この世界の魔法(2/3)
「い、いきなり雷属性魔法を使いたいのですか?」
ティナがちょっと驚いていた。
「うん! だって雷って、なんかかっこいいんだもん」
ティナに隠れて練習してもいいのだけど、せっかくこの世界最高峰の魔法使いが俺の魔法の先生なんだ。
彼女にコツとか聞きながら練習したほうが、雷属性魔法の修得も早いだろうと判断した。
「かっこいい……そ、そうですか」
ティナが少し、考える素振りを見せる。
「初めての魔法訓練で完璧な魔法を発動させたハルト様なら、もしかしたら雷属性魔法も使えてしまうかもしれませんね」
ティナが俺に雷属性魔法を教えるのを、前向きに検討し始めてくれたみたい。
あと一押しかな。
「俺が雷の魔法を使いたいってのもあるけど、ティナが使うのも見てみたいんだ。使えるんでしょ? 雷属性魔法も」
ティナは剣技と魔法を極めた者のみがなることのできる三次職──魔法剣士だ。
限られた者しか使えないという雷属性魔法でも、きっと使えるんだろうって思っていた。
「もちろんです!!」
俺の予想は、自慢げに胸を張ってそう宣言するティナによって肯定された。
「では、まずお手本からお見せしましょう。見ていてくださいね、私のかっこいい雷属性魔法を!」
ティナが訓練所に設置された的に向かって立ち、魔力の放出を始めた。
邪神に転生させられた際に戦闘職が賢者になっていた俺には、ティナが纏う魔力を見ることができる。
それはとんでもない量の魔力だった。
昨日彼女は、ファイアランスを使って魔法訓練用の的を完全破壊したのだが、その時の比ではない量の魔力が空間に放出されていた。
な、なんかちょっと……ヤバい気がする。
「望むは破壊、種は雷、贄とすべきは我が力──」
突然ティナが、詠唱を始めた。
この世界の魔法はイメージで威力が変わるので、どんな魔法にもイメージを明確にする『前詠唱』というのが存在する。
もちろん、最下級魔法であるファイアランスにも詠唱がある。
しかし各属性の最下級魔法は、魔法名がほとんどそのまま魔法の形や性質を表すため、詠唱をする者はほとんどいない。『ファイアランス』などと魔法名のみを叫んで魔法を発動させるものがほとんどなのだ。
しかし詠唱することで、魔法の威力が上がることがある。レベル1で固定の俺は、少しでも魔法を強くするため、一応すべての属性の最下級魔法の詠唱は暗記した。
まぁ、賢者としての特性で魔法を使おうと思うだけで脳内に詠唱が浮かんできたので、暗記する必要などなかったのだけど……。
それより今はティナの魔法だ。
この詠唱、俺は知っている。
これは雷属性最強の魔法──究極魔法の詠唱だ。
「与えられし彼の盟約によりて、我の下僕となり得た者よ──」
この魔法は、雷を司る精霊が魔法使用者の魔力を受け取って地上に極大の雷を落とすといったイメージで発動する。
「其の力、今解き放たん」
さっきまで晴れ渡っていた空に、黒雲ができていた。
魔法発動の準備ができたんだ。
「アルティマサンダー!!」
天から、幅十数メートルはある雷が落ちてきた。
それは一瞬で訓練用の的を蒸発させ──
「──っ!?」
訓練所の床を大きく破壊した。
床の破片が飛んでくるが、いつの間にか俺の周囲には魔力でできた半透明のドームが展開されていて俺を破片から守ってくれた。
ティナが張ってくれた魔法障壁だ。
これがなければ、魔法の余波だけで俺は吹き飛んでいたと思う。
舞い上がった粉塵が晴れてきた。
「お、おぉ……!」
とても頑丈に作られているはずの訓練所の床が三メートルほどえぐられて、巨大なクレーターになっていた。
「どうですかハルト様。私、かっこよかったです?」
ティナが笑顔で聞いてきた。
昨日はファイアランスの力加減を間違えていたようで焦っていたが、今日はそんな素振りを見せないので、初めからこの威力で魔法を放つつもりだったみたいだ。
「す、すごいよティナ! かっこよかった!!」
「えへへー」
嬉しそうな彼女を見ながら、俺はワクワクしていた。
この世界はすごい。
たったひとりで、こんな破壊力を持った魔法を使えるのだから。
俺は邪神の呪いのせいで、消費魔力が10以下の下級魔法しか使えない。
しかし俺には邪神の呪いがあるので、無限の魔力が使えるのだ。
きっと色んな工夫すればティナには及ばないにしても、そこそこ強くはなれるはず。
楽しみだ。
邪神の呪いは、俺に希望をくれた。
「それではハルト様、雷属性魔法の訓練を始めましょうか」
「はい! よろしくお願いします。ティナ先生!!」




