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精霊と炎の騎士

 

 サイド:メイ


「マイ、さっきからどうしたの?」


 私たちは鋼の森の西端を目指しながら、遭遇した魔物を倒していたのですが、先程からマイの様子がおかしいのです。


「うん、ちょっとね」


 そう言って、マイはキョロキョロ周りを見渡します。


 どうしたというのでしょうか?


「メイは何か感じない?」


「何か? 魔物の気配とか?」


「ちがう。……例えばイフリート様の気配、みたいな」


 いったい、何を言っているんでしょうか。

 イフリート様が、こんな所にいるわけがないでしょう。


「でも、感じる気配がイフリート様より強いんだよね。しかも、その気配が幾つもあるの」


「えっ?」


 私の姉はついにおかしくなってしまったようです。


 四大精霊王であるイフリート様より強い?

 しかもその気配がいくつもある?

 そんなことあるわけないでしょう。



「あっ、こっちに来る!」


 マイがそう言った時、私も何か巨大な魔力の塊がこっちに向かってきているのに気が付きました。


 薄暗い森の奥の方が徐々に明るくなっていきます。


 木々の間から炎の塊が現れました。

 その炎は騎士の姿をしていました。


「す、凄い純粋な炎」


 マイが見惚れてます。

 わかる気がします。


 私は水の精霊なので、炎の魔法などにはあまり興味がないのですけど、それでも高純度な魔力の塊である炎の騎士にはどこか惹かれるものがありました。


「あっ」


 炎の騎士は私たちを少し眺めたあと、背を向けて森の奥へと去っていきました。


「な、なんだったんだろう?」


「魔物、かな? それとも誰かの魔法? でも、とにかく凄かったね」


「うん。もし、魔法だとしたら絶対、ハルト()のだよ!」


 マイは先日の訓練所の壁貫通事件以来、クラスメイトであるハルトさんのことを、『ハルト様』と呼ぶようになりました。


 もちろん本人にそう呼びかけたことは無いですし、私たちはクラスの皆様とそんなに親しく話さないので、まだ誰にもバレていないと思いますが。


 あの時、ハルトさんが使った魔法にマイは惚れてしまったようです。


「さっきの騎士も凄かったけど、やっぱりハルト様のあの槍は別格だったよねー」


 水の精霊である私には、威力がとんでもない魔法としか思えませんでしたが、火を司る精霊であるマイにとっては、その価値観を壊すほどの魔法だったようです。


「ハルト様、私も使役してくれないかな?」

「ヨウコさんみたいに?」


 私たちのクラスに居たヨウコさんは魔族でした。それも、成長した個体は災害級とも言われる九尾狐。そんなヨウコさんをハルトさんは従属契約で使役していると言います。


「だって、あんなに純粋な炎を生み出せるんだよ? 契約したら私だってきっと、高位精霊級になれちゃうよ」


 私たち精霊族は普段、精霊界という所にいます。人間と契約を交わして、人間から力を分け与えられることで、こちらの世界に顕現することができ、その代償として人間に力を貸すのです。


 人間から分け与えられる力が大きければ大きいほど、またその魔力が純粋であるほど、私たちの出せる力も大きなものとなります。


 私たちはとある事情で、人間と契約しなくてもこちらの世界にずっと顕現していられます。


 ですが、出せる力には制限がかけられているのです。


「初めはルークさんに使役されたいって言ってたのに……」


 こちらの世界で、私たちを使役してくれる人を探すのも、この学園に来た目的のひとつでした。


「うん、でも、今はハルト様一択だよ! あ、もちろんメイに強制はしないよ。ルークさんが良いなら私は応援するね」


 賢者の孫であり、あの若さで究極魔法を使えるルークさんは契約者の最有力候補だったのですが、ハルトさんの魔法を見てからというもの、マイはすっかり彼の虜になってしまったようです。


「とりあえず、この辺に魔物いなくなっちゃったし、そろそろ戻ろっか」


「そうだね。戻ったらハルトさんにさっきの騎士のこと聞いてみる?」


「うん、ほんとにハルト様の魔法だったら、私、契約してもらえるようにお願いするから!」


 凄い意気込みです。


 マイはシスコンで、いつも私にベッタリだったのです。


 精霊界を出る時、一緒の人に使役されたいね、と話していたことなど、忘れてしまったのでしょうか?


 ちょっと寂しいですが、姉が妹離れできたことを喜びましょう。


 もっともハルトさんが水属性魔法も、火属性魔法と同等に扱えるのであれば話は別です。


 もし、そうであれば、私もマイと一緒に彼にお世話になりたいと思います。


 まぁ、あのレベルの魔法を二属性も使えるなんてことは、ありえないと思いますが……


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