俺は、やはり彼女が好きなようだ
とは言ったものの、実際付き合いたいと思う自分もいる。
その中の何割かは薫の無防備さ、これが原因でもある。
「まーたこんなとこに下着置いたまま人んちの風呂入りやがって……」
勘弁して貰いたい。
またすぐ着るからといって、風呂場の前にそのまま脱ぎ捨てていくのは、はっきり言って俺の目に毒なのだ。
こちとら健全な高校生なのだ、この下着でマルマル、とまでは行かなくても少なからず不純な気持ちは出てきてしまうわけで。
うちの構造上、どうしてもトイレに行くときに風呂の前を通らなければならない。
つまり、風呂の前に放っておかれると、どうしても見てしまう。
「言うべきなのか?俺の口から……」
パンツ置きっぱなしはやめてくれ、と?
言えるわけないじゃないか、俺のメンタルはそんなに強くないんだ。
「あー、とっととトイレ行くか……」
ここに居たら、俺がどうにかなりそうだ。
それに薫が出てきたらあれだしな。
○
「いやー、すっきりした!いつも風呂借りちゃって悪いなー」
「気にすんなよ。全然金に影響は無いしな」
そう、そこまで影響は無い。
と言うのも俺は独り暮らしをしているが、生活費事態は父さんからの仕送りでやりくりしているのだが、その金額が独り暮らしの生活費にしてはかなり多いのだ。
多分あと二人ぐらいなら普通に生活出来るぐらいには多いと思う。
余ったら自由に使えと言うので、好きに使わせてもらっているが、一介の高校生が持つには多過ぎると思う。
「どうする、今日は泊まってくのか?風呂も入ってたし、聞くまでもないだろうが」
「勿論泊まってくぞ?」
これは薫が女になってからの変化なのだが、薫がうちに泊まってくようになった。
ちなみに……寝る場所はうちにはベッド一つしかない。
つまり、一緒に寝るか、俺がソファーで寝るかの二択、となる。
流石に親友とは言え、一人の女性を変なとこで寝かせるのは、俺の気分的にあまり良くない。
なので薫がベッドを使うのは確定。
「……で、今日も俺は一緒に寝なきゃならんのか?」
「当たり前だろ?岳の家のベッドなんだから岳が使わなきゃだめだ」
「……そうですか」
全く、いつも思うがこいつは一緒に、てのがどう言うことか分かってるのか分かってないのか……。
薫は、俺にとっては天敵でもあるのかも知れないな。
「んー、まだ寝るまで時間はあるし、漫画でも読んどくか?」
「うん、そうだな」
まあ、俺としては願ったり叶ったりではある。
ただ、薫の寝顔が可愛すぎで俺がヤバイ。
「あ、岳この漫画の最新刊買ったの?」
「ああ、多分そこら辺にあるぞ?」
「まじで!?読んで良いか?」
「おう、何でも読め読め」
「よかったー。続き気になってたんだけど、今月は小遣いがなかったから助かった!」
うん寝顔だけじゃなく、笑顔も可愛いわ。
てなに考えてんだ俺、気持ち悪っ!
○
しばらくして、良い時間になったので俺達は寝ることにした。
別に夜更かししても構わないのだが、どうやら薫の眠気がもう限界に達したらしい。
「なあ、岳」
「……どうした」
「岳はさ、オレといて楽しいか?」
「あ?んなもん、楽しいに決まってるだろう。いいか、楽しくないやつをわざわざ家にあげるわけないし、遊ぶ訳がないだろ?」
「んふふー、ならよかったー」
急にどうしたんだ、薫は。
「急にどうした?そんなこと聞いてきて」
「……」
「おい薫?」
「……くぅ」
寝てやがる。
……何だったんだ?
「……まあ、いいか、俺も眠たいし早いとこ寝よ」
そして、俺も続いて目を閉じた。
薫の寝顔はやはり可愛い。