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東方神殺伝~八雲紫の師~【リメイク】  作者: 十六夜やと
2章 紅霧の宴会~始まりの物語~
19/64

18話 新聞記者の取材

活動報告でとったアンケートの結果報告です。


A1.そのままにしときます。

A2.出します。


以上です(ネタバレにならないように報告した次第ですm(__)m)

side 紫苑


時刻は10時ぐらいだろうか? 幻想郷に時間で動くなんて概念は存在しないけどさ。

スマホを取りに帰って戻ってきたら、紫の話が終わったらしくそれぞれがまた酒を飲んでいた。まさかスマホの充電が7%しか残っていないとは思わなくて、どうにか半分まで回復させてきたのだ。充電回復するまで暇だったわ。

俺は八雲ファミリーと神社組と幽香の輪に入った。彼女等は帰りが遅かった俺を温かく迎え入れてくれる。


「ただいま、話は終わったみたいだな」


「おかえりなさいませ、師匠」


俺は紫と幽香の間に座った。

霊夢やアリスも隣を開けていたのだか、なぜか花の妖怪の威圧に耐えられなくて横に座ったのだ。輪にいる皆が苦笑いを浮かべる。


藍さんから安定の麦茶を頂き、料理をつまむ。

誰が作ったのだろう。美味いな。


「で、どうだった?」


「なんか……軽々しく聞いて申し訳なかったわ」


俺が紫の話の感想を神社組に聞いてみると、返ってきた反応は想像以上に微妙なものだった。

アリスが気まずそうに頭を下げ、霊夢と魔理沙は目を背ける。


「隠すようなことでもないし、幻想郷誕生秘話の一部なんだから、住人には聞く権利はあるだろ」


そんな様子に俺は肩をすくめた。

俺が直接的に関わっていないにせよ、紫に幻想郷の創造を促したのは明らかだ。俺が言いふらすのは妙かもしれないけれど、紫が話すのは適任だと判断したから任せた。

あと面倒だったから。


「けど2人が紫苑さんの影響を受けてるとは思えないのよね……」


「あら、私たちは結構影響受けてるのよ。私は師匠のポーカーフェイスとか策士的な戦い方とか、逆に幽香は師匠の殺気とか力押しでの戦闘とかね」


「戦闘面だけかよ」


聞いてみるとロクな部分しか影響されてない。

引っ越し時に紫と会った切裂き魔も、紫を見て『胡散臭さは師匠譲りかなー?』とか言ってたし……つか俺は胡散臭いのか? さすがに詐欺師よりはマシだろうに。


「ところで紫苑」


「うん?」


貴婦人が如く酒を嗜む幽香が、俺を――正確には俺の存在しない右腕を見ながら聞いてきた。

霊夢も同じことを感じたのか、すっげー嫌な予感が。


「その右腕はどうしたの?」


「これか? ちょっと異変の時に、な?」


フランに腕を粉々にされました☆とか絶対に言えない。

幽香の黒い表情を見れば分かる。そんなわけで誤魔化したわけだが、昔から頭の回転が早かった幽香は立ち上がりながら迫力のある笑みを浮かべた。


「ちょっと待ってて紫苑。異変の主犯と遊んでくるから」


「落ち着け幽香っ! お前の笑顔が洒落になってねーぞ!?」


「離して、あいつ殺せない」


「とうとうオブラートに包まなくなったかっ!?」


妖力の量で判断した限りだと、今のコイツは帝王ほどではないにせよ大妖怪の名にふさわしい力を持っていることが伺える。レミリアなんて相手にならないぞ、多分。しかもレミリアが犯人じゃないし。

そんなことより、昔はこんなキャラじゃなかったよな、幽香!

1500年間に何があった!? しかもコイツ力強ぇ!


「そ、そうだ! 紫苑って紫と幽香よりも強いのか?」


俺を引きずりながら紅魔館の主をボコボコにしようと歩き出した幽香に、魔理沙が強引に話を変えるように話題を振った。

食いついた幽香がやっと俺を伴って戻ってきたので、俺はホッと胸を撫で下ろす。そして咳払いをしながら結果を言う。


「んなわけねーだろ。紫や幽香の脚もとにも及ばねーよ」


「でも大妖怪4匹を倒したって……」


「当時の妖怪なんて今よりも随分弱かったのさ。大妖怪とは称しているが、今の上級、最悪中級ぐらいの妖力だぞ? 逆に魔理沙は幽香レベルの妖怪4匹を相手取れるか?」


「出来るわけないのぜ!?」


どれだけ能力が特殊だろうと、種族による基礎能力が違いすぎる。

だから人間は『知恵』で対抗するのだが……今の大妖怪なんて『知恵』の塊みたいなもんだし、人間と妖怪との戦いなんて外の世界(あっち)でも数の勝負だった。

それ以前に




「大妖怪4匹を圧勝出来るなんて、それ人間じゃないだろ」


「「「「「………」」」」」




つまりはそういうことである。

……いや、俺が本気(・・)を出せば可能かもしれないが――机上の空論に過ぎないだろう。そういう約束をしているし。


「なら――試してみる?」


「遠慮しとくよ」


幽香が妖艶で好戦的な微笑みで誘ってきたが、俺はまだ死にたくない。

彼女も残念そうだったがアッサリ引き下がった。

そして不服だったのは彼女だけではない。


「えー、私も見てみたいですねぇ」


「あ、バ鴉」


「私は鴉天狗ですよ!」


輪の中に入ってきたのは山伏少女。確か――射命丸文だっけ?

筆とメモ用紙を携えた鴉天狗の少女は、紫と俺の間に割って入ってあからさまな営業スマイルを浮かべる。紫は不満そうにジト目を向け、幽香は関係ないと無関心を貫く。


霊夢のバ鴉発言にツッコんでる文に、どうしてココに来たのかを聞いたら、好奇心の塊が如き輝いた紅榴石の瞳で俺を見る。


「も・ち・ろ・ん取材のためですよ! 紫苑さんが会ったときに約束してくれたじゃないですか」


「……あー、そうだったわ」


そんな約束したな……と今更ながらに思い出す。

約束後に短時間で色んなことが起こったせいで頭から抜け落ちてた。主に背骨にヒビを入れられたり、ホールドで肺を圧迫されたり――原因は正直言って隣の花妖怪のせいか。


「約束は約束だ。できる範囲の質問には答えよう」


誠意を見せる事こそが、今後の幻想郷で生きていく上で大切だろう。有言実行なんて大層なことは言えないが、文との約束を守ることにした。

文はメモ用紙に筆を走らせながら口を動かす。


「お許しも出たので早速……紫苑さんの能力って何ですか?」


「ふむ……とりあえず〔十の化身を操る程度の能力〕とでも言っておこうかな」


「……とりあえず?」


酷く曖昧な答えに首を傾げる文。

その理由を俺は説明する。


「幻想郷では能力に『~~程度の能力』なんて言い方をするだろ? まぁ、俺達の街でも同じ言い方をするけど、一部の奴等の能力には別の呼ばれ方があるんだ。あっちの呼び名は好きじゃないから、〔十の化身を操る程度の能力〕って一応名乗ってるわけ」


紫から聞いた話だと、幻想郷での能力の名前って自己申告だって聞いた。先程言った俺の能力も、正しくは俺の別名みたいなもんだし、特別な呼び名を持つ奴等というのは化物7人と一部の候補者ぐらいだしね。

そもそも〔十の化身を操る程度の能力〕という言葉で片付けられるほど俺の能力は単純ではないが、あっちでも考えるのが面倒だったという背景もあり今の形に落ち着いたわけだ。

そして文の次の質問が手に取るように分かる。


「では紫苑さんの能力は外の世界では何と呼ばれていたのですか?」


「やっぱりそう来るよなぁ。街での俺の能力は勝利の軍神(Vərəθraγna)って呼ばれてたよ」


まぁ、こう呼ばれるのは2.3年ほど前からだ。それまでは俺が自身の能力を秘匿していたので正体不明(unknown)なんて呼ばれた時期もあった。

文はメモ用紙に俺の本来の能力名を記そうとしたが、どうも上手く記せなかったらしく諦めていた。まぁ、勝利の軍神(Vərəθraγna)ってアヴェスター語だからな。






「次の質問です。紫苑さんと幻想郷の賢者は恋仲なのですか?」


「ななななななななななななななななななななななななななななななななななななななななっっっ!!!!????」







あ、紫が壊れた。

首元まで顔を真っ赤にして、『な』を繰り返しながら酒を煽ったり料理をつまんでいる。しかし手元が狂っているため、湯呑みが空だったり、箸で何も掴めてないのに口に入れていた。


急変した幻想郷の賢者に、文や霊夢と言った面々は口を開けて絶句しており、式神の藍さんですら目が点になってる。

俺は呆れた声で首を振った。


「んなわけないじゃん。俺と紫は元師弟関係、むしろ今じゃ紫の方が立場が上じゃね?」


「馬鹿なこと言ってると細切れにして殺すわよ」


「ひっ!」


幽香の割りとガチな殺気に怯える鴉天狗。

どうしてそこまで花の妖怪が殺る気に満ち溢れているのか分からないし、正気を取り戻したスキマ妖怪が恨めしそうに俺を見ているのか知るよしもない。

楽しそうにしてるのは魔理沙ぐらいだ。霊夢も不服そうだし、アリスと藍さんも微妙な表情。女心って本当に分からん。


俺は知らん顔で麦茶を煽る。

こういう時に酒が飲めない……いや、酔うことができないってのは本当に面倒だと思う。

飲める奴等が羨ましいよ。


「なるほどなるほど、紫苑さんは女難の相アリ、と」


「変なこと書くなよ?」


「あやや、了解です。それなら……っと、紫苑さんは外の世界では何をなさっていましたか? お仕事とか趣味などを教えてくれると嬉です」


メモ用紙を捲りながら問う文に、比較的マシな質問だと思った。さっきの冗談みたいな質問で『俺の質問回答のライン』を試した節がある。ここまでなら答えてくれる、これ以上はNG……みたいな。

まったく、ちゃっかりしてるぜ。この新聞記者は。


どっかの詐欺師を文と重ねながら、俺は苦笑して答えた。


「何をしてた……うーん、何と言えばいいのやら。文は『警察』って聞いたことあるかな?」


「警察、ですか? 人里を警備してる自治集団に似たようなものでしょうか。外の現代知識には疎いものでして……」


文の認識は的を射ているが、言った俺も納得していなかった。

俺が所属していたものに法の拘束力なんてもんは存在しなかったし、だからと言って街のルールを破る者を取り締まる仕事をしていたから説明が難しい。


悩んでいると紅白衣装の巫女さんを捉える。

そして無意識に納得した。


「あ……これだ、俺は街では『博麗の巫女』に近いような仕事をしてたぜ。街のルールを破る奴を退治して、起こる事件を解決する仕事。これを統括する組織に所属してた」


「なるほど! 紫苑さんは外の世界で霊夢さんや魔理沙さんと同じようなことをしてたんですか」


この説明なら俺自身も納得できる。違う点があるとすれば『退治する=殺す』という意味だろう。

俺達は霊夢ほど慈悲を持ち合わせていない。


「趣味は料理かな」


「紫苑さんの料理……ぜひとも食べてみたいですね」


その感想に異議を唱える巫女がいた。

コイツ何言ってんの?って表情で、酔っているのか少し顔が赤い。


「アンタさっき『何ですかこの稲荷寿司は! めっちゃ美味しいんですけど!?』とか言ってたじゃない。あれ紫苑さんの手作りよ」


「「え!?」」


文とアリスが目を丸くする。

そこまで驚くことか?


「でも今の紫苑さんは片腕しか使えませんよね?」


「うん、片手で作った」


「貴方器用過ぎるでしょ……」


アリスは呆れ顔をしているが、片手での生活に慣れ始めている俺としては、そこまで難しいことでもないと思った。慣れればそんなもんだろ。

破壊された方が利き腕だぜ?と左手で箸を器用に使いながら言うと、驚いていた二人も納得した。


それからも当たり障りのない程度の質問をいくつかされ、その度に周囲が盛り上がったり幽香が殺気飛ばしたりしたが、鴉天狗が満足するような回答ができたのではないだろうか?

メモし終えた文は俺に頭を下げ感謝の言葉を述べる。


「ご協力ありがとうございました!」


「出来上がった新聞、今度見せてくれよな? ってか、文の作ってる新聞の定期講読の契約とか可能?」


「ゑ? ……えぇ!?」


外人顔負けのオーバーリアクションをする鴉天狗。


「ほ、本当ですか!? 新聞取ってくれるんですか!?」


「あ、あぁ。幻想郷の情報とか欲しいし……霊夢、何で文は号泣してんの?」


さぁ?と知ってるようだけど説明しない霊夢をよそに、俺は滝のように涙を流す鴉天狗に困惑していた。

後で魔理沙から聞いたことなのだが、幻想郷の住人は新聞を読む習慣はないらしく、加えて嘘偽り満載の『文々。新聞』を取る者は非常に少ないらしい。そら読んでくれなきゃ気を引くために面白おかしく嘘書こうとするよな。良いことではないが。


近日中に契約云々の話をするために俺の家に来ることを約束した文は、上機嫌で翼を羽ばたかせて博麗神社を去っていった。


これで一段落ついたな……と思った矢先に、麦茶を飲んでいた俺の背中い強い衝撃が走る。

どうにか湯呑みの中身をブチ撒けずに踏みとどまり、何事かと後ろを向こうとした。そして原因となる人物の第一発声によって誰なのか特定するのは容易だった。




「お兄様♪」





紫苑「本当に変なこと書くなよ?」

文「当たり前じゃないですか!」

霊夢「……|д゜)」

紫苑「霊夢が『どーせ書くだろバ鴉が』って顔してるんだけど」

文「そ、そんなわけないじゃないですか~」

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