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レベル1の最強賢者 ~ 呪いで最下級魔法しか使えないけど、神の勘違いで無限の魔力を手に入れて最強に ~  作者: 木塚 麻弥
第九章 それぞれの日々

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リューシンの庇護

 

 ヒナタをつれて、彼女の村まで飛んできた。

 およそ二百人が住む規模の村だ。


 その村の中心にある広場に四体の影竜がいて、その付近に住人たちが集まっていた。


「お、おい! お越しになられたぞ」

「リューシン様だ!!」


 上空にいる俺に気付いた住人たちから、声が上がる。


 俺は、影竜たちから少し離れた場所に着地した。


 着地して、ヒナタを降ろしていると、俺の前に住人たちがやってきた。



「我らの村をお救いいただき、誠にありがとうございました」


 村の長っぽい人族が俺の前に膝をつくと、それに倣うように集まっていた全員が膝をつき、頭を下げた。


 俺は黒竜の姿なのだが、住人たちは俺を見てもあまり怖がっていないようだ。


 この村にはずっと邪竜の眷属がいたのだから、竜の姿には慣れているのだろうか?



「主よ、邪竜の眷属は全て倒しました。我らが来た時は少し暴れておりましたが、村の住人に死者はおりません」


「そうか、よくやってくれた。ありがと」


「勿体ないお言葉」


 そう言いながら、影竜のリーダーは俺の影の中に消えていった。


 影竜と俺の影が触れた時、その思念が俺に流れ込んできた。


 俺が邪竜を倒し村を救ったのだと、住人たちに説明してくれたようだ。



「そ、それで、生贄の件ですが──」


「ん?」


 生贄?

 邪竜を倒したのに、なんで生贄が必要なんだ?


「私どもとしては、そ、その……ヒナタを差し出すことを、拒否するつもりはありません」


 ──は?


 ヒナタを、生贄に?

 な、なんでだ!?


「おい、それはどういう意味だ?」

「──ひッ!?」


 あっ、やべっ!


 村長が、ヒナタを生贄に出すとか言うから、つい殺気が漏れてしまった。


 黒竜の殺気を受けた村長の身体が、尋常ではないほどガクガク震えていた。


 ちょっと申し訳なく思う。


 ……でも、仕方ないだろ?


 俺が邪竜から助けたヒナタを、生贄にするなんて、許せるわけがない。



「「リューシン様! どうか、お怒りをお鎮めください!!」」


 村長の周りにいた老人たちが、すごい勢いで頭を下げている。


「あー、ごめん。ちょっと殺気が漏れた。そこまで怒ってるわけじゃないんだけど……」


「い、生贄の娘が、お気に召しませんでしたか?」


 いいわけないだろ!

 俺が、ついさっき助けたばっかりなんだぞ!?


 それに、こんなに可愛いヒナタを、生贄になんてさせてたまるか!!



 ──ん?


 あれ?


 ちょっと、まてよ。


「……なぁ」


「は、はい。なんでしょうか?」


「ヒナタを生贄に──って、誰への生贄なんだ?」


「えっ」

「そ、それはもちろん──」

「リューシン様への、生贄でございます」


「…………」


 あぁ、そーゆーこと。

 盛大に勘違いしてた。


 ……え?


 な、なんで、そんなことになってるんだ?



『主がこの娘を気に入っていたようでしたので、この村を助けた報酬として娘を差し出すよう、村の住人に交渉(脅迫)いたしました』


 影竜の思念が伝わってきた。

 どうやら、勝手なことをしてくれたらしい。


 てか、()()したんだよな?

 きょ、脅迫じゃ、ないよな?


『この村を支配していた邪竜は、我が主、リューシン様が倒した。その邪竜よりお強いリューシン様が、邪竜への生贄だった娘をご所望である──そう、説明いたしました』


 うおぉぉいぃぃぃぃ!

 なにやってんのぉぉぉぉおお!?


 絶対それ、交渉じゃないから!


 アレじゃん。

 俺、完全に悪役じゃね!?


「あー、ごめん。別に生贄とか求めてないから。てゆーか俺、ドラゴン(魔物)じゃないし……」


 魔物じゃないから、ヒトを喰ったりしない。


「生贄は不要? ひとりでは、足りないと──ま、まさか、この村を滅ぼすおつもりですか!?」


 そ、そんなつもりはない!

 早とちりしないでほしい。


「ひ、ひぃぃ!」

「ダメだ。俺たちもう、お、終わりだ……」

「とーちゃん、こわいよぉ」

「し、静かにしなさい。リューシン様の気に障るだろ!」

「どうか、どうか娘だけは、お助けください」


 村全体に、恐怖がすごい勢いで伝播していった。


 ヤバい……。

 こんなはずじゃなかった。


 アルヘイム(エルフの王国)を救ったハルトのように──とまではいかないけど、俺はヒナタの村を救って、みんなに感謝してほしかっただけなのに……。


 恐怖で村を支配したいわけじゃない。


「リューシン様、私が貴方のモノになります。ですから村のみんなを、赦していただけませんでしょうか?」


 ヒナタも俺の前に土下座した。


 違う、違う違う、ちがーう!


 俺はヒナタと、デートを楽しみたいだけだ。

 俺のモノになってほしいとか、思ってない!


 ど、どうすればいいんだ?

 俺はいったい、どうするのが正解なんだ?


 こんな時、ハルトなら──



 はっ!

 そ、そうか!


 ハルトだ。

 アイツがやるようにやればいいんだ。



「生贄はいらない。だけど、俺はここの村を守ってやるよ。その代わり、頼みたいことがある」


 この村は長い間、邪竜に支配されていた。


 俺が生贄を不要だと言ってこの村から離れたとしても、住人たちは俺の影に脅えて過ごすことになるだろう。


 だから支配ではなく、守護してやることにした。


 その代償に──


「ひと月に一回くらい、ここに来るから飯を食わせてくれ。その時、できればヒナタがそばにいてくれると嬉しい。俺の眷属から聞いたと思うけど、俺は彼女を気に入ってるから」


 くっそ恥ずかしい。

 でも、言ってやったぞ!


 ちょっと、ハルトっぽくなかった?


 アイツ、こんな恥ずかしいことを何度もやってるんだから、すごいと思う。



「そ、それだけでよろしいのですか?」


「あぁ。今日からこの村は、俺の庇護下に入れる。ヒナタ、ご飯の件……大丈夫?」


「は、はい。その、私なんかで、よければ……」


 照れてるヒナタは、可愛いなぁ。


 住人のために、生贄になろうとした健気さも、俺の庇護欲を掻き立てる。



 新たな楽しみができた。


 そのうち、ヒナタと村の外にデートも行きたいな。


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