オレの生活の始まり―2
今、オレは身体検査中である。
「……」
オレは無言で、身長計に足を乗せる。
確か、男の時に最後に測ったときは、158センチだったはずだ。
「……」
両足を乗せて、背筋を伸ばす。
頭の上にポン、と身長計の板が乗せられる。
「……えっと、148センチですね」
「…………うへええぇぇ」
ひゃ、148センチ……!
10センチも縮んでるじゃん……。
○
その後の体重やら視力やらは特に問題なく終わった。
そして予定通りに検査後はすぐに退院の手続きをして退院することになった。
オレは病院の人たちに一通りの挨拶を済ませた。
ちなみに岳たちはオレの検査が終わると、すぐに家に帰って行った。
「……あ、そう言えば、あの看護師さんにも挨拶しとかないとな」
と、戻ろうとした時だった。
「おっとっと」
「おわっ!」
誰かとぶつかった。というか探してた看護師さんだった。
「あら?夏希たち、もう帰っちゃた?」
「えっ?」
夏希、しかもしれっと呼び捨てで彼女は言った。
「看護師さん夏希のこと知ってるんですか?」
「いや、知ってるも何も私あの子の母親よ?」
「…………はっ、はい?」
ワオ、衝撃の事実!
「え、で、でも夏希、一度もそんなこと……」
「あちゃー……、やっぱり言ってなかったか。でも、夏希からきいてるわよね?母親は看護師やっているって」
「は、はい」
「それ、私のことよ。新垣 夏実、それが私の名前」
た、確かによく見たら顔とか似てる……。
「どーりでどこかで見たことある訳だよ……」
「夏希ったら、なんで私に挨拶しないのか」
「ふふ、多分恥ずかしいんじゃないですか?」
「うーん、そうなのかねぇ」
まあ、なんというか意外な出会いではあったが、ちゃんと挨拶出来たから良かった。
「じゃあ、オレは帰ります」
「ん、じゃあねー薫君」
○
看護師さんこと、夏実さんに挨拶してオレは家に帰った。
「ただいまー」
…………返事なし。
どうやら両親そろってお出掛け中のようだ。
「……帰って来て誰もいないのは寂しい感じがあるなあ」
「とりあえず、お風呂入るか」
――風呂場の脱衣場、服を脱いで自分の姿を鏡に映してみる。
まずは入院中に伸びた髪。
邪魔だったので夏実さんに後ろで纏めて貰ったのだが、これが予想外にマッチしていた。
そして前と比べて、少しくりっとした瞳。
さらに、大きくはないが僅かに膨らみのある胸。
そして鏡の前のオレを見て再確認する。
「どう見ても女の子だな、うん」