ゲーセンデート?
朝、俺はいつものように七時ジャストに起きた。
習慣ってのは凄いものだと思う。
俺が起きてから三十分後に、薫を起こす。
「起きろ、薫」
「……んんっ……」
いつも通り、一発目は絶対に起きない。
取り敢えず、布団を剥ぎ取ることにしたら、服がはだけていたので、出来るだけ目にいれないようにして整えた。
「薫ー、起きろって」
「……あと五分だけぇ」
とまあこのように、普通に起こすだけでは薫は絶対起きない。
こうなった薫を起こすには、あるキーワードが必要なのだ。
「飯が出来てるんだけどなー?早く起きないと冷めるぞー」
びくりと体が跳ねた。
どうやら起きたらしい。
「おはようさん」
「ん?んー、おはよー……」
まだ寝ぼけてはいるが、これで起こすことには成功した。
あとは朝飯を食べてしばらくしたら勝手に覚醒するので朝の作業は終了だ。
「相変わらず、岳の料理はうまいよなあ」
「まあ、料理は嫌いじゃ無いしな。それに俺の母さんが料理人だからな、当然と言えば当然だろ?」
「え?オレ初耳なんだけど。おばさん料理人なの?」
そう言えば、言ってなかったな。
夏希にも言ってなかった気がするけども。
「最近あのでかい交差点の所にイタリアンの店が出来たのは知ってるよな?」
「ああ、うん」
「俺の母さんはあそこの料理長してるんだよ」
「料理長!?はー、なるほどな。そりゃ岳の料理はうまいよなー」
そう、俺の料理の技術は母さんに教えられたものだ。
普段は適当な性格なのだが、食材選びと調理に関しては鬼のような人になる。
「ふ、料理には自信があるからな」
自分で作った料理を食べてもらってうまいと言ってもらえるのは料理人でなくてもやはり嬉しいものだ。
○
「さて、今日はどうする?」
「んー……。あっ、久しぶりにゲームセンター行こうぜ」
「あー、あの学校の近くに出来たとこか」
「そうそう!」
取り敢えず、今日の予定は決定だな。
「よし、行くぞ!」
と言う薫の掛け声とともに俺達は、かれこれ一、二年行っていなかったゲームセンターに行くことになった。
○
最近、この辺りの地域は開発がかなり進んでいる。
と言うのも、葵山の市長さんが葵山を観光地として発展させていくと言い出したのが始まりだ。
それ以来、大企業から中小企業などの多くの企業が関わり、この町を観光地として開発している。
斗賀野モールや今行っているゲームセンターなどはまさにそれである。
「よし、着いたな」
「おー、でけー!」
全部で三階建てのこの場所は、一、二階がゲームセンターとなっており、三階にはファミレス等軽食を食べられるような店が揃っている。
ゲームセンターには昔ながらの古いメダルゲームや最近のカードを使うようなアーケードゲームまで、かなりのラインナップとなっている。
「一発目はどうする?」
「んー。色々ありすぎて選べないな……」
「そうだな……。まず、いつものやるか?」
「そうするかー」
昔、ゲームセンターに行きまくっていたときに、絶対に一回はやっているゲームがある。
たしか、ガンシューと言っただろうか、基本大型機械なのでアーケードのものしか見ないが、俺達はかなりやりこんでいた。
「んじゃー、オレ右側な」
「なら俺が左だな」
この手のゲームは、役割分担がかなり重要、と言うのが俺の考えだ。
まあ、大量にお金を使ってまで全力でクリアしようとは思わんが、やりこみすぎて俺と薫でやれば、前まで多くても二人で三百円あれば十分クリアできた。
「マジで久しぶりだから、今日は結構使うかもな」
「大体二年ぶりくらいかな?まあ大丈夫だろ!取り敢えずやろうぜ」
二人プレイなので二百円を入れる。
うーん、懐かしい、この操作感。
「うわ、危な!初見殺し過ぎるぞこれ……」
「めっちゃ急に来るな、敵」
やってみると、明らかに昔のものより難しくなっている。
だが、クリアできない難易度では無さそうだ。
「ボス強すぎじゃないかこれ」
「オレこんなん勝てる気しないんだけど」
マーカーが多すぎて潰しきれないせいで大ダメージをくらってしまった。
これは、よほど上手くなければワンコインクリアはできないな。
「やっとラスボスか」
「長かった……」
そんなこんなでやっと最後まできた。
まさか八百円も使うと思わなかったな。
「クリアに二時間近く掛かるアーケードゲームてどうなんだ?」
「もう昼飯の時間だな……」
さすがに腹が減ったので俺達は3階の飲食店コーナーに向かった。
出来たのが最近と言うのがあってかかなりの人がいる。
すぐ食べられる店を探すのもなかなか大変そうだな。
「仕方ない。普通のファミレスに行くか」
「だなー」
学生の味方、ファミレス。
種類も多いし、値段も安いから学校帰りとかでも普通に食べに行くことができる。
まさにファミレス万歳ってところか。
「俺はハヤシライスとサラダにするけど、薫はどうする?」
「うーんそうだな。……ハンバーグ定食で」
「了解」
……しばらくして注文したものが運ばれてきた。
「岳のハヤシライス一口ちょーだい」
「おう。んじゃ俺も薫のハンバーグ一口貰うぞ」
「えー、別にいいけど」
良いのかよ。
えー、とか言うから駄目かと思った。
「結構うまいな、それ」
「だろ?結構お気に入りなんだよ。この店のハンバーグ」
お互いに食べ終わり、最後にデザートを食べて店を出た。
○
そのあともうしばらく遊んで、俺達はそれぞれ解散することにした。
「久しぶりにゲーセンってのもいいもんだな」
「そうだなー。……あ、オレそろそろ帰らなきゃだ」
「お、そうか。……じゃあな、楽しかったぞ」
「こちらこそ楽しかったよ、ありがとなー!」
あんだけ遊んで元気なもんだな。
俺はかなり疲れたけど、まあ薫と出掛けられてよかったな。
たまにはゲームセンターでデート何てのもいいかもな。
……デートでもないかな。
「まあいいか。俺も帰ろう」
俺も、家に帰ることにした。