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妻たちの奔走(8/9)

 

「ど、どういうことだ? お前たち、ハルトと、その……ね、寝ておるのか?」


 星霊王は明らかに動揺していた。


「「あの、ご報告が遅れましたが、私たちハルト様と夫婦の契りを結びました」」


「…………」


「「お父様?」」


「──はっ! す、すまん。少し驚いてしまった。そ、そうか、あのバケ──ハルトと、結ばれたのか」


 精霊がヒトと結ばれることは、この星の永い歴史で見れば珍しくはないのだ。


 しかし、寿命がない精霊からしたら、たかだか百年程度で死んでしまうヒトと一緒にいられる期間は、あまりにも短い。


 娘たちがハルトを好いているのであれば、その僅かな時間を彼と一緒に過ごそうとすることくらい、どうということはない。


 精霊は、ヒトとの間に子を作ることはできない。

 例外はあるが、娘たちはそれに当てはまらない。


 所詮、()()()()()()に過ぎないのだ。


 だから、なにも問題ない──そう、星霊王は考えた。


「おめでとう。我はお前たちを祝福する」


「「あ、ありがとうございます。お父様!」」


「よし、では我が、お前たちとハルトに加護をやる。さすれば奴も、多少は寿命が延びるだろう」


 精霊の王である自分がハルトに加護を与えれば、その寿命は倍程度にはなるだろう。


 可愛い娘たちのために、そのくらいはしてやってもいいと星霊王が考えていた。


「「えっと……それは無理だと思います」」


「ん? なぜだ?」


 マイとメイは物凄く言いにくそうにしながら、なんとか言葉を選ぶ。


「実は私たち」

「創造神様から」

「「御加護をいただいてしまいました」」


「──は?」


「「創造神様の御加護がありますので、お父様の加護はいただけません」」


「な、なに!?」


 星霊王がマイとメイの頭に手を触れた。


「そ、そんな……本当に、創造神様の祝福を受けておる」


「「ハルト様との結婚を、創造神様に祝福していただいたのです」」


 星霊王は娘たちに触れて、それが真実だとわかってしまった。


「バカな……創造神様が、ヒトと精霊の契りを祝福するなど聞いたことがない──ん?」


 星霊王には、他に気になることがあった。


「お、お前たち、最近ハルトとの結婚と創造神様から加護をいただいたこと以外に、なにか変わったことはないか? なにか我に、報告し忘れておることはないか?」


「変わったこと?」

「なんでしょう?」


 マイとメイはキョトンとしている。


 星霊王はふたりに触れた時、その内包する力の一部を垣間見た。


 それは、精霊王級の力だった。


 精霊王とは、火、水、風、土の四大元素のマナを司る、精霊たちの王。


 その精霊王の力を、マイとメイが凌駕していた。


「例えばだな、創造神様から()()()()大量の魔力をもらったとか──」


「大量の」

「魔力……?」

「「あっ!」」


「おぉ、心当たりがあるか?」


「「ハルト様に魔力をいただいて私たち、ちょっと強くなりました!」」


「なん、だと……」


 星霊王は頭を抱えた。


 知らぬ間に、娘たちがヒトとの間に子を作れる存在になっていた。


 何らかの事情により創造神様から、一時的に魔力を受け取っただけであれば良かった。


 しかし、そうではなかった。


 マイとメイは契約者であるハルトから、正規のルートで魔力を受け取り、その存在の格を上げていたのだ。


 ヒトとの間に子を作れるのは、精霊王級に至った精霊だけなのだが──


 マイとメイはその条件を満たしていた。


 つまり星霊王の娘たちは、子を作れる状態で、ハルトの嫁になったということだ。


 ただ百年程度、共に過ごすだけの存在──家族の真似事をするだけの関係ではなくなっていた。



 とすると──


「我は、ハルトの義父になったのか……」


「「そ、そうですね」」


 娘たちに肯定されて、知らぬうちに娘を嫁に取られていたことを実感した。


 挨拶もなしに、大事な娘たちを奪われたのだ。


 これが普通の男であれば、今すぐにでもその存在を消滅させてやるところだが──


 星霊王には、それができなかった。


 星霊王はハルトと召喚契約を結んでいるうえに、強制召喚させられた経験がある。


 召喚契約くらいは簡単に破棄できるが、強制召喚された事実が痛かった。


 人間界に顕現すると、星霊王は強制的にハルトの支配下に置かれてしまうのだ。



「……マジか」


「「あ、あの、いずれハルトさんと一緒に、お父様とお母様に、ご挨拶に来るつもりでした」」


 明らかに落ち込んでいる星霊王を気遣って、マイとメイが言葉をかける。


 でもそれは一層、星霊王の気分を沈めた。



「で、ハルトと夫婦になったのであろう? なぜ分身魔法が必要なのだ。ハルトと寝れば良いではないか」


 どうにもならないと諦めた星霊王が、少しなげやりな態度で質問を投げかける。


「えっと……」

「実は……」

「「私たちと一緒に、ハルト様と結婚した方が九人いるんです」」


「は?」


「ですから、ハルト様と一緒に寝られる日が少なくて」

「一緒に寝られない日が寂しいので」

「「分身魔法をハルト様に使っていただきたいのです」」


「と、ということは、奴には十一人も嫁がおるというのか!?」


「「その通りです」」


「い、いや、ちょっとまて! お前たちは精霊王級の精霊だ。しかも我の娘で、創造神様の加護をいただいておる。そんなお前たちはさすがに、他の者より優遇されておるのだろう?」


 星霊王といえど、やはり自分の娘たちが一番可愛い。


 娘たちをとられたのは悲しいが、娶っていったのなら、できる限り娘たちを大切にしてほしいと思うのが親心だった。


「いえ、創造神様の御加護は──」

「ハルト様の妻全員が頂きました」

「「ですので、ハルト様の妻はみんな、同列なのです」」


「なっ!? そ、創造神様が十一人全員に加護をお与えになったのか!?」


 加護の程度もあるが、創造神の加護というのはこの世界最高の祝福だ。


 さらに星霊王がマイとメイにつけられた加護を感じた時、それは最上級の祝福が込められた加護であることがわかっていた。


 最高神の最上級の加護。


 それはひとりにつけるだけでも、膨大な神性エネルギーが必要になる。


 そんな加護を十一人分も。


「バカな……ハルトはいったい、何者なのだ」


「「私たちの、旦那様です!」」


「あぁ、うん。そうだな」


「それで」

「お父様は」

「「分身魔法をご存知なのですよね?」」


 星霊王は悩んだ。

 可愛い娘たちの願いは聞いてやりたい。


 しかし、娘たちの夜の相手をするのが分身だと聞かされてはなんとも複雑な気分になる。


 どうしようか悩んでいると──


「「お父様、お願いします」」


 マイとメイが、星霊王の服の裾を掴んできた。

 ふたりは小刻みにそれを引っ張る。


 最近は全くやってこなくなったが、ふたりが小さい頃、なにか星霊王に頼み事があるとやってくる仕草だった。


 それが、可愛くて仕方ない。


 星霊王はこの仕草をしてくるふたりの頼みを断れたことがなかった。


 そのせいで何度も妻に怒られた。


 しかし、星霊王は全く変わっていなかった。


「し、仕方ないのぅ。危険な魔法だから、気をつけて使うのだぞ?」


「「わかりました! お父様、ありがとうございます!!」」



 その後、マイとメイは分身魔法を星霊王から教えられて修得し、意気揚々と人間界へと顕現していった。


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