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レベル1の最強賢者 ~ 呪いで最下級魔法しか使えないけど、神の勘違いで無限の魔力を手に入れて最強に ~  作者: 木塚 麻弥
第八章 分身魔法とダンジョン運営

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妻たちの成果発表会

 

「「ハルト様、ただいま戻りました」」


「マイ、メイ、おかえり」


 キキョウの拘束から竜神が解き放たれるのを待っていたら、マイとメイが帰ってきた。


 ふたりは精霊界に戻っていたのだという。


 なぜかマイたちは嬉しそうにしていたが、訳を聞いても教えてくれなかった。


 そしてヨウコが、俺とキキョウに近寄るなと一言かけて、その場にいた俺の妻たちを招集した。


 みんなが集まって、なにか話し合っている。


 なんだろう?

 すごく気になる……。


 なんで俺はのけ者にされてるんだ?

 ちょっと寂しいぞ。


「…………」


 よーし、いいもんね。


 教えてくれないなら、勝手に読心術で、みんながなにをしようとしてるか調べちゃおっと!


 読心術を発動させようとしていたら──


「ハルト様、ヨウコたちの心を読むのはダメですよ」


「えっ!?」


 読心術を使おうとしていたことが、キキョウにバレていた。


「な、なんで?」


「これでも(わらわ)は、最上位の魔族ですから。魔力の流れで、なにをしようとしているのかは大体わかるのです」


 ま、マジか。


「マジです。まぁ、妾はこの通り、()()()()ので、読心術など使わずとも彼女らの声が聞こえます」


 キキョウの耳がピクピクしていた。


「そ、それで、ヨウコたちがなにを話してるか教えてくれたり──」


「残念ながら、それはできません」


 ですよねー。


「ご心配なさらなくても問題ありませんよ。彼女らは、ハルト様の不利益になるようなことを話しているわけではないようですから」


「そ、そうなんだ……」


 んー、それでも気になる。

 後であの中の誰かに、聞こうかな?


「それから、誰かひとりを捕まえて事情を聞き出すのは絶対にお止めください」


「えっ」


「あそこにおる者たちはみな、ハルト様への好感度がかなり高いです。おそらくハルト様が問い詰めれば、誰であっても正直に答えてしまうでしょう」


 キキョウが、集まっている俺の妻たちを眺めながらそう言う。


「ですがそれをすると、秘密をバラしてしまった者が、残りの者から責められる可能性があります。それは避けるべきかと」


 俺に読心術を使うなと言いながら、俺への好感度がわかるってことは、キキョウは読心術っぽいものを全開で使っているということだ。


 ちょっとズルくね?


「妾は、いいのです」


 キキョウは悪戯っぽく笑った。


 相変わらず仕草ひとつひとつが妖艶で、魅入ってしまいそうになる。


 まぁ、妻たちの仲が悪くなるのは嫌だし、キキョウが俺に不利益のあることではないと言っていたから気にしないようにしよう。



「ぶっはぁぁぁあ!」

「──っ!?」


 突然、竜神様が動き出した。


「オ、オレ……生きてる──」


 そう言って、竜神様はその場に倒れ込んだ。


「りゅ、竜神様!?」


「問題ありません。精神的な疲労で気を失っただけです。まぁ、こやつは神なので気を失ったというより、肉体のエネルギーを使い果たして休息中といったところでしょう」


「そ、そうなの?」


 しかし神様が、そのエネルギーを全て使い果たすって、かなりヤバいんじゃないだろうか?


 キキョウは十分間、精神世界で自分と同レベルの敵と戦うだけだと言っていたが、神である竜神様がそれだけで気を失うほど疲労するとは考えにくい。


 いったい、キキョウの創り出す精神世界ではなにが起こるんだろうか?


「こやつは妾が預かりますね。あの娘たちのこと、悪いようにはさせませんからご安心ください」


 キキョウの魔法について考えていたら、彼女は尻尾で竜神を器用に掴んで持ち上げていた。


 あの娘たちというのは、リュカと白亜のことだろう。


「わかった。よろしくね」


「かしこまりました、ハルト様」


 そう言ってキキョウは、竜神様を尻尾で持ち上げた状態で近くの森の中へと消えていった。



 ──***──


 ハルトの屋敷の秘密の部屋に、彼の妻たちが全員集合していた。


 ちなみに、ハルトはひとりでどこかへ外出している。


「お疲れ様です。これより第二回目となる『妻会議』を開催します」


 司会担当のティナが宣言すると、妻たちからパチパチと拍手が送られた。


「みなさん、分身魔法について各方面で調べてくださったと思いますので、それを発表していただきましょう。まずは──」


「我らの報告の前にティナよ、お主はどうだったのじゃ?」


「わ、私ですか?」


「ティナから、ハルトの匂いがするにゃ!」


「主様からもティナの匂いがしたのじゃ。それも、まるで肌と肌が触れ合っておったかのような濃厚な匂いが……もしや、我らがおらん間に、よろしくヤッておったわけではなかろうな?」


「えっと、いや、それは──」


 メルディとヨウコに詰め寄られ、ティナがたじろぐ。


「ティナ様……その、首筋の痕は?」


「あっ」


 リファに指摘されて、ティナが慌てて首筋を手で覆い隠す。


 しかしリファを初めとした数人が、ティナの首筋の痕──キスマークに気付いていた。


 ティナがそれを隠そうとしたことで、ハルトの妻たちは確信した。


 自分たちが分身魔法のヒントを探して奔走している隙に、ハルトとティナがふたりっきりでそーゆーことをヤッていたということを。


「ティナ様、ハルト様と、()()()()したのですか?」

「「詳しく聞きたいです」」


 セイラとマイ、メイもティナを追い詰めるように近寄ってきた。


「ティナ先生、それって、今朝の着ていたのと違うメイド服ですよね」


 ほんの微かな刺繍のほつれすら記憶できるルナが、朝屋敷を出る前に見たティナの服と、今ティナが着ているメイド服が違うことに気付いた。


 つまり、ティナはメイド服を着替えている。

 一度はメイド服を脱いだということだ。


「え、えっと……」


 どんどんティナが追い込まれていく。


 歴戦の魔法剣士も、この窮地を抜け出す秘策は持ち合わせていなかったようで──



 朝、ティナとハルト以外の家族が全員外出した後の出来事を話し始めた。


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