隠れ家のメイドたち
それは、隠れ家を留守中にしているときの出来事であった。
「ご主人様がいなくなるとちょっと寂しいですね」
桜柳咲蘭が見えなくなるまで深々とお辞儀をしていたペンシルがロイドに言った。
「そうですね。ご主人様がいない生活なんて考えてもみませんでしたから。半日でもご主人様がいないというものは恐怖といいましょうか、なんだか心が落ち着きませんね」
ロイドは人間と同等もしくは、そこらの無感情な人間よりも感情があるのかもしれない。
「そういえばロイドって趣味とかあるんですか?」
「趣味ですか……。そうですね、ご主人様をずっと眺めていることでしょうか」
「左様でございますか」
ご主人様は、ロイドを作るときどのようなことを考えていたのかと疑問を抱き苦虫を噛み潰したような表情をするペンシル。
「私がこの屋敷に来る前によくやっていたんですけどね…」
ペンシルはおもむろにメイド服のスカートのポケットから金色のカギを取り出した。
「なんですかそれ?」
「この鍵は私がご主人様のメイドになるときにまとめた荷物を入れるために使ったトランクのカギです」
ペンシルの自室からトランクを取り出しカギを開けるペンシル。
するとそのトランクの中から将棋盤を取り出した。
「なんですかそれ。ゲームみたいに見えますけど」
「これは、私が鉄道会社に勤務していた時にとあるお客さんからいただいたもので、将棋というんですよ」
「しょうぎ……どうやって遊ぶんですか?」
「ルールに従って相手の王を取るんです」
するとペンシルは紙と万年筆とインクが入っている瓶を取り出してルールをロイドに説明した。
「なるほど!それは面白そうですね」
「ただですね、ただの勝負じゃつまらないじゃないですか。なので何かを賭けましょうよ」
「そうですね。それでは、負けたほうが相手の言うことを聞くというのはどうでしょうか」
「おもしろそうですね」
そして、ペンシルとロイドは将棋の勝負を始めた。
「むむむむむ、その手を使ってくるとは」
「相手の駒を取ってそれを戦力にする。それを使いこなせばなかなか楽しいですね」
「まるでどこかの王みたいですね」
「あんな低俗な存在と同等にしないでいただきたい」
二人の間から熱意のようなものを感じるようになってきた。
「そうだ、こいつを取れば!」
ペンシルその一手が引き金となり、戦況が逆転することになった。
「むむむむむむむむむむ、参りました。ペンシルさん」
「それじゃあ、ロイドさん。ご主人様が喜びそうな服を作ってそれを着て下さい」
「さすがはペンシルさんです。常にご主人様が喜びそうなことを考えているんですね」
「それはもちろんです。私の心と体はあの日からご主人様のものですから」
ペンシルは将棋盤をトランクにしまうと、小さな紙がトランクに挟まっているのを見かけそれを手に取って見るとハッと驚いた顔をしたと思ったら髪を握りつぶしてポケットにしまったのであった。
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