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東方神殺伝~八雲紫の師~【リメイク】  作者: 十六夜やと
8章 宴会と異変~生を望む者~
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58話 鬼は高らかに嗤う


 幻想郷では唐突に宴会が行われる。

 今回は『兼定とアイリスの歓迎会』という建前で行われるが、本来理由なんてどーでもいいのだ。飲んで騒げればいいって連中が多いのは、この数ヵ月で嫌というほど思い知ったからな。

 開催場所は紅魔館。俺はレミリアん家の台所を借りて咲夜や妖夢と一緒に料理を作っていた。

 庭園でのセッティングは皆がしてくれているだろう。


 咲夜や妖夢は手際よく料理を横で作っている。

 最近居候が増えて作る量が増加したり、あの歩くブラックホールの幽々の飯を毎日作っている彼女等にとって、宴会料理の量は日常茶飯事なんだろうね。どこぞの繁盛している飲食店のシェフが如く動いている。

 俺も見習いたいものだ。


 それにしても……。

 最近思うのだが。




 なんか最近みんな冷たくね?




 なんというか……一部の幻想郷民から腫れ物を扱うような感じで接せられることが多くなったと言うべきか。紫やアホ共は普通なんだけど、例えば横で料理している妖夢とかかな。横目でチラチラ見られながら料理してる俺にとっては、物凄く居心地が悪い。

 霊夢の妖怪退治の手伝いも時折断られるし、料理以外の家事も藍さんが仕事を奪っていくし、アリスや幽々子から体を心配される。極めつけは幽香が戦闘を仕掛けてこない。

 うーん……なんという疎外感。




 というか、もしかして寿命バレてるんじゃね?




 俺の寿命は〔十の化身を操る程度の能力〕の過度な使用の代償として、暗闇から長くてあと5年と言われている。実際にはそれより少ないだろうけど。

 まぁ、余生を穏やかに幻想郷で過ごすわけだし、俺は生き急ぎすぎた感はあるから、平和に生きて死ぬのも悪くはないと思っている。別に死にたくはないけど、人間捨ててまで生きようとも思わないからね。


「痛っ」


「ほら、よそ見してるから指切ってるじゃねーか」


 チラチラ横目で見ながら包丁使ってたら誰でもそうなる。

 妖夢は包丁で指を深く傷つけてしまっていた。咲夜が医療キットを取りに行こうとしたが、俺が制止して妖夢の傷ついた手を握る。


「し、紫苑さん……?」


「じっとしてろ」


 俺は『雄羊』の化身を使用する。この程度の怪我に使うものではないが、衛生上妖夢に料理を任せることが出来ないからして、俺や咲夜の負担が大きくなるのは面倒。

 淡い光が妖夢の手を包もうとした瞬間――


「――っ!?」


 妖夢はバッと俺の手から逃れて後ずさった。

 彼女の表情は何かに怯えているようで、少女から引かれた俺はちょっとショック。端から見たら俺が犯罪者である。


「あー……いきなり手を触ってごめん」


「い、いえ! こんな傷程度で紫苑さんの能力を使わせるわけには……」


「傷口開いた状態じゃ飯なんて作れないだろ? ここで妖夢がリタイヤしたら俺の負担が増えるし、そもそも切り傷深いんだから放置すると大変になるぜ?」


「で、でも――」


 妖夢って妖忌と似て隠し事が苦手だよな。

 良くも悪くもまじめな性格って言うかさ。




「――この程度の能力使用で寿命は削れねーよ」


「え!? どうし――」




 と妖夢が訪ねようとして両手で口を塞ぐ。己の失言に気付いたのだろう。咲夜も妖夢に「バレたじゃねーか」と軽く睨んでいる辺り、やっぱり皆の反応が変わった理由に確信を持つ。

 俺は深海よりも深くため息をついて、再度妖夢の手を握って『雄羊』を使用する。


「どーせ未来が余計なことでも言ったんだろ? 確かに俺の能力は限界超えて使用すると命を削るもんだけど、逆にいえば己の神力の範囲内で使えば命に別状はないんだよ」


「……紫苑様は、死ぬことが怖くないのですか?」


「……さぁ、どうだろうな」


 咲夜の悲痛そうな問いに、俺は曖昧だが本心の回答を述べる。なんで料理中にこんな重い会話してるんだっけ?

 そう思ったけど真剣な咲夜や妖夢の質問に適当に答えるわけにはいかない。俺は料理製作を再開しながら口を動かす。


「けど人間はいつか死ぬ。それが60年後だろうが5年後だろうが、俺にはさして違いはないと思うぜ。人それぞれ寿命は違うんだし、俺の場合はたまたま5年しか生きられないってコトだ」


「「………」」


 咲夜と妖夢は納得していない顔だな。

 けど俺の寿命は俺のもの。

 本人が納得してるわけだし、それを他人がとやかく言えるもんじゃないと思うけどなぁ。心配してくれているのは分かるんだけどさ。




 もしかして未来は全員に話したのだろうか?

 後でシバき殺すか。




 ♦♦♦




 なにこの通夜みたいな空気。




 いや、確かに言い出したのは僕だけど!

 僕としては『まだ5年もあるから大丈夫』的な意味合いで言ったけど、ここまで認識か間違うのか。遠目から見ていて紫苑への扱いが『介護』となりつつある現状に頭を抱えていた。

 隣にいるアリっちも表面上は楽しそうに笑っているが、心の中では紫苑への心配が大半を占めている。これでもマシな方で、咲ちゃんや霊っちの心中なんか言葉に表すことが難しい。


 誰がこんな雰囲気にしたんだよ!

 僕ですよね、うん。


「どーしてこーなっちゃったかなー?」


「言葉って難しいのぅ……」


 とある敷かれたブルーシートの一角で、ならんで体育座りで夜空を見上げる僕とヴラド公。最近フラぽんが元気がないって、隣のおっさんも困っているらしい。

 僕等にとって命は彼女等が思う以上に軽いものとなっている。そういう認識の差が生んだ結果が、今のこのような状態を引き起こしたのだろう。紫苑の問題を街の住人は『軽く考えすぎ』て、幻想郷の住人は『重く受け止めすぎ』なのだ。

 面倒だね、ホント。


 なんて軽い現実逃避をしていると、ヴラドの死角になっていて見えないが、ガラスのように儚く美しい声で助けを呼ぶ言葉を耳にした。

 その声色には切実に、そして感情が読み取れない。


「……これ外して」


「「断る」」


 声の主は最近幻想入りを果たした、知恵と戦争を司るギリシャ神話の女神様。街において『闇の軍神』『紫苑の弾丸』『特攻兵器』『始末書量産機』の異名を持つ、ギリシャの神々の中では一番頭おかしいと揶揄されたロリ巨乳の美少女。

 それがヴラドの隣で紅蓮の色の鎖に縛られて行動を封じられている。これは彼の能力〔創造する程度の能力〕で産み出された対神用の鎖なので、彼女――アイリスちゃんも抜け出すことができないようだ。


 『ロリ巨乳が鎖に縛られている』という文で、エロい描写を思い浮かべた方々も多いかもしれないが、鎖を何重にも肩から足にかけて簀巻きにしているため、コレにえっちい感情を浮かべるには無理がある。

 しかも体をくねくねさせて抵抗しているもんだから、生板で勢いよく跳ねている魚にしか見えない。

 ヴラドの近くを通り過ぎる幻想郷の住人が彼女を三度見していくのを、誰が責められようか。


「あ、このまま――」


「させるかっ」


「……何やってンだよ」


 簀巻きにされたまま転がって紫苑の元へ向かおうとしたアイリスちゃんに繋がれた鎖をヴラドが引っ張っている中、久しぶりに不機嫌な不良のような声色を耳にした。振り返って後方確認してみると、そこには寺子屋の教師やってるけーねと、長い灰色の髪を後ろに束ねた不良少年――獅子王兼定がいた。

 けーねは簀巻きのアイリスちゃんに眉を潜め、兼定は全てを悟ったように目を細めた。僕としては兼定がスーツ(・・・)を着崩して着用していることに驚いているけど。


「未来殿、そこの少女を縛っている理由を聞いてもいいか? 場合によっては――」


「コイツのことは無視していいぜ、慧音さん。逆に簀巻きにしとかねェと奴は何しでかすか分からねェからな。あンなちっこい成りをしているが、れっきとしたギリシャの軍神だ」


「ちっこいは余計」


 兼定の的確かつ正論に、アイリスちゃんは不満そうな雰囲気を出しながら仏頂面で反論する。とりあえず僕達が少女と束縛プレイしているわけではないと分かってくれたのか、けーねの見る目が幾分か緩和されたから良しとしよう。

 僕は上半身だけを兼定の方に振り向かせながら、いつも通りフレンドリーに挨拶をする。


「おひさー、兼定」


「ふン、腑抜けた面しやがって。しかも吸血鬼のジジイも性懲りもなく復活してンじゃねェか」


「貴様も相変わらず小生意気な態度だな」


 明らかに挑発する発言を多く含む挨拶に、僕等の実力を知っている幻想郷の面々は真っ青になっているが、こんな挨拶が日常茶飯事だった僕等はそれぞれ独特の笑いで受け流す。


「それなら兼定だって腑抜けてるじゃん。けーねに一目惚れしたって紫苑が言ってたよ。信じられない話だったけ――」




「『さん』を付けろ剣術馬鹿ぶっ殺すぞ」




「え、あ、はい」


 マジもんの殺気を僕だけに叩きつける兼定に、反射的に土下座して謝る。首をかしげるけーねに「気にすンな」とにこやかに笑いかける壊神を目の当たりにして、僕とヴラドは遠い目をしながら眺める。

 紫苑の話は本当だったのか。

 兼定が女性に笑いかけるとか、天変地異どころか世界滅びるレベルの異変なんだけど。


 幻想郷に来て何かしらの影響を受けているってことか。

 街の住人のほとんどが、ここに来てから変化しているのだ。もちろんよい方向に変化しており、また変化していくであろう現状にワクワクするのは無理もない。

 それに――と、僕は周囲を見渡しながら微笑むのだった。




   ♦♦♦




 今年は宴会というものが少ないな。

 春の期間が少ないというのが原因の一つだろうけど、それにしても宴会の回数が減らされたらたまったもんじゃない。踊れや歌えや、そんな賑やかさをを望む私にとって、宴会の減少は致命的な問題だ。

 私は騒がしいのが大好きだし、酒を飲むのはもっと大好きだ。

 



 それと同じくらい喧嘩も大好きだ。




 私は紅魔館の宴会の様子を眺めながら笑う。

 1……2……3……4人か。

 他の奴らとは比べ物にならないほど大きな力を感じる。八雲紫以上の実力者が4人も幻想郷にいることに心が躍るさ。

 半妖と不老不死と妖怪と……ん? この力は人間か?


 あの白髪の半妖はヘラヘラした態度ではあるが……相当な手練れだろう。一瞬だけれど気づかれそうになった。上手く霧に隠れているはずなのに私の存在に気づくのか。

 どの妖怪と人間の子なのかね。


 妖怪は私たちとは遠い同族の『吸血鬼』じゃないか。

 忘れ去られた幻想郷に存在する身で、ここまで意識と妖力を宿した妖怪なんて見たことも聞いたこともない。在る(・・)だけで他者を平伏させる覇気を放つなんざ、並みの妖怪にできる芸当じゃない。

 吸血鬼なんて私たち()に敵う種族とは思っていないが、あれは別格といっても過言じゃないだろう。四天王の全力でも勝てるかどうか。


 そして不老不死は……僅かながら鬼の血の匂いがする。

 上手に隠しているが間違いない。あの男は数え切れないほどの鬼を殺したことのある奴だ。鋭い目から伝わる、カタギの奴には絶対に出せない殺気。

 同族として許しがたいが、その鬼を殺すレベルの実力者なのは確か。迂闊に手を出すと返り討ちに会いかねないだろう。


 最後の人間。

 コイツは……ヤバいな。

 私は4人の強大な力の持ち主の一人が人間であることに素直に驚き、加えて博麗の巫女以上の力を持つ人間という事実。




 しかし、この人間の恐ろしいところは『喧嘩をしたい』と考えると、本能的に『殺される』と反射的に判断してしまうのだ。




 コイツは何者なんだ?

 能力が関係していることは間違いないが、そんな能力など生まれてこの方耳にしたことがない。そかし、断言できることは一つある。

 あの人間は格上の相手だ。

 本能的に負けてしまうことは分かる。鬼の本能に干渉する能力を持つ人間がどれ程厄介かは見なくてもわかる。……それでも『喧嘩してみたい』と思うのは鬼の性だろう?

 さて、どうやったらあの人間と喧嘩できるだろうか?


 私は珍しく策を練るのであった。





紫苑「こっから飲んだくれ異変」

紫「その言い方はちょっと……」

紫苑「飲めない俺への当てつけですかねぇ!?」

紫「……気にしてたんですか」

紫苑「( ノД`)シクシク…」

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