思い出に残る一日
斗賀野モールからの帰り道、オレと夏希は全く真逆のテンションだった。
「ふー、なんかどっと疲れた……」
「薫、意外と何でも似合うから楽しかったわ!」
「オレは活力持ってかれた気分だよ……」
何度も着せ替えられたが、最終的な服装はフリルの付いたトップスとショートパンツ。
足のスースーする感じはどうにも慣れないけど、スカートを履くよりは断然ましだ。
「にしても、薫は身長低いわりにスリム体型よねー」
「んー、そうなの?」
「そうね、そのくらいの身長は幼児体型というか、ふっくらしてる人が多いわね」
「ふーん、ちょっと肉つけた方がいいのかな」
「いや、別に痩せてるのは悪くない事だし別にいいんじゃない?……痩せすぎはよくないけど」
なんだ、いいのか。
もしかして、オレってガリガリなの?とか思ったが、安心した。
「今日はごめんねー、薫。なんか無理矢理連れ回しちゃって」
「いや、なんだかんだで楽しかったし、別にいいよ」
「そう?……ならよかったけど」
これは、オレの心からの本音だった。
オレの服装ってワンパターンになりがちだから、新鮮な体験ができたし、服の組み合わせなんかは、かなり勉強になった。
「だから、ありがとな」
「何がだからか分からないけど、どういたしまして。……と、私の家着いたけど上がってく?」
「いや、今日はもう帰るよ」
「オーケー。じゃあね」
「じゃあな!」
○
家に帰って、リビングに行くと岳が座ったまま寝ていた。
「……えいっ」
「んむ?……すー……」
一瞬起きたかと思ったけど、ただの反射反応みたいだ。
……あれ?もしかして、ほっぺたにちゅーくらいなら出来るんじゃ……って、いやいや、流石に……ねぇ?
でも、やっぱりやってみたい……。
えーい!どうせ寝てるんだしやってしまおう、もうこうなったらやるしかない!
「ん、んー……ちゅっ」
「……ん、……すー……すー」
うわー!と心の中で絶叫しながらオレは部屋に逃げ込んだ。
「うわー、やっちまったー、うわー!」
思い出して更に恥ずかしくなる。
「くあーー……!」
オレは、起きた岳が晩御飯に呼びに来るまで、部屋のベッドでジタバタしているのだった。