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ガレスの街

 

 邪竜を倒しに行ったら、なぜかリューシンが竜の姿で立っていた。


 リューシンが邪竜を既に倒したというので、俺とセイラはなにもせず、邪竜討伐の依頼を持ちかけてきたローレンスさんと一緒に、帰路についている。



「ハルト殿、あの黒竜を信じて良いのですか?」


 その途中で、ローレンスさんが問いかけてきた。


「たぶん、大丈夫です。あの黒竜に邪悪な意図は見られませんでしたし、女の子があの竜を守ろうとしてましたから」


 いつの間にか、リューシンが女の子と仲良くなったみたいだ。


 生贄にされて死にそうだったところを助けて、仲良くなった感じかな?


 俺の魔法を前にしても臆せずリューシンを守ろうとしていたから、彼女がリューシンをかなり慕っているのがわかった。


 まぁ、元々リューシンを正気に戻すつもりで放った魔法だったから、もし当たっててもアイツが死ぬことなんてまずないし、俺が使った聖属性魔法は人族に触れてもダメージは入らない。


 女の子に当たってても、問題はなかった。


 なんにせよ、リューシンが無理やり女の子を襲ったわけじゃないようなので、俺は少しホッとしていた。


 義弟(おとうと)になったリューシンを、本気で攻撃するのは気が引けるしな。



 ちなみに、ギルドに依頼をしてきた村が支払う依頼金だが、俺が払うことにした。


 リューシンが黒竜の姿でいたのが気になって、彼の思考を読心術で少し読んだのだけど、討伐隊を脅してギルドへの依頼金を踏み倒そうとしていた。


 その考えを許せるわけではないけど、女の子を守るためだって言うから、依頼金の件はなんとかしてあげることにしたんだ。


 そもそも俺とセイラはなにもしてないし。


 だから、ローレンス(ギルドマスター)さんが邪竜討伐の準備を進めるためにかかった費用だけを、負担すればいい。


 たいした額ではなかった。


 ローレンスさんは、依頼金は不要だって言ってくれたけど、邪竜が現れたという情報で彼のギルドは大騒ぎになって、色々苦労したみたいだからその補填という意味も込めて、少し多めの依頼金を押し付けることにした。


 俺としては、ギルドマスターのローレンスさんと知り合いになれたのだから、将来クランを作るときになんらかのプラスになるだろうと考えている。



「ところでローレンスさん、貴方は昔からガレスの街に住んでいるのですか?」


 俺はガレスの街でギルドマスターをしている彼に、なぜか親近感があった。


 初対面なのは間違いない。


 でも俺は、なんとなく彼に会ったことがある気がしていた。


「私の家族は曽祖父の代から、ガレスの街に住んでいます。実は私は、その曽祖父から名前を頂いたんです」


 おぉ、てことは、もしかして──


「曽祖父も、ローレンスという名前だったのですね。ちなみにその御方も、冒険者でした?」


「ハルト殿、よくご存知で。元は別の街のギルドに所属する冒険者でしたが、スタンピードから街を守ったことで曽祖父は街の英雄と称えられ、そのままガレスに移住することになったそうです」


「へぇ、そうなんですか」


 ローレンスさんの回答で、予測が確信に変わった。


 俺は守護の勇者としてこちらの世界に来ていた時に、ローレンスさんの曽祖父に会ったことがある。


 百年前、スタンピードから街を守っていた冒険者のひとりだ。


 その彼が身につけていたモノを、俺の目の前にいるローレンスさんが腕にはめていた。


 願い石のブレスレット。

 恐らく、代々受け継がれているのだろう。


 そのブレスレットは、百年前と変わらず安全祈願を意味する黄色に輝いていた。



 俺はセイラから依頼元がガレスの街だと聞いていたので、邪竜討伐が終わったら街を訪れるつもりでいた。


 百年前、守護の勇者が救った街が、今どうなっているか気になったからだ。


 思いがけず、守護の勇者としてこっちに来ていた時の関係者に会えて、俺は嬉しくなった。



「ハルト殿、見えました。アレが、ガレスの街です」


「おぉ!」


 昔見た時とは比べ物にならないほど、立派な街に成長していた。


 こんなに大きな街で、冒険者ギルドのマスターをしているのだから、ローレンスさんの実力もかなりのものなのだろう。



 その後、ローレンスさんにつれられてガレスの街に入った。


 そこで──


「こ、これは……」


「どうです? 見事なものでしょう。この街を、世界を守った、守護の勇者様の像です!」


 街の中央広場に、巨大な石像が鎮座していた。


 守護の勇者像──つまり、俺の彫刻だ。


 だいぶ美化されてる気がする。

 ちょっと、かっこいいと思ってしまった。


 こんなのが街のど真ん中にあるのだから、かなり注目を集めている。


 正直、恥ずかしい。


「ハルト様、サンクタム(聖都)にもコレ、作っていいですか?」


 セイラが小声で聞いてきた。


「……頼む、それはやめてくれ」


 セイラは俺が、守護の勇者だということを知っている。


 そもそも聖都は創造神様を祀っているのだから、そんな場所に俺なんかの石像を置くのは恐れ多い。


「ちなみにこの石像を小さくしたモノを、この辺りの土産屋で購入できます。ガレスの街の、名産品のひとつです」


 この地域では彫刻向きな岩石が採れるため、それを加工した製品の製造が盛んなのだそうだ。


 その中でも特に人気なのが、守護の勇者像だという。


 ローレンスさんの言葉を聞いて、セイラの顔が、ぱぁっと明るくなった。

 


 ……セイラ、もしかして買って帰るつもりじゃないよな?


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