邪神の暗躍
とある世界の神々が暮らす神界。
その最果ての神殿で、邪神が頭を抱えていた。
「創造神が異世界人を勇者として連れてきて、俺が育てた魔王を倒すのがウザい」
そう呟く邪神から重苦しい負のオーラが溢れ出す。
「転移や転生でこちらの世界にきた異世界人たちは勇者や賢者、聖騎士といった特殊な職になって、邪神様が用意した悪魔も魔王も簡単に倒してしまいますからね」
邪神の側に控える少女が答えた。
彼女は神々に仕える式神という存在。
邪神は創造神が治める世界に恐怖や絶望といった負のエネルギーが貯まるとそれを回収し、自らの糧としていた。
「もう俺が勇者を殺ろうかと何度考えたことか」
「神々が直接ヒトに手を出すのは創造神様がキツく禁じてますから、邪神様でもそれをやったらさすがにヤバいと思いますよ」
「そうなんだよな」
「邪神様が創造神様より先に勇者を転生させてしまうのはどうでしょうか?」
「……そんなこと可能なのか?」
「無条件で勇者を転生や転移させられるのは創造神様だけですが、邪神様でも一定の条件下であれば異世界の者をこちらに勇者として連れてくることができるはずです」
「ほう。しかし俺が勇者を転生させるメリットは?」
「こちらの世界に転生させる時、その者の魂に呪いをかければ良いのですよ。勇者として活躍できなくなるような呪いを」
「なるほど。使えない勇者をわざと作るわけだな」
「えぇ、その通りです。勇者を連れてくるにはこの神界からかなりの神性エネルギーを使います。無駄な転生で神性エネルギーを使ってしまうことは創造神様への妨害になるかと」
「それはいい! あのジジイにやられてばかりでは腹が立つからな。やってしまおう。準備を頼めるか?」
「畏まりました」
邪神はその後、異世界の青年の運命に干渉して彼の命を奪い、この世界に青年を転生させることとなる。