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大神殿と創造神

 

 翌朝、俺たちは創造神様が祀られている大神殿までやってきた。俺がこれまでに見たことのある海神や武神の神殿よりかなり大きかった。さすが、この世界の最高神の神殿だ。


 昔はこの神殿だけがぽつんとこの地にあったらしい。いつからか神殿の周囲に人が集まり、暮らし始めて街ができ今の聖都となったので、聖都は神殿を中心とした円の形をしていた。


 大神殿の周りには既に多くの人がいた。

 これから朝の礼拝が始まる。


 大神殿に入るチャンスは一日に三度ある。


 早朝の礼拝の時間

 聖女が人々に奇蹟を与える時間

 夕方の礼拝の時間


 その中で、早朝の礼拝の時間が一番人が少ないということでやってきたのだが、どう見ても千人近い人々が集まっている。


 ここにいる全員が一斉に創造神様に祈りを捧げるとなると、俺ひとりの声なんか創造神様に気づいてもらえないんじゃないかと思う。


 まぁ、既に礼拝にやってきた人々の列に並んでしまってるので、とりあえず、やるだけやってみよう。


 大神殿の扉が開かれるのを待っていると突然、神殿の中で大量の魔力が移動したのを感じた。その数十秒後、この聖都を覆う聖結界が強化された。おそらく、セイラが創造神様から魔力をもらい、その魔力で結界を強化したのだ。


 それが聖女としてのセイラの仕事だと昔、本人から聞いたことがある。


 聖結界の強化は魔力操作的にはそこまで難しくはないが、失敗すれば聖都に住む数万人の人々を危険に晒す恐れがあるため、かなりプレッシャーがかかるのだと言っていた。


 百年経った今でも──いや、セイラは聖女になってから二百年間ずっとこれを続けている。


 とても真似できることではない。


 しばらくして、神官により大神殿の大扉が開け放たれた。神殿前の広場に集まっていた人々がゾロゾロと中に入っていく。


 俺たちが神殿内部に入った時、セイラはそこにはいなかった。なんとなく気になって、セイラの魔力を探ってみたら──


 彼女は俺たちの足元、神殿の地下にいた。

 セイラの魔力はそこから全く動かない。

 彼女の周りには聖騎士たちの魔力もない。


 何をしてるんだ?


 ちょっと気になるが、俺の魔力探知能力はそこまで優れているわけではなく、その魔力がどの方向の、どのくらいの距離にあるのかがぼんやりとわかる程度。


 魔力探知に秀でているティナは、数キロ離れていても魔力の動きから、そこにいる人が立っているのか、座っているのかなどを判別できるらしい。


 だからセイラが今何をしているのかをティナに確認してもらうこともできるのだが、なんとなくやめておいた方がいい気がした。


 地下空間にお風呂があって、そこでセイラが身を清めていたりしたら──


 魔力を見ているだけなので、覗きではないのだが、なんか道徳的にアウトな気がする。しかも自分ではなく、ティナにやらせるというのも気が引ける。


 セイラの魔力がじっと動かないので、お風呂に入っている、もしくは横になって休んでいる可能性があった。


 そんなセイラの様子を、魔力の動きだけとはいえ覗き見るのは、あまりよろしくないだろう。


 セイラのことは気になるが、今は創造神様への挨拶に集中することにした。



 ──***──


 早朝の礼拝時間が終わった。

 結論から言うと、創造神様は顕現してくださらなかった。


 まぁ、朝の礼拝にくる人は少ないとはいえ、千人くらいはいる。そこに創造神様が顕現したら大変な騒ぎになるので、逆に出てきてくれなくて良かったのかもしれない。


 とはいえ、俺のダンジョン管理計画は最初期の段階で躓いてしまった。創造神様に会えなければ、交渉しようがないのだ。


 ちょっと考えが甘かった。


 俺が会ったことのある海神と武神はすんなり姿を現してくれたから、油断してたんだ。


 海神は海底にある神殿に行ったら普通にそこにいたし、武神は神殿の炎を消したら現れるというわかりやすい基準があった。


 神の使い──神獣であるシロと、創造神様から直接ダンジョンの管理を任されていた白亜を連れてきたので、声くらいはかけてくださると思っていたのだけど……


「ハルト様、神託などはありましたか?」

「いや、なにもなかった。ティナは?」

「私もです……」


 ティナも、魔王を倒した時に少しだけ創造神様から労いの言葉を頂いたと言うが、今回は何も無かったようだ。


「我にも神託はなかった」

「私もなの」


 シロと白亜も、何もなかったという。

 目論見が外れた。


 これから、どうしようかな?


 礼拝が終わったので、人々が神殿から出ていき始める。この場に残ることはできないようなので、周りの人について神殿を出ようとした。



「そこの御方、少しよろしいか」


 灰色のローブを纏った老人が声をかけてきた。

 目元までフードを被っていて、顔がよく見えない。


「儂についてきてくだされ。お仲間も」


 優しい声だったが、なぜか老人の言葉に逆らう気になれず、俺たちはその老人についていった。


 誰? ──と問う気もおきなかった。


 大神殿の両脇には、いくつかの通路があり、老人はそのうちのひとつに入った。


 他の通路の出入口には聖騎士が立っていて、一般人が入らないように見張っているのだが、老人が進む通路には聖騎士がひとりもいない。


 俺たちが通路に入っていく姿を見た聖騎士もいるはずなのに、騒ぎになることもなかった。



 しばらく無言で歩くと、老人が壁の前で立ち止まり、まるで扉を開くような動作を行った。


 すると何も無かったはずの壁に、真っ白な扉が現れ、老人はその扉から中の空間へと入っていった。


 自然と俺たちの足が進み、気付くと全員が真っ白な空間に立っていた。



 俺は何度か来たことのある空間──神界だ。


「こ、ここは?」


 ティナが不安そうに辺りを見回す。

 リファとルナが俺の近くにきて、腕や服を掴んでいた。


「「ここって、もしかして……神界?」」


 精霊であるマイとメイはなんとなく気付いたようだ。


「左様」


 後ろから声がして、振り返ると、灰色のローブを着た老人が俺たちの入ってきた扉を閉めようとしていた。


 扉が閉められ、そこから見えていた神殿の壁が見えなくなると、その場には初めから何も無かったかのように扉が消えた。


「儂が今、顕現すると色々面倒なことになるのでな。悪いがお前たちには神界まで来てもらった」


 フードを取ると、白髪白髭の優しそうなおじいさんが笑顔を見せていた。


「久しいの、ハルト」


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