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禁術『神界転移』

 

 昨晩、俺はセイラが聖女を無事に辞められるよう、また聖都の統治者にならなくてもいいようにするため、創造神様と少し相談したいと考えていた。


 創造神様に会うため大神殿に行ったのだが、礼拝の時間以外は入ることができないらしい。


 更に悪魔のせいで神官たちがいなくなってしまったこともあり、当面の間は一般人が大神殿に入れる状況ではなかった。


 聖女交代が無事に終わって、イーシャが聖女としての仕事に慣れてくれば大神殿に入れるようになるのだが、その時にはセイラが聖都の統治者にさせられている可能性があった。


 彼女は、他人に頼られればそれに応えたくなる性格をしているので、住人たちから統治者に担ぎあげられれば、その職務を必死に果たそうとするだろう。


 自分の希望を押し殺して聖女として務めてきた彼女には、今後は好きに生きてほしいと思う。



 大神殿にある創造神様の像に祈れば、また神界に連れていってもらえると思ったのだけど、大神殿に入れないのでどうしようもなかった。


 仕方ないから転移で神界にいくことができないか、試すことにした。


 エルノール家のみんなと一緒に神界へ連れていってもらった時に一応、転移のマーキングはしたのだけど──


 そのマーキングした魔法陣の存在を、感じることができなかった。



 俺の転移魔法は、目的の場所に行くために二段階の手順が必要だ。


 まず、俺自身を人間界と精霊界の間にある空間──狭間の空間に召喚する。


 続いて、狭間の空間から転移先の地点や人にマーキングした魔法陣を目印にして再度、自分自身を召喚することで俺は転移ができるのだ。


 狭間の空間には、マイとメイの父親である星霊王に連行された時から、なぜか自由に行き来できるようになっていた。


 わざわざ狭間の空間を経由する理由だが──俺の転移魔法は実のところ、自分自身を召喚しているだけだからだ。


 転移先の魔法陣の魔力を感じて、そこに俺を召喚する。つまり魔法陣の魔力を感じられなければ、転移できない。


 そして俺の魔力感知範囲は、全力でもせいぜいひとつの国をカバーできるかどうか程度なので、本来は他国への転移なんてできない。


 例えばグレンデールにいる時、アルヘイムに設置した魔法陣の魔力は感じられないので、直接転移はできないのだ。


 それを俺は、狭間の空間を経由することで、距離を無視して転移できる方法を編み出した。


 狭間の空間は、俺たちが生活している人間界のどこにでも繋がっている。そこに距離という概念はない。


 狭間の空間に入れば、俺が設置した全ての転移魔法陣の魔力を感じられる。


 俺はそこで感じた魔法陣の魔力に向かって、自分自身を召喚しているのだ。


 最近は慣れてきたため、狭間の空間で転移先の魔法陣の魔力を探す工程が、高速かつ自動で済むようになっている。


 行き先を思い浮かべて、転移元の魔法陣に入れば、ほとんどタイムラグもなく転移先に出られるようになっていた。


 多分、俺と一緒に転移したことある人でも、狭間の空間を経由しているなんてことは分からないだろう。



 しかし、その方法の転移では神界には行けなかった。


 俺は狭間の空間で、神界にマーキングした転移魔法陣の魔力を探したが、魔力を感じられなかったんだ。


 つまり、狭間の空間と神界は繋がっていないということ。


 こうなると神界に転移するのは絶望的だった。



 ここでふと、あることを思い出した。


 創造神様が俺たちを神界に招いてくださった時、創造神様は大神殿のある部屋の扉を神界への入口にしていた。


 その時、創造神様の手が触れた扉のドアノブに、なにか文字が浮かび上がっていたのだ。


 恐らくそれは、人間界と神界を繋ぐ門を作るための文字。


 俺はその文字を覚えていた。


 絶対記憶というスキルを持つルナほどではないが、賢者である俺はかなり記憶力がよくなっている。


 文字の意味は分からないが、その形はしっかり覚えていたので、なんとなくその文字を魔力で再現してみることにした。


 文字の再現には、かなりの魔力を消費した。


 エルフ文字とも、古代ルーン文字とも異なるそれは、一文字の形を再現するだけでも十万近い魔力を消費したのだ。


 それが、十二文字あった。


 トータル百二十万という魔力を費やし、俺はなんとか自分の右手首の周りに全ての文字を再現した。


 そして、右手でドアノブに手をかける動作を行うと──


 空間に扉が現れた。


 それを開くと、その扉の向こうには真っ白な空間が広がっていた。


 俺はその扉の中へと入る。



 背後にある扉以外は全てが白い空間にいる。

 神界だ。


 神界に転移できてしまった。


 とはいえ、ここにくるのがだけが目的というわけではない。


 なんとか創造神様にお会いしたいと考えていると──


「な、なぜハルトがここにおるのだ?」


 目の前に白髪白髭のおじいさんが現れた。


「あっ、創造神様!」


 創造神様は驚いた表情をしていた。


「お主、その手の文字はもしや──」


「すみません、創造神様にどうしてもお会いしたくて……創造神様が俺たちを神界に連れてきてくださった時の方法を真似してみたら、来られちゃいました」


「来られちゃいました──って、本気で言っておるのか? 扉をくぐる時、身体はなんともなかったのか?」


「扉を? あぁ、少し痺れました」


 扉をくぐる時に、ちょっとピリってした気がする。


「神が招いていない者を拒絶するための神性魔法は発動しておるのに、その程度か……」


 えっと、やはり勝手に来たのはまずかったのだろうか?


「ステータス固定──やはり、とんでもない呪いだったのだな。この神界に至るほどの魔力と、最上位の神性魔法すら跳ね除けるバケモノを生み出すとは……あの大馬鹿者め」


 大馬鹿者ってのは、邪神様のことかな?


「あの、勝手に来てしまったのは、やはりまずかったのでしょうか?」


「まぁ、来てしまったことを咎めることはせんが、くれぐれも誰かを一緒に連れてこようとするではないぞ。お前以外の者であれば、この世界最高クラスの魔法が一瞬にしてその者の魂まで蒸発させてしまうからな」


 な、なるほど。

 安易に神界に来るのはダメだと分かった。


「き、気をつけます。では、俺ひとりであればここに来てもよいのでしょうか?」


「うむ。特別じゃぞ? できれば来る前に、ひとこと儂に語りかけてくれ。そうすればお主が来るのがわかるのでな」


「わかりました!」


 勝手に来てしまったことは怒られないようなので、俺は気を取り直して創造神様にセイラのことを相談した。


 創造神様は、俺のお願いを聞いてくださった。


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