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レベル1の最強賢者 ~ 呪いで最下級魔法しか使えないけど、神の勘違いで無限の魔力を手に入れて最強に ~  作者: 木塚 麻弥
第十章 転生勇者

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勇者とアイテム買取

 

「あっ、えっと、その……」


「どうぞ、お入りください」


 突然声をかけられて驚いたが、ハーフエルフの美女の瞳が吸い込まれるように綺麗で、つい彼女に促されるままアカリは室内に入った。


「そこのソファーにお掛けください。お飲み物は……紅茶でいいですか?」


「は、はい」


 アカリが腰掛けたソファーは、元の世界でも体感したことがないくらいふかふかで、とても座り心地がよかった。



「ようこそ、H&T商会へ。私はここの統括をしている、ティナと申します」


「は、はじめまして。アカリです」


 ティナは週に一度くらいの頻度でここに足を運び、商会の部下たちに指示を出していた。


 アカリは運良く、ティナがいるタイミングでここを訪れたのだ。


「それで、アカリさんがここまできた目的ですが……私の暗殺、ではないですよね?」


「えっ!? ちち、違います!! そんなこと、考えてもないです!」


「そう。ならよかった。二階の見張りの目を欺いてここまできちゃうくらいだから、こんなに可愛いのに凄腕の暗殺者だったらどうしよう──って思ってたところです」


「見張り? ……あっ! ここって、ほんとは入っちゃダメな所なんですか?」


 アカリは自分が、見張りの目を盗んでここまできたことにすら気づいていなかった。


「その様子だと、本当になにも知らずにここまできちゃったのですね」


「す、すみません! 私、すぐに出ていきます!!」


「大丈夫ですよ。せっかく来たのですから、少し私と、お話ししませんか?」


 慌てて立ち上がり、部屋を出ようとしたアカリにティナが声をかけた。


 魔力探知能力に秀でたティナは、アカリがこの部屋に近づいてきていることに気付いていた。


 この部屋と言うより、商会の建屋に足を踏み入れた時点から、アカリはティナの監視下にあったのだ。


 もっと言えば、アカリがこの国(グレンデール)に転移で現れた時から、ティナは力の塊であるアカリの存在を認識していた。



「ここには、なにをしにきたのですか?」


「ア、アイテムを買い取ってほしくて、ここまできたんです!」


 そう言ってアカリは寝ているテトをゆっくりソファーに置くと、肩にかけていたカバンから彼女が作った七つのアイテムを取り出した。


「あら、これは……」


「ど、どうでしょうか?」


 アカリがテーブルの上に置いたブローチやイヤリング、ネックレスなどをチェックしているティナを心配そうに見つめる。



「素晴らしい。これは……伝説級(レジェンド)の装備品ですね。その中でも特に質が良い。それが、七つも」


 ティナは、神話級(ゴッズ)までのアイテムを鑑定可能なスキルを所持していた。


「伝説級!? ほ、ほんとですか!?」


「えぇ。間違いないです。これら全て、私の商会で買い取らせていただいてもよろしいですか?」


「ぜひお願いします!」


 アカリとしては、とても嬉しい申し出だった。


 ティナが気に入ったものだけでも買い取ってくれればいいと思っていたのだが、なんと彼女は、全部買い取ってくれるという。


「ありがとうございます。ちなみにこちらは、盗品などではありませんよね?」


「ち、違います! 私が作りました!!」


 ティナの目をまっすぐ見て、アカリは言い張る。


「そうですか、わかりました。疑ってしまい、失礼いたしました」


 真偽の宝玉ほどの正確さはないが、ティナにも相手が言っていることが嘘か真かを、なんとなく判断する能力があったのだ。


 ティナはアカリが真実を話したこと──つまりこの伝説級(レジェンド)のアイテムを、本当にアカリが作ったことを把握した。



「それでは、このくらいでどうでしょうか?」


 ティナがステータスボードのような半透明のボードをどこからか取り出し、そこに数字を打ち込んでアカリに見せる。


「いち、じゅう、ひゃく…………さ、三千万!?」


「はい。ひとつ三千万スピナで、買い取らせてください」


「えっ? ぜ、全部で三千万じゃなくて、ひとつ三千万ですか!?」


「そうです。伝説級(レジェンド)なのですから、それくらいの価値があって当然です。特に付けられている加護が、全て<守護>だというのが良いですね。非常に使いやすいアイテムです」


 自身が持ち込んだアイテムの価値を、アカリが知らないことにティナは気がついているが、だからと言って安く買い叩こうなどとはしなかった。


「七個全てを売っていただけるのでしたら、アカリ様には二億一千万スピナをお支払いします」


「に、二億……」


「いかがでしょう? もし、もう少しお時間いただければ、性能を試させていただいて、更に金額を上乗せできるかもしれません。ひとつ三千万というのはコレを、伝説級(レジェンド)のアイテムだとして見ただけの価格ですので」


「もっと高くなるかもしれないってことですか……」


 アカリは少し悩んで、隣でスヤスヤと眠るテトを見た。


「あの、二億でいいです。その代わり、現金で十万ほどすぐにいただけませんか?」


「構いませんが……本当に、二億でよろしいのですか?」


「はい。また私がアイテムを作れたら、それも買い取ってほしいんです」


「承知いたしました。ぜひともうちで、買い取らせてください──と言いましても、恐らくこのクラスのアイテムを買い取れるのは当商会くらいでしょう」


 少しだけ、ティナは嘘をついた。


 各国最大の商人ギルドが頑張れば、手を出せなくはない金額。


 しかしそれではアカリが、欲深い商人たちの食い物にされかねないと危惧して、彼女が作ったアイテムは適正価格でティナが買い取れるようにしたかったのだ。


 アカリは、危なっかしすぎる。


 伝説級(レジェンド)のアイテムを、今日初めて会ったティナの言いなりの金額で手放してしまったように、この世界のモノの価値を、全く理解していなかった。


 もしティナに、アカリを騙す気持ちが少しでもあれば、七個を三千万で買い取ってしまえただろう。



 ──とはいえアカリは、女神からもらったスキルを使って全くのノーリスクでアイテムの素体を手に入れている。


 それにリファからもらった宝石を加えて、三時間ほどかけて加工はしたが、それが三千万もの値段がつけば、七個でその金額でも問題はなかった。


 問題があるとすれば、この世界のアイテムの価値が壊れる可能性があることだ。


 アカリは伝説級(レジェンド)に限らず、古代級(エンシェント)世界級(ワールド)を自在に作れてしまう。


 当然アカリはそれらの価値も知らないので、買い取ってくれる人に言われたままの金額で売ろうとする。


 アカリがどんなアイテムでもノーリスクで無限に創り出せることが、商人たちに知られたら……。


 ティナの嘘は、アカリとこの世界のモノの価値を守ったのだ。



「アカリ様、支払いの残金の件ですが……H&Tカードはお持ちですか?」


「H&Tカード? それって、なんですか?」


「こちらです」


 そう言ってティナが、先程先ほどアカリに見せた半透明のボードを()()()()取り出した。


「このカードは、当商会の会長が開発した預金通帳のようなものです」


 この世界のお金はこれまで、現金で持っておくかギルドカードに入れるしかなかった。


 そのギルドカードも、Sランクのカードでなければ自分が登録している系統のギルドでしかお金の出し入れができない仕組みだった。


 しかもギルドカードはステータスボードとは違い、紛失や破損などの恐れがある。



『ステータスボードに、お金の情報も入れば便利なのに』


 そのルナのつぶやきを聞いたハルトが、あることを思いついた。


 そして彼の家族と協力し、作ってしまった。


 ステータスボードのように、自由に出したり消したりでき、なおかつギルドカードのようにお金の送金や受け取りもできる──


 H&Tカードを。


 これはH&T商会での買い物はもちろん、ギルドでの報酬の受け取りが可能。


 加えてH&T商会に登録した小売店が設置している端末でも、支払いや入出金ができる。


 ステータスボードは神が作った、この世界の機能の一種だ。


 それをハルトは、ステータスボードを構築する神字をルナと解析することで、似たようなシステムを勝手に作り上げてしまった。


 もちろん、創造神には報告済みだ。


 世界樹の時と同様、『新しいシステムを作っちゃいました』──という事後報告であったため、彼が神界を離れた後、創造神は頭を抱えていた。




「こちらがアカリ様のH&Tカードです。二億スピナ入っております。それとは別に、十万スピナをご用意いたしました」


「ありがとうございます! それではまた新しいアイテムが作れたら、持ってきますね」


 アカリはティナから、二億スピナが入金されたH&Tカードとスピナが入った袋を受けとった。


 そして終始寝たままだったテトを抱き上げてティナにお礼を言ってから、H&T商会を出ていった。


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