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レベル1の最強賢者 ~ 呪いで最下級魔法しか使えないけど、神の勘違いで無限の魔力を手に入れて最強に ~  作者: 木塚 麻弥
第七章 聖都と聖女と創造神

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聖女 セイラ

 

 サンクタムの大神殿。

 ここには、この世界を創成した創造神の像が祀られている。


 綺麗な銀髪を腰まで伸ばした美女が、創造神像の前で膝をつき、両手を胸の前で握りしめて一心に祈りを捧げていた。


 早朝のこの時間、大神殿に入ることができるのは彼女だけと、この聖都の法で決められている。


 彼女の名はセイラ。

 この聖都サンクタムで、ただひとりの聖女だ。


 セイラが創造神像に祈りを捧げ始めてから数分後、像から彼女にオーラのようなものが移動し始めた。


 創造神がこの聖都の住人や世界中から集めた信仰心を、聖属性の魔力としてセイラに付与しているのだ。


 到底、ひとりの人族が扱えるような規模の魔力量ではないのだが──聖女である彼女にとって、それは造作もないことだった。


「我が主よ。今日も我らを護りし力を与えてくださったこと。感謝します」


 透き通る声で神への感謝を述べたセイラは、深く一礼し、立ち上がった。


 大神殿の最奥に祀られている創造神像から、神殿の中央に設置されている巨大なクリスタルのもとまで移動し、それに手を触れる。


 するとセイラが纏っていた聖属性のオーラがクリスタルへと移動していった。それと同時に、聖都をドーム状に覆い尽くす聖結界が強化されていく。


 このクリスタルこそが、聖都を守る聖結界の発生源だった。これに毎日、聖属性の魔力を注ぎ込むことで、魔人すら拒絶する聖結界を維持しているのだ。


 セイラは聖女になったその日から、毎日欠かさず、この行為をおこなってきた。


 全ての魔力をクリスタルに注ぎ込んでしまうわけではない。残った聖属性魔力の一部を使い、セイラは救いを求める人々に奇蹟を授けてきた。


 歩けなくなった者の足を治した。

 視力を失った者に光を与えた。

 日照りの続く地域に雨を降らせた。

 街に加護を与え、魔物から護った。


 ──これらは、セイラが昨日一日のうちにおこした奇蹟だ。


 セイラに救われた者たちは彼女と、創造神への信仰心を高める。そしてその信仰心は、彼女に奇蹟を起こさせるための力となる。


 創造神への祈りと、クリスタルへの魔力補充が終わると、セイラは創造神像の後ろにある隠し階段から大神殿の地下へと降りていった。



 ──***──


 わたし、セイラといいます。

 聖女やってます。


 元々、その辺にいる町娘だったんですけど、創造神様に選ばれて聖女になっちゃいました。


 聖女になると寿命がなくなるみたいで、私は今二百歳くらいです。一応、女の子なので、詳しい年齢はヒミツってことでお願いします。


 十六歳の時に聖女になったのですけど、それから全く歳をとっていないんです。なので、本当の意味で永遠の十六歳なのです。


 聖女になった時、茶色だったわたしの髪の毛は、とても綺麗な銀色の髪へと変化しました。最初は少し戸惑いましたけど、今ではこの髪にしてくださった創造神様に凄く感謝しています。


 だって、すっごくサラサラで自分で触っていても気持ちいいんです。常にこのサラサラが保たれているので、創造神様の御加護って凄いと思います。


 ちなみに男性にはまだ一度しか触らせたことがありません。将来、わたしの伴侶となってくださるお方にだけ、このサラサラを堪能していただきたいと思います。



 さて、聖女である私のお仕事ですが、いっぱいあります。その中で最も重要なお仕事を、先ほど終わらせました。


 創造神様にお祈りしてお力を分けていただき、この聖都を守る結界に魔力を補充するお仕事です。


 たまに創造神様からの神託もあるのですが、今日は何もありませんでした。


 ですので、わたしは次のお仕事をするために、大神殿の地下にある空間へとやってきました。今頃、頭上の大神殿では一般の方々が入場されて礼拝をしていることでしょう。


 大神殿の地下空間には、とても透き通った水が湧き出る泉があります。


 わたしは、その泉の側で服を脱ぎました。


 ここには誰も居ないとはいえ、何も隠れる物がない広い空間で、しかも頭上には数百人もの人々が創造神様に祈りを捧げている──そんな空間で全裸になることに、この行為を始めてから二百年以上経った今でも恥ずかしさを覚えてしまうのです。


 ですが、これもお仕事です……

 やらないわけにはいきません。


 わたしは念入りに、身体を清めました。

 それから、ゆっくりと泉の中に入っていきます。


 泉の水はひんやりしていて、気持ちいいです。

 この泉に十分ほど、肩まで浸かるのがお仕事なんです。


 およそ十分後、泉の水がぼんやりと光り輝き始めたのを確認して、わたしは泉から出ました。


 泉の水が全て()()になったのです。


 信じられますか?

 聖水って、聖女が入った泉の水なんです。

 わたしはこのことを創造神様から聞かされた時、唖然としました。


 だって、わたしが入った泉の水をみんなが飲むんですよ?


 ただ、その効果は絶大のようで、聖水を一口飲めば大抵の病気はすぐに治りますし、体力や魔力だって全回復しちゃいます。


 ちなみに聖水は、飲まずに身体にふりかけてもほとんど同じ効果があるので、わたしは飲まない使用方法を推奨しています。


 もちろん、理由を聞かれても答えたことはありません。それから、聖水の製造方法は絶対に誰にも漏らしません。恥ずかしすぎますから。


 わたしが泉から出て神殿に戻ると、神官と侍女たちがやってきて、泉から聖水となった水を汲み上げていくのです。



 聖水を作るお仕事が終わると、今度は神殿に戻って人々に奇蹟を与えるお仕事が待っています。


 今日は百人ほどが列を成していました。

 昨日よりは少なめです。


 今日はみなさんに奇蹟をあげられるといいのですけど……


 創造神から頂いたお力で、その並んでくれている人たちの願いを叶えていきます。


 魔物に襲われて怪我を負った男性の手を治癒をしました。


 先週産まれたという女の子に名前を付け、弱いですが加護を付けてあげました。


 魔物が村の農作物を荒らすと言うので、魔物避けの護符を作って差し上げました。


 ──そんな感じで、何とか全ての人々の願いを叶えました。


 毎日、全員の願いを叶えられるわけではありません。創造神様から頂いたお力がなくなれば、それ以上は何もできないのです。


 子供に名前を付けてあげるくらいなら、いつでもできるのですけど。


 人々の願いを叶え終わった時には既に夕方でした。今日もお昼ご飯食べられませんでした。


 お腹ぺこぺこです。


 侍女が用意してくれた夕飯を食べながら、わたし宛に届いた手紙を読んでいきます。


 手紙にはわたしが直接出向かないと、どうにもならない案件が書いてあることがほとんどです。


 それらの手紙から緊急性の高そうな依頼をチェックして、外出予定を立てていくのです。



 夕食後は次代の聖女候補を育てるための訓練や講義の時間です。わたしが教師となり、聖女候補の女の子たちに聖属性の魔力の扱い方などを教えていくのです。


 この指導は夜遅くまで続けられます。


 正直かなりハードスケジュールです。

 ここ二百年、お休みしたことなんて一度もありません。聖女って、ブラック企業(?)なんです。


 わたしは創造神様の御加護で、三秒くらい瞑想すればどんな疲労も回復します。でも、さすがに限界です。


 よく二百年も耐えてきたと思います。

 そろそろ代替わりさせてほしいです。


 聖女候補を育てているのですが、彼女のたちの中から素質のある子を輩出させられなければ、わたしが聖女を続けるしかありません。


 わたしはなぜか創造神様に大変気に入っていただけているようで、なかなか代替わりさせてもらえませんでした。


 しかし、今回の聖女候補の女の子の中には、わたしが気になっている子がひとりいました。


 その子は村出身の平凡な女の子でしたが、創造神様への信仰心が強く、わたしが教えたこともしっかり吸収してくれました。


 彼女なら、わたしの後を引き継げるはずです。



 翌日、いつものように創造神様に祈りを捧げていると、神託がありました。


『セイラ、お前を任せても良い男が近々やってくる。もしお前がその男を気に入れば、聖女を辞めても良い。次の聖女はお前が指名せよ』


 ──と。


 次代を指名させていただけるのは大変恐れ多いことですが、なんとかなるでしょう。自信をもって、聖女を任せられる候補がいますから。


 気になったのは神託の前半部分です。


 創造神様が認めるほどの男性が私に会いに来てくださるのでしょうか?


 ちょっとドキドキしてしまいます。


 ただ、私には心に決めた男性が……


 その御方にはもう絶対に会えないと分かっています。彼はもう、この世界に居ないのですから。


 でも、わたしは彼のことを忘れられませんでした。ですから、近々ここに来るというその男性と一緒になるということが聖女を辞める条件であるなら、わたしは聖女を続けるしかありません。



 はぁ……お仕事(聖女)辞めたい。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かった。 せ、聖女ってブラックだったんだ。
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