだから、当然クリスマスはない。


 そもそもこの世界に十二月まであったとして、赤い服を着た白髭のおじい(サンタ)さんが、深夜に家に侵入してきて子供の枕元にプレゼントを置いていくという風習(?)が浸透するとは思えない。


 この世界で夜中に家に侵入してくるのは、盗賊や強盗だと決まっている。

 家人以外が深夜に家に入ってきたのに気付いたら、即攻撃対象となってしまうのだ。


 家族以外を検知したら、自動で攻撃魔法が発動するトラップを仕掛けている家庭だってある。


 特に貴族の屋敷には、魔力を登録したヒト以外を検知した時にはそれを殺してしまうレベルの強力なトラップが仕掛けられていることが多い。



「それじゃ、サンタさんもいないんだよね?」


 元の世界ではアカリも、サンタの存在を信じていなかった。

 だがここは異世界。


 クリスマスがあれば、本物のサンタがいるかもしれないと考えていたのだろう。

 しかしこの世界には、十二月がない。


「……うん」


 もしこの世界に十二月があり、クリスマスがあってサンタがいたとして、それが子供たちにプレゼントを渡そうとするのなら、そのサンタはとても強くなければ務まらない。


 仕掛けられたトラップを回避できる能力が必要だ。

 家族を守ろうとする家長の攻撃を、いなせるだけの戦闘能力が必要だ。

 もしくは、罠にもヒトにも検知されない隠密能力が必要だ。


 よっぽど盗賊のほうが、()()()()()()を持っていそうな気がする。


「そう、そうなんだ……」


 この世界に、サンタはいない。

 それを理解してしまったアカリは、とても悲しそうにしていた。



 ──と、ここで俺はあることを思いだした。


「アカリ。クリスマスはないけど、サンタっぽいのはいるぞ?」


「えっ!?」


「この世界には子供の誕生日に『ギフター』っていうおじいさんが、プレゼントを持ってきてくれるっていう言い伝えがあるんだ」


 それは一年間、良い子でいた子のところにだけやってくるおじいさん。

 親がくれる誕生日プレゼントとは別に、もうひとつプレゼントがもらえるんだ。


 貧しくて親がプレゼントをあげられない家庭の子どもたちも、良い子にしていればギフターからプレゼントがもらえる可能性がある。



「アカリの誕生日は……元の世界の日付でいくと、来週だね」


「う、うん! ハル(にぃ)、覚えててくれたんだ」


「当然だろ?」


 可愛い妹の誕生日くらい、当然覚えてるよ。


 俺はこっちの世界に転生して、誕生日が変わった。

 元の世界での誕生日が、十一月だったから。


 アカリはこっちの世界に女神さまが作ってくれた肉体に転生しているので、正確な誕生日はわからないらしい。だから元の世界での誕生日を、こちらでも誕生日ってことにした。



「アカリは俺が邪神を倒すのを手伝ってくれたし、家事も頑張ってる。だからギフターからプレゼントをもらえるんじゃないかな。もちろん、俺たちからもプレゼントはあるよ」


 エルノール家では誰かの誕生日の時、誕生日を迎える人が望むモノを俺が用意するようにしていた。


「ほんと!?」


「あぁ。ちなみにアカリはギフターが来てくれるなら、なにがほしいの?」


「え、えっと──」


 アカリが顔を赤くしている。 

 どうやら俺には、言いにくいもののようだ。


「いい子にしてたのなら、ギフターはそれをちゃんと見ててくれる。その子がなにを望んでいるのかもわかるみたい。だからアカリが言いにくければ、俺には言わなくてもいいよ」


「そうなんだ!」


 アカリが、ほっとした表情を見せる。

 

 その後アカリは、俺からもらいたいプレゼントは誕生日当日に伝えると言った。

 当日でも、俺なら用意ができるモノらしい。


 アカリもそこまで無理を言わないと思うので、問題はないだろう。



 ちなみにギフターの件は、ただの言い伝え。

 だから残念だけど、アカリのところに本物のギフターは来ない。


 でも俺の妹が、サンタさん(?)からのプレゼントを楽しみにしているんだ。

 その夢を、俺は叶えてあげたい。


 

「よし、やりますか!」


 言葉に出してもいないのに、望みの品を把握する。

 屋敷に仕掛けられた無数のトラップを、すべて回避する。

 そして屋敷にいる者に一切バレることなく、プレゼントを枕元に置いておく。


 ストーカーとも盗賊とも捉えられかねない存在。


 そんな異世界のサンタさんに、俺はなる!!


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― 新着の感想 ―
[一言] クリスマス 宗教団体の開祖の誕生日の『前夜祭』を楽しむ日。 宗教団体の信者である必要はない。 開祖の誕生日当日を祝う習慣はない。 というか、開祖も宗教団体も関係ない。
[良い点] こいつが本気だしたら入れないとこないだろ [気になる点] あの赤いのはコカ・コーラの色で宣伝が元だとか [一言] 現実でもNORADがサンタを追跡してますからね
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