オレの生活の始まり―3
お風呂から上がり、オレはあることに気付いた。
「あっ、服忘れた。……取りに行くか」
お風呂上がりなので何も服を着ていないのだが、まあいいやと思って、下着だけを着てカーテンを開けた。
「……あ?」
カーテンを開けると、なんか間抜けな声が聞こえた。
見てみると、目を伏せながら何故か顔を赤くした岳が立っていた。
「お、お前、なんて格好で」
「へっ?」
そう言われて、自分の格好を見てみる。
Tシャツ、半ズボンたがこれのなにがおかしいのだろうか。
そういえば、シャツが透けてる。
そう、透けて――
「なあっ!?」
オレは風呂上がりだ。
つまり、オレは下着はパンツ以外着けて無いわけで、要するに、見られたわけで。
「岳……」
「ま、まて薫、落ち着け話を聞け。な?「忘れろおぉ!」ちょ、うぐっ!」
取り敢えず、岳を殴って自分の部屋に逃げ込む。
にしても、力もかなり落ちてるな、これは。
「……はあ」
顔が熱い。
ちょっと見られたくらいで恥ずかしい。
なんか、女子に染まっちゃってるなあと思った。
「服、着替えるか」
タンスの一番上を開けると、そこには女物の下着がびっしりと詰まっていた。
「うえ!?なんだこれ!……ん?」
その上に一枚の手紙のようなものが置かれていた。
手紙には、
買っておきました。by母
と書かれていた。
「母さんが買ってたのか……」
取り敢えず下着と服を着て部屋を出ることにした。
ちなみに、クローゼットの中も女物の服に入れ替えられていた。
○
リビングに行くと、岳がソファーに座っていた。
「岳」
「……」
「おーい、岳」
「…………」
「おい!」
肩を掴んで揺すってみる。
「うわ、……ああ、薫か」
「お前、呼んでるんだから返事しろよな」
「あー、すまん。ちょっと考え事を、な」
「なんか、悩み事か?」
「……いや、たいした事じゃないんだ」
「まあいいや。それよりさ――」
考え事ってのも気になるけど、今はそれ以上に気になることがある。
「岳から家にくるなんて珍しいな。なんかあったのか?」
「なんだ、おばさんかおじさんから聞いていないのか?」
「いや、何にも聞いてないけど」
「……そうか。説明するとだな――」
岳の説明はこうだ
母さん達は、オレが夏休みの間、旅行に行くので家に誰もいなくなるということ。
母さん達がいなくなると家にいるのは、オレだけなので、母さん達の代わりとして岳が来ていること。
要点をまとめると、こんなところだろう。
岳が呼ばれた理由は、ひとつはオレが料理が、からっきしで、岳は料理上手だから。
もうひとつは、やはりオレと仲が良いからだ。
「岳が来てる理由はわかったけど、いいのか?
岳の家からオレの家って遠いだろ」
「いや、俺は泊まり込みだぞ」
「……まじか」
「ああ」
泊まり込みなら安心、なのか?
「いや、泊まり込みって大丈夫なのか?家とか」
「俺の親からは許可をもらってる。というか薫の父さんに泊まり込みで頼むって言われた」
「ええ……」
何やってんだよ父さん……。
まあ、泊まることに問題は無いし、別にいいけど。
「でも、部屋はどうすんの?」
「空き部屋がひとつあるらしいから、そこを使わせてもらうよ」
「だったら大丈夫だな。まあ、夏休みの間よろしくな!」
「ああ、よろしく」
ガシッと握手する。
「岳。手、痛いっ」
「え?す、すまん」
こんな感じで、オレの新たな生活が始まる。
オレはこの時、これからの生活で起きることなどなにも考えていなかった。