混浴とキスと召喚
「主さまぁ! お待たせしたのじゃ!!」
バーンと勢いよく扉を開けて、ヨウコが大浴場に入ってきた。彼女は全裸だったが、自分の身体を一切隠そうとしない。
いや、お前を待ってたわけじゃないけど……
妖艶な身体であまりにも堂々とされると、思わず見とれてしまうが、なんか興奮はしない。
やっぱり、恥じらいって大事だよね?
「「失礼しまーす」」
「ふふ、私もきちゃいました」
「うぅ、ごめんなさいハルト様。みなさんにバレちゃいました……」
マイとメイ、リファの後に続いて、申し訳なさそうな表情のティナが入ってきた。
この四人は一応タオルで前を隠しているが、かなりガードが甘く、歩く時に大事な部分が見え隠れしていた。チラリズム、最高!!
どうやらティナがお風呂に入る準備をしていたところにリファたちが帰ってきて、俺と一緒に入るつもりだというのがバレて、みんながついてきてしまったようだ。
「ほら、ルナ、早く入るにゃ」
「メルディさん、やっぱり私、無理です」
「ルナ、諦めるの。はい、ドーン!」
「──きゃあ!」
メルディに手を引かれても入ってくるのを拒んでいたルナの背中を、白亜が押した。
手加減していても、ドラゴンの一撃だ。体重の軽いルナが吹き飛ばされ、勢いよく俺に向かって飛んでくる。
飛んでくるルナの勢いを風魔法で緩め、立ち上がってルナを受け止めた。
「白亜! 危ないだろ」
「ご、ごめんなさいなの」
「ちゃんとルナにも謝れよ」
「ルナ、ごめんなの」
「は、はい……私は、大丈夫、です」
ルナの声がすごく小さかった。
あれだけの勢いで吹き飛ばされたのだ。背中とかを痛めたのではないかと心配になり、お姫様抱っこしているルナを見ると──
ルナは手で、胸と股間部分を必死に隠し、顔を真っ赤にしていた。どこか痛い場所があるわけでは無さそうだ。
ルナって着痩せするタイプだったのか……
リファほど大きくはないが、柔らかそうなふたつの膨らみが、ルナの手の横から見えていた。
「ハルト、ルナが恥ずかしがっちゃうからウチが預かるにゃ」
そう言ってメルディが俺からルナを受け取った。もちろんメルディも全裸だ。ルナを抱っこする彼女が胸や下を隠せるわけがない。
少し焼けて健康そうな肌色のメルディは、そこまで大きくはないが、ハリがあって形の良い胸とお尻をしていた。
みんなが身体を洗いにいったので、俺は再び湯船に浸かった。
そういえば、ルナの裸を見たのは初めてだった。しかも全裸のルナを、全裸の俺が抱っこしてしまった。
咄嗟のことだったので、あんまり覚えてないけど、ルナの身体はすっごく柔らかかった気がする。
「失礼します」
「我は主様の右手側! 早い者勝ちじゃ」
「あっ、ヨウコさんズルい!」
身体を洗い終えたティナとヨウコ、リファがお湯に入ってきた。
ティナが俺の左手にくっついてくる。
ヨウコは右手に。
リファは出遅れたので、俺の背中にピタッと密着してきた。
「「私たちも、いいですか?」」
「空いてる所にくっつけばいいのじゃ」
「おい、なんでお前が──」
マイとメイも入ってきて、ヨウコが勝手に許可を出してしまったので、マイが俺の右斜め後ろに。メイは俺の左斜め後ろにくっついた。
五人の美少女、美女に囲まれる。
左右の腕や背中などに柔らかいものが押し付けられる。
や、柔けぇ……気持ちいい。
「し、失礼します」
「ウチも入るにゃー」
「あっ、ちょっと、熱いの……」
残りの三人も入ってきた。
お湯が少し白濁していたので、入ってしまった方が恥ずかしくないとルナは考えたようだ。
俺たちから少し離れたところで、ルナは肩までお湯に浸かっていた。
浴槽はかなり大きいので、ルナのように俺にくっつかず、伸び伸びと入るのが正解なのだと思う。
美女たちがくっついてきて嬉しくないわけではないのだけど。
「ルナ、せっかくだからみんなでくっつくにゃ」
「そーなのー!」
「あっ、いや、わ、私は……」
メルディと白亜がルナを強引に俺の方へと押しやる。
コイツら、さっきのこと反省してないよな?
白亜とメルディに注意しようとしたら、ルナが自ら進んで俺の方にやってきた。
「……ハルトさん、嫌じゃないですか?」
「くっつかれるのが? 嫌ではないよ」
むしろ最高です。
「そうですか。では──」
ルナが正面から抱きついてきた。
彼女の手が俺の首に回される。
えっ、な、なんで、いきなり!?
急に大胆になったルナの行動に驚く。
「あっ、それはズルいにゃ」
「私もくっつくのー」
「ルナさん、後で変わってくださいね」
「「私たちも正面いきたいです!」」
メルディと白亜が、ルナと同じように抱きついてきた。リファとマイ、メイとの密着度も上がった。
やべぇ、これは……やべぇ。
魔力でコントロールしてる俺のハルトが暴走しそうだった。
「ハルトさん」
すこし俺の身体から離れたルナが、トロンとした表情で俺を見つめてくる。
キスをねだられている。
「あっ、ダメですよ。最初は正妻の私です!」
ティナに腕を引かれ、ルナから引き離された。
「じゃあ、二番手はハルトさんと結婚してる私ですね」
「その次は我じゃの」
なんか、みんなとキスする流れになっていた。
「あっ、あの!」
「ん? なんじゃ?」
「ハルトさんと仲良くなったのは、クラスの中では私が一番早いです!」
普段、自分の意見を言うことが少ないルナが、ヨウコに抗議した。
「主様、それは本当かの?」
「うん。みんなと知り合うより前に、俺はルナと友達になってるよ」
ティナとリファ以外の家族に関しては正式に結婚したわけじゃないから、誰かを贔屓するとかはしないつもり。
仲良くなった順でキスするなら三番目はルナだ。
「むぅ、では我は四番目なのじゃ」
「私が五番で」
「私が六番ですね」
マイが五番目、メイが六番目になった。
「ウチ、ななばーん!」
「私は8番なの!」
サラッと言うが、俺は白亜とキスしたことはなかった。コイツ、分かって言ってるのか?
白亜は五歳くらいの少女の格好をしているが、実態は百年以上生きているドラゴンだ。
なので、問題はないはず。
……ない、よな?
「順番も決まりましたし、まずは私から──」
ティナが髪を耳にかきあげて目を閉じ、その瑞々しそうな唇を突き出してくる。
こんな至近距離で、みんなに見られながらキスするのは恥ずかしいけど──
やるしかないよね?
いつも以上にドキドキしながら、ティナにキスしようとした。
「──っ!?」
急に、身体がどこかに引っ張られる感覚があった。俺がセイラにこっそり貼り付けた魔法陣が、俺を召喚しようとしている。
つまり、セイラがピンチってことだ!
「みんな、ごめん! セイラが危ない!!」
「えっ?」
セイラは今、聖都の外に出かけているはずだ。そこで何かあったのかもしれない。
少なくとも、セイラが助けを求めているのは確かだ!
俺は急いでお湯から上がり、脱衣所へと向かう。俺が直ぐに召喚に応じなかったので、代わりに炎の騎士が召喚されて、時間稼ぎをしてくれているはずだ。
でも、聖騎士団長のエルミアがついていても、セイラが助けを求めるほどの状況に陥っているはずなので、油断はできない。
急いで服を着て、俺はセイラのもとに転移した。