文化祭の準備―2
運営方法が決まり、俺達は一週間後の文化祭に向けて準備を始めた。
材料等で掛かるお金は全て学校で負担して貰えるらしい。
どうも、去年の文化祭等の行事にお金を掛けなさすぎたせいで、かなり資金があるらしい。
「何故俺が店長役なんかしなきゃいけないんだ……」
「まあ仕方ないんじゃない?他に料理が出来て人に教えれる人なんかいないでしょ?」
「いや、誰か女子とか……」
「それは無理ね。だって私達皆メイドさんやるし」
ああ……そうか、めんどくさい。
……実は、男子がメイド喫茶ばっかりだったのは、わがクラスのオタク代表の、愛称オタク君がSNSでクラスの男子に協力を煽っていたからだ。
そのオタク君が設定にもこだわったせいで、俺が店長何てものをやらされるハメになった。
「めっちゃめんどくさいって顔してんなー」
「おっ、薫。服の採寸終わったのか」
今、女子は服の採寸をしている。
女子の採寸が終わり次第、装飾作りや机の並べ替えの始める。
料理に関しては他のところでも使わないと言うことで調理実習室を借りられた。
そしてその隣の使われていない空き教室に、テーブル代わりの机を並べる。
俺は女子が採寸している間、さっきまで他の男子に料理のレシピを教えていた。
「思ったより男子の理解力がよくて助かったな」
「えっ、もう教え終わったのか?」
「ああ、だから夏希と話してたんだ」
いや、あんなに覚えるのが早いとは思わなかった。
この感じなら、俺が変に苦労することも無さそうだ。
「あとは集客率だがな……」
「初日は凄そうだけど、二日目は大丈夫だろ」
「でも、俺と薫の担当って初日だぞ?」
「えっ!まじで?」
そう言って、薫がシフト表に目を通した。
こいつ……、授業中の話聞いてなかったのか。
「あ、あった。えー……まじか」
「薫、あんた先生の話聞いてなかったの?」
「オレ、多分寝てた。その時……」
下向いてたからメモでも取っているのかと思っていたのだが、あれは寝てたのか。
まあよく考えたら、薫がメモなんかわざわざ取らないか。
……感心してた俺の気持ちを返せ!
○
うちの高校では基本的に文化祭の準備期間中は授業がなく、準備が終わり次第すぐに下校となる。
「準備も今日の分は終わったし、帰るか?」
「そうね、そうしましょ」
「あ、オレも帰るからちょっとまってて!」
「ああ、わかった」
薫は自分の荷物を取りに行った。
俺と夏希はすぐ帰れるように、先に荷物を持ってきているが、薫は教室に置いたままだったらしい。
「……ねえ、岳。ちょうどいいから聞くけどさ」
「なんだ?」
「あんたって薫のこと好きなのよね?」
「え……!いや、まあそうだが……」
急に何を言うかと思ったら、本当に何を言い出したんだ。
て言うか俺、夏希に話した覚えが無いんだが。
相変わらず勘が鋭いやつだ。
「で、薫の気持ちにも気付いてるんでしょ?」
「……ああ」
「それで聞きたいんだけど、あんた自分から告白する気あるの?」
「……あるにはあるが、今じゃないと思う」
夏希は誰にも言わないだろうし、正直に話しても問題ないだろう。
「……私の予想で言わせてもらうけど、それはきっと考えすぎよ?」
「は?」
「あんたが言ってくれないから、正確なことはわからないけど、私からしたらそれは考えすぎ」
「そう……か?」
「まあ、一言だけ言うなら……、なんで欲張っちゃいけないの?」
「え……?」
欲張る……?
何を……、ああ、そう言うことか。
本当にこいつは、どこまで勘が良いんだよ。
俺の悩んでるのが、親友と恋人ってことに気付いてたのか。
俺が薫のことが好きじゃなかったら、惚れてるぞ、畜生。
「私の言いたいことはそれだけよ。あとは自分で考えなさい。あ、でもこれだけは言っておくわ。もっと、薫のことも信用してあげなさいよ?……さ、この話はおしまい!薫を待ちましょう」
「ああ……そうだなって、ちょうど来たみたいだな」
薫が走って来るのが見える。
「おい、廊下を走るな!って、もう遅いな」
「おーい。……おわ!」
俺が声を掛けたときには、薫はもうフライアウェイしていた。
「……気を付けろよ。ほら、大丈夫か」
「ああ、ごめん。サンキュー」
「何してるのよ……。全く」
やっぱり、こいつらといると飽きないな。
「……いいのだろうか、本当に」
「ん?なんか言ったか、岳」
「ああ、いや、なんでもない」
親友と恋人、どちらも選んでいいのだろうか。
まあ……信じてみるか、自分も、薫のことも。