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クラウンフィールド・ソベルバレンタインです。
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「……先輩、そろそろ起きてくださいよ」
遠い意識の中かすかに、後輩「霧ヶ峰」の声が聞こえる。
自分の記憶が正しければ、まぜそばを食べている最中電流が走り気絶していたのだが。
ついに意識が戻ったのであろうか。
目を開けてみると、視界に後輩の蔑むような眼が視界に入った。
「先輩、そろそろ足がしびれてしまうので起きてほしいのですが」
「え?あっ!申し訳ない」
無意識のうちに後輩の膝枕で寝ていたらしい。
「ここはどこだい?」
眼前にはお湯が沸いているやかんとその下にあるストーブ、そしてボロボロのベンチが見えた。どうやらここは、駅舎のようだ。一日に3本しかない列車の時刻が書かれている時刻表がある。改札の隣にはさび付いたシャッターにより閉ざされた窓口のようなものがある。ここは無人駅になってしまった駅なのであろう。
「ここは……そうですね、わかりやすい表現で言えば異世界に通じる列車へ乗車するための駅です」
「は?」
後輩が言っている内容が自分には理解できなかった。
異世界に通じる列車ってなんなんだ?
「それは、私の口から言うことはできません。しかし、先輩が元居た世界とは違う世界に行くことになっています。あなたの制服の内ポケットには切符が入っているでしょう?」
後輩の言う通り制服の内ポケットには乗車券が入っていた。本当に異世界に行くことになっているらしい。
「なんでまた僕なんかが異世界に?」
「あなたが必要だからです」
「僕が必要だ?」
全く意味が分からない。なぜ僕が必要なんだ。僕の代わりなんていくらでもいるのではないか。僕は、どこにでもいるようなごく普通の一般男子の高校生だ。
「とにかく行けばわかります。私についてきてください」
「そうか」
霧ヶ峰についていくと0番線と書かれたプラットホームへ連れていかれた。
空には真っ白な雲がどんよりと広がっていて青空は見えない。雲量10といったところだ。
ここはターミナル駅のようなのでこの駅でレールは途絶えている。
周囲は山に囲まれていて、駅を出るとすぐにトンネルに入るといった構造になっている。
「あとどれくらいで列車が来るんだ?」
「もうすぐきますよ」
するとトンネルの中から赤いディーゼル機関車が見えてきた。
4両編成のブドウ色の客車はホームに停車した。すると、ディーゼル機関車は客車と切り離し、機回し線に入り列車の先頭に機関車を付け替えた。
「乗りますよ」
後輩は、客車の扉を開けて車内に乗り込んだ。
「あ、この客車自動扉じゃないのか」
旧型客車の本来の運用をしている本当に昔ながらの列車だ。走行中にも扉を開けられるまさに旧型客車というものだ。
青色のモケットが張られたボックスシートが整然と並んだ車内。霧ヶ峰は、真ん中あたりの席におもむろに腰かけたので自分は向かい合わせの席に座った。
「もう少し段階を踏もうとは思っていたのですがいきなりになってしまいました。すみません」
霧ヶ峰は、申し訳なさそうな顔をする。
「いや、別に……事情があるんだろう」
こっちにはいろいろ聞きたいことがある。こいつの機嫌を損ねると話ができなくなってしまう可能性があるので慎重にいかなければならない。
機関車が汽笛を鳴らすと列車はガチャリと音を立てて動き出した。
そのころ、桜柳たちは王座奪還の準備をしていた。




