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聖都と疑惑

 

 その後、聖都からやってきた十数人の聖騎士たちが、魔人にやられた者たちを回収していった。


 俺たちもその一団について聖都に移動することになり、聖騎士たちが連れてきた馬車の一台にセイラとエルミア、シンと一緒に乗せてもらった。


 ここで改めて全員が自己紹介して、エルミアがサンクタムの聖騎士団団長だということを知った。


 いいのか? 騎士団長がそんな格好で……

 聖騎士じゃなくて、性騎士じゃないか。


 俺の対面の座席にエルミアが座ったので、非常に目のやり場に困る。


 まぁ、正面を見るふりして、その豊満な胸元をチラ見してるんだけど。


 そういえば、元の世界のネット記事に、女性は自分の胸を見ている男性の視線に気づいていると書いてあった。


 ふと、目線を上げるとエルミアと目が合った。

 彼女はどこか誇らしげな表情だった。


 まるで『この自慢の躰、見たければ好きなだけ見るといい』──と言われているようだ。


 なんか悔しくて、視線を胸から逸らす。


 胸から視線を逸らすことには成功したが、俺の視線はエルミアの美脚に釘付けになった。


 めっちゃ、綺麗だった。


 もちろんティナやリファのもすごく綺麗だよ?


 でも彼女らは普段、ロングスカートやローブを着ることが多く、外出先でこうして生脚を見る機会なんて多くない。


 そもそもこの世界では、太ももが丸見えの服装や装備で出歩く女性が少ないのだ。


 屋外でこうして生脚を拝める機会は貴重だった。だから、目を逸らせない……


 そんな俺の視線に、エルミアは絶対に気づいている。丁寧に膝を揃えて座っていた彼女が、急に脚を組み始めた。


 おっ、おぉぉぉぉ!

 い、いま、ちょっとパンツみえた!!


 やっぱ、聖騎士と言えば下着は白だよね。

 分かってるじゃな──


「ハルト様」

「──!?」


 俺の左側に座るティナが、静かに冷たい殺気を放っていた。


「ハルトさん」


 俺の右側に座るリファは笑顔だったけど、その笑顔がなぜか凄く怖い。


 額から嫌な汗が落ちてくる。


 く、くそっ!

 ほとんど──否、全部エルミアが悪いのに……


 エルミアを見ると、彼女は笑っていた。

 俺が妻から責められるこの状況を楽しんいる。


 コイツ……絶対『くっ殺』言わせてやるからな?


 頭ではエルミアが悪くないってわかってる。

 でも、心が──俺の魂が、彼女をいつか虐めろと叫んでいた。



 ──***──


 聖都に到着し、居心地の悪い馬車から降りることができた。


 聖都に入るための門の前に、聖騎士とは違った格好の兵士たちが並んで立っていた。


「聖女様、魔人に襲われたと聞きました。ご無事で、良かった」


 高そうな衣服を身に纏った、目つきの悪い男が前に出てきてセイラたちを出迎えた。


 彼の『良かった』という言葉には、どこにもセイラを思いやる気持ちが込められていないような気がした。


「イフェル公爵、わざわざお出迎えありがとうございます」


 セイラがイフェルという男に丁寧に挨拶する。

 彼は公爵で、この聖都を支配する人物だ。


 聖都を統治するのはイフェル公爵だが、セイラは人々や貴族たちからも人気があり、更に神の信託を受け取れる唯一の人物ということで、彼女の発言力はイフェル公爵も無視できないものだった。


 セイラの人気をイフェル公爵が面白く思っておらず、彼女や彼女を守る聖騎士に対して嫌味を言ってくることもあるらしい。


 そうした話を、聖都までの道中にシンが教えてくれた。


 セイラはそんなことないと否定していたが、俺がイフェル公爵のセイラへの態度を見る限り、彼女のことを良く思っていないのは間違いなさそうだった。



「聖女様、こちらの方々は?」


 イフェル公爵が、セイラと同じ馬車から降りてきた俺たちに対して興味を持ったようだ。


「私は彼らに命を救われました」


「初めまして。グレンデールの賢者、ハルト=エルノールです」


「おぉ、その若さで賢者なのですか。此度は我がサンクタムの聖女をお助けいただき、誠にありがとうございます」


 イフェル公爵が手を差し出してきたので、握手に応じた。


 ──ん?


 なんとなく彼のことが怪しく感じたので、読心術を使おうとしたのだが、なにかに阻まれ、彼の心を読むことができなかった。


 精神攻撃を防ぐ魔具でも身につけているのだろうか?


 それから、気になることがもうひとつ──


 イフェル公爵から、邪神のオーラを凄く薄めたようなものを感じたのだ。


 でもそれは、以前アルヘイム(エルフの王国)で見た悪魔の何千分の一くらいの微かなもの。


 もしかしたら、邪神にまつわるアイテムでも所持しているのかもしれない。


 そう思うことにした。


 少なくとも、イフェル公爵が邪神に連なる者である可能性はない。


 なぜなら、今、俺たちがいるここは、既に聖都の聖結界の中なのだから。


 魔人が一瞬で消滅するような結界の内部に、ヒトに扮した魔人や悪魔が入れるわけがない。



 ちなみにヨウコと白亜の周りには既に、反聖結界を張っている。聖結界の中でも問題なく行動できるようだ。


 セイラの目の前で、ヨウコは尻尾を具現化して戦った。その後、魔族であることを打ち明けたが、俺の契約魔であることを伝えたところ、聖都にヨウコを連れて入っても良いと言ってくれた。



 この世界には人族と友好関係を築く魔族がいる。ゴブリンが進化したホブゴブリン族や、オーガが進化した鬼人族がその代表だ。


 そうした魔族の中には、聖女に救いを求めてこの聖都にくる者たちもいる。


 ヒトに害をなさない魔族なのだが、聖結界は彼らを拒絶してしまう。そこで、聖都への入場を希望する魔族には『制魔の護符』という魔具が渡されるそうだ。


 制魔の護符を持っていれば、魔族であっても聖結界に弾かれることなく、聖都に入ることができる。


 その代わり魔族としての力や魔力は一時的に失われ、人族と変わらないか、それ以下の力しか出せないようになるのだ。


 セイラがヨウコと白亜に、その魔具を用意してくれると言ったが、ヨウコたちの力が制限されてしまうのは何かあった時に困るかもしれないので、予定通り俺が反聖結界を張ることにした。



「それでは、私はここで失礼します。此度は本当にありがとうございました。もし、聖都滞在中にお困り事があれば、いつでも私に声をかけてください」


 聖都の中へと入った。

 セイラが身元保証人となってくれたおかげで、すんなり入ることができた。


「分かりました。聖女様も、なにかあれば遠慮なく言ってくださいね。俺たちは一週間くらいここに滞在する予定ですので」


「はい。もしもの時は頼りにさせていただきますね」


 笑顔で手を振りながら、セイラはエルミアたち聖騎士に囲まれて去っていった。


 聖女とパイプを作ることができて、俺は満足していた。これだけでも、聖都に来た甲斐があったと言えるだろう。


 でも、メインイベントは明日だ。


 創造神様に顕現して頂いて、ベスティエ(獣人の王国)にある遺跡のダンジョンの管理を任せてもらえないか交渉するのだ。


 不安が無いかといえば嘘になる。

 でも、交渉材料は色々準備してきた。


 さぁ、人生初の神様との交渉を頑張ろう。


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