表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/24

オレの身体の大きな変化

 ――病院のベッドで目覚めると、オレ、花崎(はなざき) (かおる)は、男から女になっていた。


 オレが高熱を出して教室で倒れたのが、病室のカレンダーとデジタル時計をみる限り一週間前の、7月15日のことだ。

 そして今日が22日、オレはちょうど一週間もの間、眠り続けていたのである。


「これがTS病ってやつか……」


 TS病、正式名、発熱及び遺伝子変化症。

 この病気になった人は三日から二週間までの39度以上の発熱、そして発熱後に患者の性別を、反対の性別に変化させる、というとんでもない病気だって、医者が言っていた。


 目が覚めてすぐにはそりゃあ騒いだものだけれど、病院の女性の看護師からいろんな説明を受ける内に落ち着いた。


「……本当、不思議な病気だよな」


 TS病が初めて確認されたのが90年前、確かアメリカだったはずで、この病気が日本に来たのが43年前、そこからは瞬く間に世界中に広がっていった、らしい。


「うあー、ひまだー」


 暇。そう、とにかく暇なのだ。

 歩き回れたら暇潰しもできるのだけど、実は一週間も寝たきりで身体が変化したため、筋肉が身体に追い付いてこず、補助がないとまともに立つことも出来ないのだ。


 さすがに目が覚めてすぐは身体に良くないらしく、リハビリは明日から二週間の間、各部位1時間ずつ行うらしい。


 ――起きてても暇だし、今日はもう寝よう。


 そう思ってオレは目を閉じた。――


 ――目を閉じたけど寝られなかった。まあそりゃあそうだろう。

 起きたのつい2,3時間前だし、お腹も空いたし、真っ昼間の12時だし。


「……大人しくご飯くるのを待つかぁ……」


 ご飯が来るのは1時からなので、たまたま近くを通ったオレの担当の看護師さんに頼んで折り紙をもらった。

 手先ぐらいなら動かしてもいいだろうとのことだったから、指先だけでも動くようにしようと思ったんだけど、これがまた難しかった。


「……よっ、……そりゃ」


 失敗、失敗、また失敗。ほとんど失敗してなんとかできたのは、何だか形が歪な折り鶴三羽だけだった。


『お待たせしましたー』


 と、ちょうど紙を使いきったタイミングで看護師さんがご飯を持って来てくれた。


「どうぞー」


 オレが返事をすると、扉を開けた看護師さんが「あらあら」と言う風に微笑んでいた。


「30枚位渡したはずだけれど、見事に失敗したみたいねぇ」

「あはは、……ですね。なかなか難しいですよ」

「ふふ。リハビリ途中でまだまだ身体に慣れてないから仕方ないわよ」


 すると彼女は「まあ、」と前置きして、


「今はしっかり食べて体力つけなさいな」


 と笑うのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ