ミツマタの能力
――まもなく、終点です。
桜柳を乗せた列車は終点へ到着した。15両で出来た列車であったが降車する人の数は数えられるくらいしかいない。数えるくらいの乗客の表情は皆薄暗く、死んでいるような眼をしていた。改札に向かっているとそこは石畳の道路にレンガ造りの建物が立ち並んでいた。
「ここは、いったい……」
俺は日本とハワイにしかいたことがなかったので、このような光景を見たのは初めてだったので、驚きを隠せずにいた。そして驚いたのはこれだけではない。今まで俺がいた世界では架空の存在であったエルフがいたり、今じゃ考えられないような着物を着ている人たちが歩いている。
「まるで俺が読み漁っていた小説家になろうによくある世界観だな」
ため息つきながら言ったすぐに、桜柳はハワイで読んだ異世界転生物の本によくあるパターン、異世界で王になって無双するという手段を思いついたのであった。
「とりあえずその辺を歩いている人に王が誰なのかを聞いてみるか。そいつの立場を乗っ取っちまえばこの世界は俺のもんだ」
しかし、その辺を歩いている人はどうも貧しそうな雰囲気が漂っている。その理由は何なのだろうか。
そうこう考えながら、大通りの裏の裏路地に座って居眠りをしている、ぼろぼろの布切れのようなみすぼらしい服を着て、裸足で、ざっくばらんに切れた紫髪の長髪の少女に声をかけた。
「もしもし、僕は桜柳咲蘭というんだけど、君の名前を聞いてもいいかな?」
「私はルーム……」
ルームは地面を向いたまま答えたので、顔を見ることができなかった。
「ルームさん、どうして君は下を向いているの?」
「顔を……見せたく……ないからです……」
俺が言っても、ルームは顔を見せたくないと言い続けた。
「僕は、どんな顔であろうが馬鹿にしたりはしないさ」
「そんなことはない……私はいろいろな人から馬鹿にされて……」
ルームは泣き出してしまった。自分がしてしまったことを後悔しているのだが、後悔だけではルームを救うことができない……
――なにかできることはないのか
そう考えていると、先ほどまでいたペンシルが現れた。
「ご主人様、到着が遅れて申し訳ありません。ご主人様についていきますといったのにもかかわらず……」
黒を基調としたメイド服に身を包み、ホワイトブリムをかぶって、優雅な足取りで歩くペンシル。駅に着いた瞬間に辞めて、俺のところまで来てくれたらしい。
――そうだ、ペンシルなら何かこの子を笑顔にさせてあげられることはできないだろうか。
「ペンシル、さっそく君に相談したいことがあるんだ。この子は顔に強いコンプレックスを抱いていて泣いているんだ。なにかこの状況を打開できる名案はないかな……」
するとペンシルはきょとんとした顔で言った。
「ご主人様、あなたにはミツマタがあるじゃないですか。そのミツマタを1グラムほど使えば、彼女をあなたが思うような姿にすることができますよ」
なんてことだ、たかだか1万円札のミツマタにこんな力があるなんて……
早速、ミツマタを使いルームの姿を絶世の美少女のような姿にした。
するとルームは、
「うっ、うっ、私がこの姿に戻ることができるなんて……実は私、5年くらい前に両親を亡くし、街をさまよって新しい仕事を見つけたのですが、運悪くその雇い主は暴力を趣味とする人で、私のことを暴行しつづけ、このような姿になってしまったのです」
「それはつらかったね。元の姿って言ってたけど、もしかしてこの姿が元の姿なのか?俺は頭のなかでお前の雰囲気に合うような姿を想像してこの姿にさせたんだけど」
「まちがえなく、5年前の私の姿です。私、桜柳様のような方に出合わなければ……一生立ち直れませんでした。」
「俺のミツマタってこんなことができるのか」
自分がしたことで少女を助けることができた。俺は人の役に立つことは嫌いではないのでとてもうれしかった。
「もし桜柳様がよければ……私、桜柳様に一生ついていきたい……の……ですが……」
「そうな、隣にいるペンシルは僕のメイドなんだ。君もメイドになってくれるかな?」
「はい!なりたいです。桜柳様のメイドになれるなんて……私もううれしくて仕方がありません……」
「そういえばペンシル、ミツマタってほかに何に使えるんだ?」
「こんなことができるというより……ミツマタを使ってできないことを探すほうが難しいんです」
「な、なんだって!」
ミツマタを所持している俺は、何でもできる。
つまり、
「この世界の王になることもできる!!!!!!!!!!!!」
無限の強さを手に入れた桜柳の今後にご期待ください!




