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英雄は 世界の食事を 美味くする

 

「ティナは俺の名前を忘れてなかったってこと?」


 俺は記憶の女神様と契約して、ティナにお別れを言う時間をもらった。


 その契約で、この世界のヒトたちから俺の名前に関する記憶は全て失われたはずだった。


「いえ、私は遥人様のお名前を忘れていました。それから、記憶の女神様がやられたことでしょうが、この世界のどんな書物にも遥人様のお名前は記録されていませんでした」


「じゃあ、どうやって──」


「私の記憶にも書物にも、遥人様のお名前はありませんでした。しかしコレだけ、残されていたのです」


 そう言ってティナが見せてくれたのは、俺がティナにプレゼントしたブレスレットだった。


 とある幻獣の革を使って俺が自作した、なんとも不格好なブレスレット。


「それ、まだ持ってたんだ……」


「当然です。私の大切な方が、初めてくれたものですから」


 百年の時が経ち、さすがにボロボロになっていたが、大切に使ってくれたのだということがわかる。


 うっすらとだが、俺が魔法で刻印したH&Tという文字が見えた。


「私は遥人様のお名前に関する記憶を失いましたが、このブレスレットが守護の勇者様から頂いた物だということは覚えていました。それに遥人様が、また戻ってくると約束してくださったことも」


 俺がこの世界に帰ってくると約束したから、ティナはお金を稼ぎ始めたらしい。


 俺と一緒に暮らすために。



 それからティナは、どうやって世界最大の商会を作るまでに至ったのかを教えてくれた。


「まず、属性竜を倒して資金を作りました。遥人様との冒険でレベルが上がっていましたので、四億くらいは簡単に稼げました」


 資金作りのために、ティナはひとりで八体もの属性竜を倒したという。


 当時、既にレベル200を超えていたティナの敵ではなかったらしい。


「今だったら、ティナひとりで属性竜の討伐なんてやらせないけどね」


「ふふ。ハルト様、過保護ですよ。私は世界最高レベルの魔法剣士ですよ?」


 わかってる。


 それでも、ティナが傷付く可能性がある行為は、あまりやらせたくなかった。


「ですがそう言っていただけるのは、ハルト様に大切にされてると実感できるので、すごく嬉しいです」


「うん。ティナのことが大事。俺はティナのためなら世界を敵にしても戦えるくらい、ティナを愛してる」


「ハ、ハルト様!」


 ティナが抱きついてきた。



 世界を敵に──ってのは、例えだけどね。


 もし本当に世界中の国が敵になっちゃったら、さすがにまだ勝てないでしょ。


 でも、いつかはそんな力を手に入れたい。


 そのくらいじゃなきゃ、世界最強の魔法剣士であるティナを守れないし、俺の最終目標を果たせない。


 俺を殺した邪神を、ぶん殴るという目標を。


 まぁ、それはさておき──



「ティナの話、続きはベッドの上で聞いていい?」


 ティナのいい匂いと、俺の身体に押し付けられる柔らかいモノのせいで、彼女とイチャつきたくなってしまった。


「……はい」


 耳を真っ赤にしながら、それでも確かにティナは肯定してくれた。



 今日、俺とティナ以外はみんな出かけていた。


 ヨウコ、白亜、メルディは遺跡のダンジョンに挑戦している。


 マイとメイ、リファは料理当番なので、 食材の買い出しに行った。


 セイラとエルミアは聖都でイベントがあるようなので、昨日から外出している。


 ルナとキキョウはそれぞれ、俺の分身とデートしてるみたいだ。



 久しぶりに、ティナとふたりっきり。


 前回はダンジョンお披露目の前だったから、だいたい一ヶ月ぶりかな?


 食堂でティナと喋っていたのだが、早く彼女とイチャつきたくて、少し強引にティナを抱き上げた。


「きゃ! えっ、ハ、ハルト様!?」


 突然のことでティナが驚いている。


「ごめん。早くベッドに行きたくて、つい」


「……もう」


 恥ずかしそうに、顔を背ける。


「このまま連れてっていいよね?」


 こっちを見てくれなかったが、ティナがコクコクと頷いてくれたので、彼女を抱いたまま俺は寝室へと向かった。



 ──***──


「それで、どうやって五千億も稼いだの?」


 一通りティナとイチャついたあと、気になっていたことを聞いてみた。


「ハルト様は百年前と今で、ご飯が美味しくなったとは思いませんか?」


「思う! すごく美味しくなったと思う!!」


「私はカナ様に、異世界の調味料をたくさん頂きました。それらを、この世界の素材で再現したのです」


 百年前は食材の味付けと言えば、塩か胡椒のようなものしかなかった。


 さらに、胡椒は高級品で流通量が少なく、味付けと言えば、塩を振りかけるくらいのものだった。


 しかし今は、ドレッシングを始め様々な調味料が出回っていた。



「まさか、この世界で出回ってる調味料は──」


「基本調味料以外は全て、私が開発しました」


「……マジか」


 なんということだ。


 この世界の料理が美味しくなったのは、ティナのおかげだった。


「元々、この世界の味付けは淡白なものが多く、私の作った調味料はあっという間に人々の心を掴みました」


「だろうね」


「それから、私が世界中に調味料を広められたのは、()()のおかげでもあります」


 そう言ってティナがボロボロになった麻の袋を取り出した。


「あっ、それ!」


 それは俺も見覚えのある袋だった。


 どんなものでも収納でき、入れたものの重さは感じなくなる。そして、入れたものの状態をキープし続けられるという最上級の『収納袋』。


 遺跡のダンジョンのボーナスルームで、俺が手に入れた超レアアイテムだ。



「すみません。これ、ハルト様がいらっしゃらない間、私が利用させていただいていました。ですがこれのおかげで私は、世界の物流を掌握することができたのです」


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