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レベル1の最強賢者 ~ 呪いで最下級魔法しか使えないけど、神の勘違いで無限の魔力を手に入れて最強に ~  作者: 木塚 麻弥
第六章 それぞれの過去

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遥人と四人の勇者(7/7)

 

 勇者タカトと戦ってから二ヶ月が過ぎた。『俺』とティナのふたりは、各地でより一層激しくなってきたスタンピードから村や街、あるいは国を守るために飛び回っていた。


 魔王討伐の方はタカトたちに任せている。魔王は魔大陸にいて、そこにいる魔王軍の数を減らし、更に幹部を潰していくのがタカトたちの役割だ。


 魔王軍は末端まで含めると百万体ほどの魔物がいる。レベル300のタカトと、スキルを使用すればそれ以上のステータスになる『俺』がいたとしても、一気に殲滅することは難しいだろう。


 その状態で俺たち六人が魔大陸に突撃していくと、魔大陸から逃げ出した魔物が近くのヒトの国に流れて、そこで暴れる恐れがあった。


 だからまずは魔王軍の戦力を削りながら、逃げ出して流れてきた魔物は『俺』とティナが倒すという形でやっているのだ。


 ちなみにタカトは大人しくなっていた。『俺』を見る度に『ひぃ』と毎回悲鳴を上げている。ちょっと失礼じゃないか?


 顔面を一発殴っただけだったのだが、あの時のタカトの姿は少しヤバかった。死んでないのが不思議なくらい顔が陥没し、吹っ飛んだ勢いで手足があらん方向に折り曲がっていた。


 あまりのボロボロな姿に思わず、殴った当の本人である『俺』が真っ先に回復魔法をかけ始めてしまったくらいだ。その後、聖女のユリとティナにも協力してもらい、なんとかタカトの命をつなぎ止めた。


 勇者が勇者を殺すわけにはいかない。そして、意識を取り戻したタカトは『俺』を見るなり震えながら土下座してきた。


 タカトがこの世界に来て、初めて受けたダメージがアレだったらしい。多分、かなりの恐怖を植え付けたんじゃないだろうか。


 ちなみにタカトたちに守護者(スキル)のことは説明していなかった。だから守るべき者が後ろにいなければ、『俺』は強くなれないということを知らないのだ。


 まぁ、タカトを調子づかせないためにも、最後まで内緒にしておこうと思う。


 そしてタカトには『なんでもする、だから殺さないでくれ!』──と懇願された。


 お前を回復させたの『俺』なんだから、殺すわけないだろ。


 そんなことを思ったが、言うことを聞いてくれるというので、魔大陸の戦力を削ってもらうことにした。


 魔王を倒したとしても、それまでに多くの人々が魔大陸から逃げだした魔物に殺されたら意味が無いからな。


 それから『俺』がタカトたちと別行動する理由がもうひとつ。それは──


「ん……ハルト様、おはようございます」

「ティナ、おはよ」


 俺の横で眠っていたティナが目を覚ました。


「ハルト様」


 ティナが目を瞑り、唇を軽く突き出してくる。『俺』は、その唇にそっと触れた。


 もう何度目か分からないほどティナとキスしてきたのだが、それでもキスした後は互いに顔が真っ赤になる。


 『俺』はティナと恋人になった。


 タカトを吹き飛ばした日の夜、ティナに想いを告げたんだ。


 ティナはそれを受け入れてくれた。


 タカトとの会話で、ティナは『俺』のことを好きだと言ってくれた。だから既にティナの答えを聞いていた様なものだったので、ズルいかもしれない。


 それでも、告白する時は心臓が爆発するかと思うくらい緊張した。無事にティナと恋人になれて本当に嬉しかった。


 ティナとつき合い始めて二ヶ月経つが、手を繋いで歩いたり、寝る前と起きた時にキスをする以上の関係に発展していない。


 ()()()()()()をするのは魔王を倒して世界を平和にしてからと、ふたりで決めていた。


 ティナとふたりっきりの時間を邪魔されたくないというのもあって『俺』とティナは、タカトたちと別行動をしている。


 もちろん魔物の討伐をサボってる訳じゃない。ティナとゆっくり出来るのなんて寝る時と食事の時、移動の時間くらいだ。


 ティナはひとりで魔人を倒せるくらいになっていたので、戦闘の際『俺』とティナはほとんど別行動だ。その方が多くの人を救えるから。


 スタンピードの規模が大きく、およそ二日間ティナに会えないこともあった。


 凄く寂しかった。


 でもそれはティナも同じだったようで、無事に国を救った後、その国が提供してくれた高級宿で一日中ティナと抱きしめ合った。



 魔大陸で魔王軍を相手しているタカトたちの方も順調のようだ。定期的にタカトから連絡が入るのだが、彼らは魔王軍幹部の四天王である上位魔人のうち、三体を既に倒していた。


 チート級スキル保持者が四人いて、うちひとりはレベルカンストの勇者。


 百万体の魔物が蠢く魔大陸と言えど、全く問題になっていなかった。むしろ逃げ回る上位魔人を追いかけて倒すのに時間がかかっているとタカトからの報告を受けて、『俺』は乾いた笑いしか出なかった。


 このペースでいけば、魔王討伐まであと一ヶ月くらいだろう。


 そういえば魔王を倒した後、『俺』はこの世界にどのくらい残れるのだろうか?


 少し不安になった。


 まぁ、神様のお願いを聞いて世界を平和にしたんだから、多少の要望は聞いてくれるはず──そう思っていた。



 ──***──


 それから一ヶ月。


 ついに魔王城に来てしまった。スタンピードが落ち着いてきたので、タカトたち魔王討伐隊に『俺』とティナも合流したのだ。


 魔王城に来たというか、既に魔王が目の前にいる。魔王城の中にいた魔物は殲滅し、残す敵は魔王のみ。


 諸悪の根源である魔王を倒せば、世界は平和になる。そして『俺』たちの旅も終わりだ。


「ティナ、魔王を倒したら伝えたいことがある」


 魔王に神様からもらった刀を向けながら、隣にいるティナに話しかけた。


 普通だったら敗北フラグなのだが、目の前の魔王は泣きそうな表情で俺たちを睨んでいる。


 魔王の側近だと自称し『俺』たちに突撃してきた魔人を、タカトが一刀のもとに斬り伏せたので魔王も戦力差に気付いたようだ。


 ほぼイジメ。

 まず負けることはありえない。


「……はい」


 ティナが頬を紅潮させる。俺が何を言いたいのか予想できたようだ。そして、多分その予想は正しい。


 『俺』の服のポケットには、ティナに渡すための指輪が入っていた。


 魔王を倒したら『俺』はこの世界に残る。

 そして、ティナと結婚する。


 ──そうするつもりでいたのだ。



「ハルト、もう魔王倒していいか?」


 タカトが聞いてきた。


「あぁ、頼む」


 そう言った瞬間、タカトの表情がいやらしく歪んだのだが『俺』はその真意に気付けなかった。


「やぁ、魔王。はじめまして」

「ひ、ひぃ、やめろ! く、くるなぁぁあ!」


 タカトが一歩踏み出したかと思うと、その姿が消えた。


「そして、さよなら」


 一瞬のうちに魔王の前まで移動したタカトが、その手に持つ剣で魔王の首を斬り飛ばした。


 首を失った魔王の身体がゆっくりと床に崩れ落ちる。そして、黒いモヤとなって魔王の身体が消えていった。


 第二形態とかはないらしい。


 ──終わった。

 呆気ない。まぁ、こんなもんか。


 俺は刀を鞘に戻し、ティナを見る。


「ティナ、終わったよ」

「ハルト様!? そ、それは──」


 ティナが驚愕の表情で俺の身体を見ていた。


「──えっ!?」


 俺の身体が、まるで花が散るようにバラバラに崩れていた。


「ぎゃははは」


 タカトが汚い笑い声を上げる。そのタカトの身体も崩れ始めている。


 な、なんなんだこれは!?


「ティナ!」


 慌ててティナに触れようと手を伸ばそうとするが──俺の手は既に消えていた。


「そ、そんな、なんで……」


 崩れていく『俺』を見て、ティナの目から涙が溢れ出す。



 タカトが悪意に満ちた笑顔で叫んだ。


「さぁ、俺たちと一緒に元の世界に帰ろうぜぇ! ハルトォ!!」


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