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創造神の祝福

 

 神界に自力で転移するのはダメだとはいわれなかったが、少し創造神様を怒らせてしまったようだ。


 そのせいで、セイラが聖女を辞めるのに条件を付けられてしまった。


『神が招いてもおらんのに、勝手に神界まで来てしまうようなバケモノを野放しにはできんのだ。セイラよ、儂の頼みを聞いてくれぬか?』


 どうやらセイラを、俺の監視役にしたいらしい。


 俺としては、セイラのような美女がうちに来てくれるのなら拒む気はない。


 問題はセイラがどう思っているかだ。


 俺は守護の勇者──遥人として、セイラを救ったことがある。その時にしばらく聖都に滞在したのだが、遥人が滞在している宿に毎日セイラが遊びにくるくらい仲良くなっていた。


 遥人とティナが聖都を離れる時、セイラはついてくるといって涙を流したほどだ。


 しかし次の聖女に引き継ぐことができず、結局セイラは聖都に残ることになった。


 セイラと仲良くなった遥人は、俺だ。


 転生した今は姿形が変わっているため、あのころと同じようにセイラが俺をよく思ってくれているかはわからない。


 ただ、ハルトとして二回もセイラの命を救ったし、彼女の頼みを聞いてエルミアを助けたりした。


 好かれているかはわからないけど、少なくとも嫌われていることはないと思う。


 できればうちに来てほしいけど、創造神様の頼みだから──っていうのはちょっと違う気がする。


 聖女を辞めて自由の身になるのだがら、彼女の好きなように生きてほしい。



「創造神様がバケモノと呼ばれるお方は──ハルト様、ですよね?」


『うむ』


「……わかりました」


 セイラが俺のそばまでやってきた。


「ハルト様が認めてくださるのであれば、私はハルト様のもとに嫁ぎたいです」


 俺の方を真っ直ぐ見ながら、セイラがそう言い放った。


「セイラ、君がうちにきてくれるのは嬉しい。けど……いいの? 二百年も頑張ってきた聖女の職からやっと解放されるんだ。これから自由に生きてもいいんだよ」


 創造神様が見ているのに、そのお言葉に逆らうようなことを言ってしまった。


 だけどセイラは長い間、ひとりで頑張ってきたんだ。それは百年前、彼女の仕事ぶりを見ていたから知っている。


 セイラが本当は、俺のところになど来たくないと思っているのであれば、創造神様にお願いしてセイラ以外の監視者や(かせ)を俺につけてもらおうと考えていたのだが──


「自由に生きていいのなら、私はずっとハルト様と一緒にいたいです。私は、守護の勇者様をお慕い申しておりましたから」


「……俺は、確かに守護の勇者だった。でも今は、転生して顔も変わったし──」

「姿が変わっても、ハルト様はハルト様です。それに私は、今のハルトの様の青い瞳も素敵だと思います」


 セイラが抱きついてきた。


「先程ハルト様は、私がハルト様のところにきたら嬉しい──といってくださいましたね? ということは私が望めば、私もエルノール家に入れてくださるということですよね?」


 上目遣いでそんなことを聞かれたら、そっこうで『はい』と答えてしまいそうだ。


 とりあえず、ティナを見る。

 彼女は笑顔だった。

 指でOKサインをだしてくれている。


 ほかの家族も、みんな笑顔だった。


 セイラがエルノール家に加わることに、問題はなさそうだ。


「うん。セイラ、これからよろし──」

「ちょっと待って!」


 突然、エルミアが声を上げた。


「わ、私はセイラの騎士だ! 騎士として、貴様がセイラに相応しいか見定めたい」


 そう言いながら彼女は剣を抜いて、俺にそれを向けてきた。


「……貴女と、闘えってこと?」

「そうだ!」


 えーっと……ここ、創造神様の大神殿だぞ?

 しかも今、この様子を創造神様が見てる。


 大丈夫か?


 そんなことを思っていると──


『構わぬ。面白そうじゃ。思う存分、やるがいい』


 創造神様のお許しがでてしまった。


 やるしかないか。


「じゃあ、俺が勝ったらセイラは貰っていくぞ」


「あぁ、私に勝てたらな。もし私を倒せたなら、その、なんだ……わ、私も貴様の嫁になってやる!」


「──は?」


 なんでそうなるんだ?


「わ、私は……要らないか?」


 おれが固まっていたら、なぜかエルミアが泣きそうになった。


「私は年増だし、セイラみたいに可愛くないし、ティナ様みたいに綺麗でもないし──」


「そ、そんなことないよ」


 とても魅力的なお身体です!


「でも──」


 くそっ、どうすればいいんだ!?


「ハルト様」


 セイラが顔を、俺の耳に近づけてきた。


「エルミアは私と同じ方を伴侶にしたいのです。ですが、彼女は素直じゃないのでそう言えないだけなのです。もしハルト様がよろしければ、エルミアも娶っていただけないでしょうか?」


「それって──」


「エルミアと戦って勝てば、彼女も素直になれます。ハルト様なら、彼女を傷つけずに勝てますよね?」


 なるほど……。

 セイラとセットで、エルミアももらっていけと。


 わかりました!!


「じゃあ、俺が勝ったらセイラとエルミア、お前にも、うちに来てもらうからな」


「は、はい!」


 はい──ってお前。

 勝つ気ないじゃねーか!


 まぁ、いいか。


「準備はいいか?」


 俺は魔衣を纏い、構えた。


「私はいつでもいいが……貴様、剣を使わないのか?」


 俺が武器を手にしようとしなかったので、エルミアは不思議がっていた。


「これから俺の妻になる女性に、剣を向けるわけないだろ」


「なっ!? そ、そんな言葉で、私は騙されないぞ!!」


 エルミアが顔を真っ赤にしている。

 彼女が構えた剣の先が、わかりやすくブレる。


 効果は絶大だったようだ。


「それから、『貴様』じゃなく──」


 全速力でエルミアの前まで移動した。

 この速度で移動した俺を視認できたのは、ティナとリューシンくらいだろう。


 エルミアは突然目の前に現れた俺に驚いている。


 俺は彼女の首に目掛けて、手刀を──



 首に当たる寸前で、手を止めた。

 勢いでエルミアの髪が数本切れてしまった。


「俺のことは『ハルト』って、呼んでくれ」


 エルミアが無言でその場にペタンと座り込んだ。

 驚かせすぎてしまったみたい。


「俺の勝ちで、いいよな?」


 その問いに、エルミアは無言で首を何度も縦に振っていた。


「それじゃお前は、今からエルミア=エルノールだ。よろしくな」


 そう言いながら、エルミアを立たせてあげた。


「よ、よろしくお願いします」

「うん!」


『しかと見届けた。この世界の創造主である儂が、ハルトとセイラ、そしてエルミアの婚姻が成立したことを認めよう。そして三人に、儂の祝福を──』


 おぉ! 創造神様が結婚の証人に!?

 な、なんか凄いことになった……。


 そんなことを思っていると──


「ず、ずるいです。私も、創造神様にハルトさんとの結婚を認めていただきたいです!」

「ウ、ウチもにゃ!」

「私もハルトと結婚するのー」

「「私達も祝福欲しいです!」」

「わ、私も──」

「リファは、正式にハルトと結婚式をあげておるじゃろ。ここは我らが優先じゃ」

「そんなぁ……」

「ヨウコさん、それとこれは話が別です。私だって、ハルト様との結婚を創造神様に祝福していただきたいです」


 ティナもそう思っているようだ。

 そうだな。俺もそうしてほしい。


「創造神様、みんなとの結婚も祝福していただけませんか?」


『よいよい。せっかくだ、全員まとめて祝福してやろう』


「あ、ありがとうございます!」


『少し力を出すからな。部外者はご退出願おう』


「えっ、ちょ、なん──」


 突然、リューシンだけその場から消えた。

 強制的に転移させられたのだ。

 ちなみに、イーシャはその場に残っていた。

 次の聖女だから、彼女はいいのだろうか?


 哀れ、リューシン。


『よし、ではいくぞ。ここにおる者たちの中に、ハルトとの結婚に反対の者はおらぬな? もしおれば、早急にこの場から立ち去るがよい』


 みんなの顔をみる。

 誰もここから、出ていこうとはしなかった。


『よさそうじゃの。では──』


 俺たちの周りに、優しい魔力が漂ってきた。

 それに触れると心が浄化されるようだ。


『世界の創造主が、ここに宣言する。本日、ハルト=エルノールとティナ、リファ、ルナ、ヨウコ、マイ、メイ、メルディ、白亜、リュカ、セイラ、エルミアが、契りを結ぶ。その契りは彼らを強固な絆で結びつける。いついかなる時も、その絆が他者の手によって汚されることはない。儂がその証人となり、彼らに全力の祝福を与えよう』


 創造神様の像が光り出した。

 大神殿の中が、光で満たされていった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 白亜まで…。 [一言] よく分かっていないシロが「なんで我だけのけ者なのだ」と駄々をこねる展開があれば楽しい。
[良い点] 多すぎぃ!
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