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妻たちの奔走(1/9)

 

「ハルトさん、おはようございます」


 妻会議の翌日、廊下を歩いていたハルトにリファが声をかけた。


「おはよ、リファ」


「ハルトさんにお願いがあるのですが、よろしいですか?」


「お願い? あっ、アルヘイムに来いって、お義父さんに呼ばれていた件?」


 今は五月初旬。

 魔法学園は十日間のお休みの最中だ。


 リファは父親、アルヘイム(エルフの王国)の王から、休み期間に一度は顔を出せと言われていた。


「あぁ! そんなこともありましたね。ですが、それはどうでもいいのです」


「ど、どうでもいいの?」


「はい。お父様に呼ばれていたのとは別件で、私だけアルヘイムに転移させていただけませんか?」


 リファからなにかをお願いされるのは珍しい。

 ハルトは少し不思議に思った。


「リファだけ? みんなで行けばいいんじゃない?」


「みなさん忙しいみたいなので、今回は私だけでいいです」


「ふーん、そうなんだ。ちなみに、リファの用事ってなに? 俺が手伝えるなら手伝うよ」


「あっ、それは大丈夫です。ハルトさんは今日、忙しくなると思いますので、ちゃんとお屋敷にいてくださいね。色々、予定がありますから」


「えっ?」


 いつの間にか、自分の予定が組まれていたようでハルトが驚く。


「あまり時間がありませんから、アルヘイムまで転移をお願いします!」


「う、うん。わかった」


 リファに押し切られる形で、ハルトはアルヘイムまでの転移魔法陣を展開した。


「本当にひとりでいいの?」


「はい! 用が済みましたら、お呼びします。このブレスレットに向かって話しかければいいのですよね?」


「うん。それで、俺と連絡が取れるから」


 転移魔法の応用で、ハルトは家族全員に配ったブレスレットに通話機能を付与していた。


「ありがとうございます」


 リファがハルトにキスをした。


「それでは、いってまいります」

「気をつけてね」


 手を振るハルトに手を振り返しながら、リファはハルトが用意した転移魔法陣に入り、アルヘイムへと転移した。




「最近のハルトさん、私がいつキスしても平然としてますよね。私はこんなに、ドキドキしてるのに……」


 転移先のアルヘイムが見渡せる高台に着いたリファが呟いた。


 何人もの女性たちから日々キスをせがまれれば、さすがに慣れてしまうのだろう。


 それは仕方ないのかもしれないが、リファは自分だけドキドキしているのが腑に落ちなかった。


「性格を少しだけ変えられる分身魔法って、どうでしょうか? うぶなハルトさん……ちょっと、可愛いかも。そんなハルトさんと、お互いドキドキしながら一晩を──」


 リファの妄想が膨らんでいく。

 顔が綻ぶのを止められないようだ。


 少しして、彼女は軽い足取りでアルヘイムへと移動を始めた。



 ──***──


「ハルト、おはよーにゃ!」

「おはようございます。ハルトさん」


「メルディ、ルナ、おはよう」


 リファを転移させた後すぐに、今度はメルディとルナが声をかけてきた。


「ハルト、ウチらをベスティエまで転移させてほしいにゃ」

「お願いします」


「いいけど……なんで?」


「わけはまだ教えられないにゃ。それじゃあ……ダメかにゃ?」


 ズルいよ、メルディ。

 それはズルい。


 そんな顔でお願いされたら断れるわけないだろ。


「わかった。理由は聞かない。──はい、ベスティエまで繋いだよ。帰りはブレスレットで俺に呼びかけて」


 ベスティエまでの転移魔法陣を展開した。


「ありがとにゃ!」


 メルディが俺に飛びついてきた。

 そのままの勢いで、キスしてくる。


「それじゃ、いってくるにゃ」

「うん、気をつけて」


 俺から離れたメルディが転移魔法陣に入るのを見送ろうとしていたら──


「メルディさん待ってください。わ、私も、ハルトさんとキス……したいです」


 ルナはまだ俺とのキスに慣れないようだ。

 恥じらうその姿が可愛くて、こっちも少しドキドキしてしまう。


「ルナも気をつけてね。なにかあったら、すぐ俺を呼んで」


 そう言って、ルナに優しくキスをした。


「……ルナ?」


 ()()()()()()()、ルナが放心状態になる。


「はいはい。それじゃ、いってくるにゃー」


 メルディがルナの手をちょっと強引に引っ張りながら、転移魔法陣に入っていった。


「ふたりとも、いってらっしゃい」



 ──***──


 なんだか今日は、屋敷が静かだ。


 リファと、メルディ、ルナが朝イチから外出したけど、それにしたって静かすぎる。


 みんなまだ寝ているのかな?


 そんなことを考えながら、食堂に向かう。



「ハルト様、おはようございます」

「ティナ、おはよう」


 食堂には朝食の用意をしてくれているティナの姿があった。


「あれ? 今日は俺たちふたりだけなの?」


 いつもは家族全員揃ってご飯を食べるのだが、ティナが用意した朝食は俺とティナの分だけ。


「はい。みなさん、用事があるようでお出かけになりました。今日、この御屋敷にいるのはハルト様と私だけです」


 マイとメイは精霊界に帰ったらしい。


 ヨウコとリュカ、セイラ、エルミアはドラゴンの姿に戻った白亜の背に乗り、どこかに飛んでいったそうだ。


 ティナ以外の俺の妻が、全員出かけてしまった。


 出かけることの相談をなにも受けていなかったので、ちょっと寂しくなる。


 みんなを束縛したいわけじゃないから、いちいちどこに行くか報告してほしいわけじゃないけど……


 朝の挨拶くらいはしたかった。



「お待たせいたしました。朝ごはん、食べましょ?」


「うん。いただきます」


 ティナの用意してくれたご飯を食べる。

 相変わらず、すごく美味しい。


 ……そうだ。

 ティナしかいない──ではない。


 ティナとふたりっきりなんだ。


 よくよく考えると最近は妻が増えたことで、ティナとふたりっきりってのは久しぶりだった。


「……今日、俺たちふたりだけなんだよね」


「はい。その通りです」


「その、もしティナがよければ……まだ朝だけど、お風呂とか一緒に、どう?」

「入ります!!」


 ティナが即答してくれた。


「ふふふ、お留守番の役得です」


「ん? なにか言った?」


「いえ、なんでもありません」

「……そう」


 なにかティナが言っていたけど、小声で聞き取れなかった。


「ハルト様とふたりっきりのお風呂は久しぶりですね。いっぱい、イチャイチャしましょ?」


「う、うん」


 ヤバい。

 楽しみすぎて、俺のハルトがハルトしそうだ。


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