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二回目と三回目

 

 それから俺は二回死んだ。

 祖龍様に殺してもらったのを合わせて三回。



 二回目の転生で俺は獣人の青年になった。


 それは狼系獣人の肉体で、歳はちょうど成人したくらいだった。時代は元の時間から1000年くらい前だと思う。


 呪いが解ければ元の時間に戻れると聞いていたので、少しだけ獣人の身体を堪能した。


 それでわかったことがある。


 獣人ってズルい。


 獣人族のステータスは人族の感覚からすると、生まれながらにして常に魔衣を纏っているようなものなんだ。


 ちょっと本気を出せばとてつもない速度で移動でき、腕力も人族とは桁違い。


 これだと魔法に頼ろうって思う獣人が少ないのもわかる気がする。



 ベスティエ(獣人の王国)では力試し大会が至るところで開催されていた。


 俺は色んな大会に出て、その全てで優勝した。少しだけ魔衣が使えたのと、そもそも高速での戦闘には慣れていたから。


 あまりに快勝できるので調子にのった。

 そのせいで当時の獣人王に目をつけられた。


『お前、強いらしいな? いっちょ俺と殺り合おうぜ』


 そう言ってきた彼に俺は見覚えがあった。

 彼は後に神格へと至る御方。


 武神様だった。


 獣人族の間では史上最強と言われる獣人。


 当然そんな獣人王に敵うはずもなく、俺は後の武神様と三日間寝ずに戦闘して力尽きた。


 死ぬ時は疲労が溜まりすぎて死んだので、そんなに怖くなかった。ずっと戦ってたから、興奮しっぱなしで自分の疲労に気づけなかった。


 とても楽しかった。


 元の時間にもどったら、武神様のとこにリトライにいかなくっちゃな。


 次は必ず、俺が勝つ!!



 ──***──


 三回目の転生で俺はゴブリンになった。


 ヒトに害をなす魔物の代表。


 あんまり情報を入手できなくて、いつの時代なのかはわからなかった。


 俺は三十体ほどのゴブリンの群れに所属していて、仲間と一緒に森の魔物を狩って生活していた。


 ゴブリンになってるので、魔物の肉を生で食うのとかも全然抵抗なく平気だった。


 でも長い間ここにいると、俺は今後ゴブリンを倒せなくなってしまいそうだった。食い物を分けてくれる仲間たちが良いヤツらに思えてしまったから。


 それに俺がいた群れは森の奥深くに縄張りを持っていて、ヒトに危害を加えることはなかった。


 仲間がグレイベアっていう熊の魔物に襲われてたから、それを助けたこともある。そのせいで俺はゴブリンたちのリーダー的存在になってしまった。


 ゴブリンとはいえ仲間に頼られるのは、そんなに悪い気もしなかった。


 そんなわけでここに長期間いたら本当にゴブリンを倒せなくなりそうだ。


 冒険者にでも見つけてもらって、さっさと殺してもらおうって考えてた。


 そんなある日──



 仲間が人族の少女を攫ってきた。


「いやっ、やめて──」


 俺の前に連れてこられた少女は泣いていた。

 抵抗したのだろう。服はボロボロで手足から血が出ていた。


 少女はすごく魅力的だった。

 本能が彼女を犯せといっていた。


 俺は少女を襲おうとしていたんだ。


 獲物を手に入れたら群れのボスが先に食う。

 それがゴブリンの習性。


 ボスが信頼されてないと配下のゴブリンが勝手に獲物に手を出すことがあるが、うちの群れはそうじゃなかった。


 ちゃんと手付かずの少女を俺のもとにつれてきた。


 少女を攫ってきた配下のゴブリンにグレイベアの肉片を与えると、俺は少女に覆いかぶさった。


 これはオレのモノだ。


 普通のゴブリンは大型のグレイベアを倒せない。俺はいつの間にかゴブリンファイターに進化していた。


 ゴブリンファイターはDランクの冒険者でなければ倒せない魔物だ。そんな魔物の腕力に少女が抵抗できるはずがない。


 少女の両手を片手で押さえつけ、残った手と舌を彼女の身体に這わせる。


 少女を気持ちよくさせようなんて考えない。

 自分が良ければそれでいい。


 服を剥ぎ、いざ犯そうとした時、少女が消えそうな声で助けを求めた。



「勇者様、助けて……」


 ──と。


 この声を聞いて、俺は正気に戻れた。


 奪い取った少女の服を投げ返し、仲間には彼女に手を出すなと伝えた。


 少女は後ほど巣から逃がしてやるつもりだった。


 だが仲間たちは、少女(メス)を見て興奮していた。


 魔物としての本能が剥き出しになり、俺の支配力が及ばなくなっていたんだ。


 お前が犯さないなら寄越せ。


 そう脅される。


 俺がかつて守ってやったゴブリンたちが、俺に武器を向けてくる。



 そうか……。

 コイツらもやっぱり魔物なんだな。


 ヒトの、敵なんだな。



 俺は少女を守りながら、群れのゴブリンたちを全滅させた。


 ゴブリンファイターとゴブリンの間には圧倒的な力の差がある。苦戦はしなかった。


 苦楽を共にした仲間だったヤツらを、俺は一匹残らずバラバラに引き裂いた。


 ゴブリンたちの連携を鈍らせるために威嚇の咆哮をした時に少女は気を失ったから、俺が暴れる姿は見ていない。


 魔物とはいえ、生き物が目の前で引きちぎられる様子を見ずに済んだのは不幸中の幸いだろう。



 俺は気絶している少女を抱えて、しばらく住んでいた巣を後にした。


 ここは魔物が生息する森の奥深く。


 せめてヒトの住む町のそばまでつれていってあげなければ、他の魔物に襲われるかもしれない。


 俺が怖がらせてしまった。

 俺の仲間が彼女を傷つけてしまった。


 だから俺は、なんとしてもこの子を無事に帰さなければならない。


 そう決意して、森を進んでいく。


 だけどその役割は思っていたより早く終わった。




「少女を攫ったゴブリンって、ファイターだったのか」


 背後から声が聞こえた。

 それと同時に、俺の首は地面に落ちていた。


 倒れる俺の身体から、少女を奪って優しく抱き上げた男の顔が目に入る。



 ……そうか。


 少女が助けを求めた勇者は、()()か。



 神様からもらった刀で俺の首を刎ねた黒髪黒目の勇者がそこにいた。


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