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レベル1の最強賢者 ~ 呪いで最下級魔法しか使えないけど、神の勘違いで無限の魔力を手に入れて最強に ~  作者: 木塚 麻弥
第十章 転生勇者

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Eランク昇級試験

 

 冒険者登録して二週間。


 ハルトたちは連日、グレンデール王都の冒険者ギルドにやってきて依頼を受けていた。


 そして今日、ハルトたちはEランクへの昇級試験を受ける。


 最下級のFランクは、冒険者としてやっていけるかどうかをチェックする等級であるため、Eランクへ上がるために必要とされるギルドポイントが低く、割と簡単に昇級試験を受けることができるようになる。


 適正な依頼を受けて、順調にギルドポイントを貯めると、およそ一ヶ月ほどで昇級試験を受けられる。


 それを思うと、ハルトたちは少し早いくらいだった。


 金銭的な報酬が少ない代わりに、ギルドポイントを多めに貰える依頼──主に他の冒険者に忌避される依頼を多く受けてきたからだ。


「いよいよ最下級冒険者卒業にゃ!」

「冒険者って、なかなか大変なんだな」

「あぁ、俺もここまでキツイとは思わなかった」


 メルディとルーク、リューシンがここ二週間を振り返っていた。


 彼らが冒険者を大変だと思ったのは、強い魔物と戦わなければならないからではない。むしろ魔物との戦闘だけであれば、ここにいる全員がAランクでも通用する。


「王都の地下水路のお掃除……アレはもう、絶対やりたくないです」


 リファが思い出したように身を震わせる。


 一昨日、ハルトが受注してきた地下水道の掃除は、家族全員にかなりのトラウマを植え付けた。


「激しく同意なの」

「特に臭いがやばかったのじゃ」

「うむ、死ぬかと思った」


 嗅覚に優れるヨウコやシロは、特にこたえたようだ。


「でも、下積みできた感じがします!」

「そーだね。道歩いてて咲いてる花が売れるか売れないのか瞬時に判断できるようになったし」


 ルナの言葉に反応したのはシルフだ。


「今日ここに来る途中、コレを見つけました」

「おっ、ルナ。それ(かすみ)草じゃん! 300スピナで買い取ってもらえるね」


 風の精霊王であるシルフが、一食の食事代にも満たない程度の草の買取金額を覚えていた。


 雑草か、買い取ってもらえる薬草などかどうかの判断をできるようになっていたのだ。



「シルフ様までも、薬草に詳しくなっちゃいましたね。これがハルト様の狙いだったのですか?」


「んー、そこまでのつもりじゃなかったんだけど……みんなが色んなことを知ってくれるのは嬉しいかな」


 エルノール家には王族や特殊な種族が多く、そのため人族の常識を知らないメンバーがほとんどだった。


 ハルトの仲間たちであれば、魔物を倒した方がもっと早く昇級試験を受けることができただろう。Fランクの魔物など、彼らにとって塵芥に等しい存在なのだから。


 でもそれでは、意味がないと考えた。


 魔法学園の教科書にも魔導書にも載っていない、市民や下級冒険者にとっての常識。


 そういう知識も家族のみんなに覚えてほしいと、ハルトは考えていた。


 だから、ギルドに貼り出される色んな依頼を満遍なくこなしてきたのだ。


 その結果に、ハルトは満足していた。




「ハルトさん。いよいよ今日、昇級試験ですね!」


 冒険者ギルドの受付嬢がハルトに声をかける。


 他の冒険者たちが嫌がって受けてくれない依頼をどんどん消化してくれるので、彼女をはじめギルドの職員たちは皆、ハルトたちに好感を持っていた。


「はい。よろしくお願いします」


「試験場までご案内します。皆さん、ついてきてください」


 受付嬢の後ろに、エルノール家全員がぞろぞろとついていく。


 この光景も、王都の冒険者ギルドではありふれたものであると、冒険者たちに受け入れられていた。


 キキョウが毎日少しづつ、冒険者やギルド職員を洗脳したからだ。


 そのおかげでハルト、ルーク、リューシンという三人の男が、ティナを初め十六人もの美女や美少女をつれてギルド内や付近を歩いていても、大きなトラブルに巻き込まれることはなかった。



 ──***──


 試験場についた。


 円形で、そこそこ大きい闘技場だった。

 その中心に、ガタイのいいスキンヘッドの男が立っている。


「ハルトとその仲間だな。俺はB級冒険者のヨハンだ。先輩冒険者として、お前らの昇級試験の監督を担当する。よろしくな」


「よろしくお願いします」


 ヨハンが手を差し出してきたので、ハルトは彼と握手をする。


「冒険者になったばかりだってのに礼儀正しいし、他の新人が嫌がる依頼を率先してやるらしいじゃないか。お前ら、すごく評判がいいぞ」


「ありがとうございます」


「それに魔物討伐でも、既にゴブリンを複数体倒したって報告が入ってる。俺の見立てでも、お前らにはそれだけの力があると思う……そこでだ」


 ヨハンが手に持っていたスクロー(巻物)ルを、闘技場の床に投げつけると──



 五体のスライムが現れた。


 ヨハンが使ったのは、事前に捕獲した魔物を封印しておける『封魔のスクロール』だった。


「特別サービスだ。このスライムたちをたおせたら、Eランクへの昇級を認めよう」


「スライム倒すだけで良いのかにゃ?」

「らくしょーなの!」

「もっと強い魔物でも問題ないのじゃ」

「さすがにスライムだと楽勝すぎだろ」


 メルディ、白亜、ヨウコ、リューシンは目の前でプルプルしているスライムをなめていた。


 魔人すら倒せる彼女らが、スライム(最弱の魔物)を見下すのは至極当然でもある。



「まぁまぁ。せっかくヨハンさんがコレを倒すだけでいいって言ってくださったんだから。全力でがんばろーぜ」


 そう言って、ニヤリと笑う男がいた。


 その笑みに気づいたのは、彼のことを常に気にかけているひとりのメイドだけ。


 メイドは男の笑みが気になり、なんとなくスライムの魔力に探りを入れる。


 そして気づいた。


 スライムが、男の魔力で強化されていることに。



 実はこのスライムたち、世界最強の賢者にテイムされ、ありえないほど強化されていたのだ。


 そしてヨハンが昇級試験のためにスライムを捕獲しに来るという情報を掴んでいた(賢者)が、ヨハンに捕獲されるようにとスライムたちに命令した。


 男の魔力は、スライムの魔力の中に巧妙に隠されていた。


 男の幼少期からその魔力に触れてきたこのメイドでなければ、恐らく気付くことはできないだろう。

 

 メイドは、このスライムに攻撃しないことを決意した。


 倒さなければ昇級試験をクリアできないのだが、男の魔力で強化されているのなら、普通のスライムであるわけがないのだ。


 様子を見るべきだと判断した。


(いったいハルト様はなにをお考えなんでしょう? 早くSランクになりたいと言いながらも、ご自分で昇級試験の難易度を上げるなんて──)


 そんな疑問を抱くメイドをよそに、ヨハンが試験開始の合図をだす。


「一応、パーティーとしての動きを見させてもらうからな。できれば全員攻撃に参加してくれ。それじゃ──はじめ!!」


 最強のスライム(最弱)との戦闘が、開始された。

 

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