夏祭り前日
今日は8月22日、明日は葵山夏祭りの日だ。
「岳ー、明日は葵山夏祭りがあるけど、誰かといく予定ある?」
「ああ、あるな」
「マジで?……誰と?」
岳が予定があるとは、友達か?いや……も、もしかして彼女!?
いやいや、それこそ無いな。
彼女とかいたらオレといる暇なんか無いだろうし。
「薫とな」
「ん、かおる?……誰だよ?」
「俺の横にいるお前以外に誰がいる」
「あー、そう言うこと……って、ややこしい言い方するな!」
「はは!すまんすまん」
まあ、OKは貰えたようで安心した。
よし!この夏祭りで距離を縮めてやるぞ!
○
どうせなら浴衣でも着てやるか、と思ったのでオレは倉庫となった姉さんの部屋から浴衣を探していた。
姉貴はもう二十歳を越えていて、独り暮らしをしている。
「確か姉さんの昔の浴衣があったはずだけど……お?」
三個目の段ボールを開けると中には、保存状態が良かったようで、まだ着れそうな物があった。
「うーん、これならいけるか?」
綺麗な柄だし、丁度着れそうサイズなのこれくらいしか無いしな。
「よし、そうと決まれば後は練習だな!」
と意気込んだが、どうやらオレのお腹が食べ物を欲しているようだ。
「晩御飯食べてから練習しよう」
○
リビングに行くと美味しそうなスパイスのいい香りがしてきた。
どうやら今日の料理はカレーらしい。
ちょっと気になり、キッチンに入ってみた。
「お、薫。今日はカレーだぞ」
「いやー、今日はカレーの気分だったから丁度良かった……てか、スパイスからルゥ作ってんの!?」
流石に驚いた。
ここまで料理に拘ってるとは……そりゃ美味しいわ。
「んー、そうだな。ちょっと手間だけど、味の微調整出来るからな」
「はえー……スゲーなぁ。じゃあ楽しみに待ってるよ!」
「おう、美味いの食わしてやる」
その後運ばれてきたカレーは、店のやつかと思うくらい美味しかった。
○
御飯の後は浴衣の着付けの練習をした。
久しぶりをパソコン起動して、着付けの仕方を調べる。
用意は段ボール箱の中にすべて揃っているようだ。
「これは……段ボール箱ごと持ってきて正解だな」
浴衣ってのは予想以上に色々必要らしい。
箱ごと持ってきてなかったら、また取りに行かなきゃいけない所だった。
「うーん、下着下着……これか」
オレの胸は小さいから、ブラは要らないようだ。
うん……小さいからな。
――その後も着々と進めたが、帯の結び方に苦戦していた。
「浴衣って着たこと無いからな……当たり前だけど」
その後は10回くらいやり直してやっと結び方を覚えられた。
ついでに髪型の練習もしておいた。
終わる頃には、オレがいつもお風呂に入る時間、9時半になっていた。
「よーし、お風呂だー!」
――お風呂場へと向かい、服を脱いで扉を開けるとそこには、湯船に浸かる岳がいた。
「えっ」
「あ」
え、何でいるの?確か時間決めて……てゆーか。
「すみませんでしたー!」
バタン、と勢いよく扉を閉める。
ぜ、絶対見られた……!
――その後、オレも岳も無言のままお風呂場を入れ替わり、普通に話した頃には11時になっていた。
「さ、さー。寝よう」
「お、おお。そうだな」
どうにも気まずく、オレと岳は自室に戻ることにした。
○
女の子になってから、岳とのハプニングが増えた気がする。
もうちょっと、気をつけなきゃいかんかなぁ。
「んー、まあ、いいや。寝よ寝よ……」
オレは明日のことを楽しみにしながら、眠りに着いたのだった。