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星霊王

 

「「お父様、ただいまです」」


「マイとメイか。よくぞ帰った」


 ここは精霊界の中心にある精霊殿だ。


 我は精霊殿の主にして、全ての精霊たちの王──星霊王だ。


 そんな我の、可愛い娘たちが帰ってきた。



 なんだ、帰ってくるなら事前に教えてくれればいいではないか。


 マイとメイが帰ってきたことを祝って、宴でも開いたものを。


 ──っと、そんなことを勝手にすると、我が妻が()()怒るかもしれんな。


 あまり派手にはできんが、精霊界におる精霊を全て呼び集めて、ふたりを出迎えるくらいはいいじゃろう。


 だから、事前に連絡してほしかった。


 ん?


 なに?


 そんなことするな?


 そーゆーことを我がやりそうだったから、連絡せずに帰ってきた?


 そ、そうか、すまぬ。


 ……今後もするな?


 わ、わかった。

 次回帰ってくる時もやらない。


 で、でも、本当に出迎えはいらないのか?


 我がその気になれば、精霊界におるヤツらだけじゃなく、人間界におる精霊も全て呼んで、盛大にお前たちを出迎えられ──


 い、いや!

 すまん。冗談だ!


 そんなこと、絶対しない!


 だから、マイよ。

 念話で我が妻を呼ぼうとするでない!



 最近、我への娘たちの態度が冷めておる。


 昔は、我が大量の精霊たちを呼び集めてみせたら、ふたりとも『お父様、すごーい』とかって褒めてくれたのに……。


 ちなみにそれをやった時は妻に『忙しい精霊たちを無理やり呼びつけて、いったいなにを考えているのですか!!』と、めっちゃ怒られた。


 だって、娘たちにカッコいいところを見せたいじゃないか! ちょっとくらいは王の権限を使ったっていいじゃないか!!


 ──そんなことを妻に直訴したら、『王とは、なんたるか』を数日間に渡って熱弁されてしまった。


 我が妻も、もちろん精霊なので疲れを知らない。


 また、妻は元々この世界の知識を司る神様に生み出された精霊で、その知識量も凄い。


 だから妻の熱弁は、本当に一秒の休みもなく数日間続けられたのだ。


 それ以来、我は妻にはあまり逆らわないようにしておる。



 そんな妻に頭の上がらない我だが、実は結構偉い。


 この世界を治めるのは創造神様を初めとする神族だ。しかし、神々には直接人間界に手を出せないというルールがある。


 そこで我々精霊が、この世界のエネルギーの源である『マナ』を、様々なエネルギーに変換するなどの役割を担っている。


 マナは世界を動かす原動力だ。


 この世界の住人が、もっとも身近なマナの形態のひとつが魔力。


 我ら精霊が、マナを魔力というものに変換している。つまり、この世界で魔法が使えるヒトの中には必ず精霊がいるのだ。


 ヒトの中だけではない。


 マナを魔力に変換する精霊は、魔物の体内にある魔石の中や、龍脈という大地の下を流れる巨大なマナの河にも存在する。


 龍脈にいる精霊が、この世界に魔力を満たしているのだ。


 ちなみに、マナを魔力に変換する精霊に意思はない。


 そして、ヒトが魔法を使う時、魔力に火や水、風、土、雷、闇、光といった属性を与えるのだが、その魔力の属性変換も我ら精霊の役割だ。


 属性変換を行う精霊には、意思のない精霊と、マイやメイ、我のように意思のある精霊がおる。


 我らのような意思のある精霊は、稀にヒトのと契約を結び、普通ヒトが行使できないような魔法を使ってやったりもする。



 この世界は、精霊が動かしている。


 そうした精霊たち全ての王。

 それが我なのだ。


 その気になれば、龍脈を止めて世界を崩壊させられる。


 まぁ、創造神様からこの世界を任されている我が、そんなことをするはずもないが。



 結論として、なにが言いたいかというと、我ってなかなか凄いってことだ。


 だいたいなんだってできる。


 そんな我を、娘たちが頼ってきた。


「「お父様、分身魔法ってご存知ないですか?」」


 ──だと。


 もちろん知っておる。


 我は星霊王なのだから。

 この世界に存在する全ての魔法を把握している。


 知っておるのだが、娘たちがなんで分身魔法に興味を持ったのか気になった。


 分身魔法は本体の魔力を等分した自分を創り出す魔法だ。例えば10,000の魔力を持つヒトがひとりの分身を創り出せば、本体と分身の魔力量は5,000ずつとなる。


 しかしこの魔法、発動するのに5,000程度の魔力を消費するので、本体には魔力が一切残らず、魔法を発動させた瞬間に魔力切れで死ぬ。


 運良く生命エネルギーを魔力に変換するのが間に合えば、死は免れるが酷い魔力欠乏症に悩まされることだろう。


 そもそも、この世界で魔力を10,000以上保有できる者など数が限られる。


 そんなわけで、この魔法を使える者は滅多に現れないのだ。


 だからこそ、娘たちが分身魔法に興味を持った理由が気になった。



 ……あっ!


 そ、そういえば。


 我には、分身魔法を使えるかも知れない──否、確実に使えてしまうであろう者を知っていた。


 その者は我が娘マイとメイの契約者であり、星霊王である我を強制召喚するほどの魔力を持ったバケモノ。


「まさかとは思うが……お前たち、分身魔法をハルトに使わせようとは思っておらんだろうな?」


 あんなバケモノが増えるなど、想像しただけで頭が痛くなる。


 彼奴(あやつ)が訳の分からぬほどの魔力を撒き散らすせいで、精霊たちが困惑しておるのだ。


 まぁ、その撒き散らされた魔力の大半は、彼奴のそばに居る九尾狐が回収してしまうので、なんとかなっている──というのが現状だ。


「「ハルト様に分身魔法を使っていただきたいのですけど、ダメなのですか?」」


 ……マジか。


 娘たちが、バケモノに分身魔法を覚えさせるつもりのようだ。


「理由を、ハルトに分身魔法を使わせたい理由を教えてくれぬか?」


 それが納得できるものであれば、分身魔法を教えてやっても良いと思った。


 珍しく娘たちが我を頼ってくれたのだ。


 少しは、力になりたいと思ってしまった。


「「えっと、その──」」


 娘たちが顔を赤らめる。


 な、なんだその、恥じらう顔は!?


 我の前でそんな表情を見せたことなど、これまで一度もないではないか!


「「ハルト様と寝られる日を、増やしたくて……」」


 ──は?


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